FC加盟プロセスで一番忙しい時期
契約後は、一気に開業に向けての準備に取りかかることになる。やるべきことは、店舗の施工や各種の届け出などの公的手続きに始まり、スタッフの採用、加盟オーナーやスタッフの研修受講、開業前の販売促進活動など多岐にわたる。FC加盟プロセスにおいて、この開業準備から開業直後までが最も忙しい期間だろう。
しかし、あまり不安になる必要はない。開業準備は基本的に本部が主体となって取り仕切るものだからである。一般的に、本部では開業準備に必要な事柄を一覧表にまとめ、スケジュール管理ができるようになっている。
ただし、本部がすべてをやってくれるわけではない。実際に動くのは加盟者自身。事前に本部と加盟店の役割分担がどうなっているのかを確認しておくべきだろう。そして、チラシの印刷などではちょっとしたミスが余計なコスト増につながりかねないので、忙しいながらも細心の注意を払って対応する必要がある。
立地選定と人材採用が最重要事項
加盟者にとってとりわけ重要なのは、立地選定とスタッフの採用。ビジネスが成功するか否かを左右する最大の要因だからだ。
店舗立地は加盟者自身が探す場合もあるが、候補物件を紹介してくれる本部も多い。加盟者に立地判定の専門ノウハウがあることは少ないので、本部のノウハウや情報を参考にする必要はあるが、最終的に決めるのは加盟者。納得のいく情報収集が必須である。
スタッフ採用では、できるだけ早く加盟オーナーの右腕となり得る人材を採用したい。成功すれば、オーナー一人では手が回らなくなるのは自明だからだ。
開業前準備業務のチェックポイント
- 本部提示の業務一覧を実際のスケジュールに落とし込む
- すべての業務に責任者を設定する
- スケジュール変更があった場合は、その都度必ず再設定する
- 印刷物作成の際、記載内容のチェックは必ず複数の人で行う
- コストは必ず事前に確認する
- 連絡は電話だけで済まさない(FAXやメールなど後日確認できる手段を使う)
立地選びのポイント
店舗立地を自ら探す場合も、本部が紹介する場合も、売上査定を本部が行う場合がある。査定は類似立地の既存店実績から推定して算出されるが、店舗数がそれほど多くない本部の場合、精度は期待できないことが多いのでうのみにしない。
その根拠を確認し、自分自身で納得できる内容かどうかの確認を。立地予定地の通行人調査は、平日、休日、時間帯別に行う。類似立地の既存店は必ず訪問する。
事業計画のポイント
FC加盟とは、短期的なプロジェクトの遂行ではない。長期にわたって事業を継続していくのが基本なので、3~10年の事業計画を作成すべき。
1店舗だけでいくのか、将来複数の店舗展開を目指すのか目標を明確にして、それに向けてどんな収支計画のもとでどういった人材配置や組織で事業を切り盛りしていくのかを明確にする必要がある。もちろん、一度作成した事業計画は何度修正しても構わない。
店づくり(内外装)のポイント
店舗の設計は、ブランドイメージの統一のために本部が行う場合が大半。施工も本部指定業者に行わせる場合が多いが、加盟者自身でほかの業者から工事見積もりを取り、料金交渉を行うなどコストを削減する努力も必要だ。
人材採用のポイント
人材採用は手間やコストがかかるので、早めの準備が必要だ。通常は次の手順で行う。
- 採用人数の設定(職種ごとに)
- 採用基準の設定
- 待遇(給与など)の設定
- 採用告知(広告出稿など)
- 書類や面接で採用選考
研修受講のポイント
開業前研修でどこまで運営ノウハウを習得できるかが開業時の成否を左右する。おろそかにせず、真剣に受講し素直にすべてを受け入れることが大切だ。不明点はその場で解決し、できないところはそのままにしないこと。
今回のまとめ
次回の更新内容は、第9回 開業~開業後について
監修:民谷昌弘氏 (FCコンサルタント)
(株)アクアネット、フランチャイズ経営研究所 代表取締役
(一社)日本フランチャイズチェーン協会SV学校、経営士講座講師
(一社)日本フランチャイズコンサルタント協会会長
著書:『ザ・フランチャイズ』『失敗しないためのフランチャイズビジネス体験BOOK』、
『成功するフランチャイズ戦略』(ダイヤモンド社)、
『本当は教えたくないフランチャイズ本部成功50の教え』(出版文化社)ほか