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コロナショックにどう備える? 税理士が教える、非常時にこそ知っておきたい税金の秘密

コロナショックにどう備える? 税理士が教える、非常時にこそ知っておきたい税金の秘密

前回お届けした「仕組みを知っていると所得税がお得になる? 知らないと損する税金の秘密を税理士が解説」。

「申告納税制度」「超過累進課税」という所得税の基本的な仕組みのもと、納税者自身の選択により納税額をコントロールできる可能性をお伝えしました。

コロナウイルスの影響により、私も税理士として顧問先から「売り上げが先月から急減している」「資金繰りが悪化してどうにもならない」というような深刻な相談を受けております。

そこで今回は、非常時にこそ知っておくべき税金の秘密を解説していきます。

後で解説する税金の「猶予制度」や「延納制度」など、税制を知らないと損どころか場合によっては事業を継続することが困難になる事態もありうるでしょう。

税制を知り、今できることを最大限考えていきましょう。

非常時に絶対知っておくべき税制

昨今のコロナウイルスの影響による非常事態において、資金繰りや税金の支払いが厳しくなってきている個人事業主の方、起業家の方も多いのではないでしょうか。

資金繰りが苦しいとはいえ税金の納付期限にきちんと支払わないと、財産の差し押さえをされてしまうこともあります。

また納税しないことには納税証明書が発行されないため、銀行での融資が受けられないなど悪循環に陥る可能性もあります。

今回は非常時に知っておきたい税制の概要手続きを厳選して説明していきます。

気になる項目がありましたら、税理士や税務署に相談してください。

①振替納税により法的期限後に納付が可能

振替納税とは、納税者ご自身名義の預貯金口座からの口座引落しにより、国税を納付する手続きです。

ご利用に当たっては、事前に税務署又は希望する預貯金口座の金融機関へ専用の依頼書を提出していただく必要があります(預貯金口座の変更依頼や振替納税の取りやめ依頼がない場合及び所轄の税務署が変更とならない場合に限り、自動的に次回以降も振替納税が行われます)。

国税庁:[手続名] 申告所得税及び復興特別所得税、消費税及び地方消費税(個人事業者)の振替納税手続による納付

「振替納税」を利用することにより、実質的に支払日を法定申告期限後にすることができます。

令和1年度確定申告分の場合、本来であれば3月16日(月)に申告、振替納税日は4月21日(火)でした。

しかしコロナウイルスの影響で1カ月延長する措置が取られたので、それにともない振替納税による振替日も延長となりました。

  • 所得税法定申告・納付期限(延長後):令和2年4月16日(木)
  • 振替納税による振替日(延長後):令和2年5月15日(金)

【手続き】

振替納税をご利用される国税の納期限までに、「預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書」(振替依頼書)を作成の上、納税地を所轄する税務署又は振替依頼書に記載した金融機関へ提出してください。

申告期限ギリギリでも割と簡単にできる手続きです。税金の払い忘れの可能性も低くなります。

②クレジットカード納付による税金の支払い

クレジットカード納付とは、インターネット上でのクレジットカード支払いの機能を利用して、国税庁長官が指定した納付受託者(トヨタファイナンス株式会社)へ、国税の納付の立替払いを委託することにより国税を納付する手続きです。

国税のクレジットカード払いによる利用者は年々増えています。

所得税についてもクレジットカードによる支払いが可能です。カード会社によっては、支払回数が変更出来る場合があります。

国税庁:[手続名]クレジットカード納付の手続

③納税額の2分の1以上の延納が可能!振替納税との組み合わせも可能!

所得税及び復興特別所得税の確定申告分については、令和2年4月16日(木)まで(振替納税の場合は令和2年5月15日(金))に納付すべき税額の2分の1以上を納付すれば、残りの税額の納付を令和2年6月1日(月)まで延長することができます。延納期間中は年1.6%の割合で利子税がかかります。

国税庁:【税金の納付】Q36

こちらの所得税及び復興特別所得税の「延納」もあまり知られていないのですが、所得税等の納付を実質的に2分割にすることが可能です。

利子税がかかりますが、延滞履歴が残ったり延滞税がかかるよりは良いでしょう。

前述の振替納税と併せて利用が可能です。

またクレジットカード払いによる納税との組み合わせも可能です。

【手続き】

確定申告書第1表の右下の部分に「延納の届出」という部分がありますので、こちらを記入し、申告期限までに納付頂くことで完了となるため手続きは難しくありません。

書き方の詳細は、下記リンクの確定申告の手引きをご覧下さい。

国税庁:所得税及び復興特別所得税の確定申告の手引き(確定申告書B)

④納税猶予制度により1年間で分割納付

納税者に、災害を受け、若しくは病気にかかり、又は事業の休廃止をした等の事実がある場合において、その該当する事実に基づき、納税者がその納付すべき国税を一時に納付することができないときに認められるもの(同条第2項。以下「通常の納税の猶予」という。)

一定の要件を満たす方は納税の猶予制度を使い、納税を分割にすることができます。

国税庁:納税の猶予

今般の新型コロナウイルス感染症の影響により、国税を一時に納付することが困難と認められる場合、一定の要件を満たす方は、「納税の猶予申請書」を提出することにより納付困難な金額を限度として、納税者の申請に基づき原則1年間、納税を猶予をうけることができます。

税務署では、提出された申請書及び添付書類の内容を確認して、猶予の許可・不許可や、猶予を許可する金額・期間などの税務署が所定の審査を早期に行います

【手続き】

ケースにより必要な書類が異なりますので、まずは税務署へ相談しましょう。

その後、必要な書類を準備し、税務署へ提出を行いましょう。

国税庁:新型コロナウイルス感染症の影響により納税が困難な方には猶予制度があります(令和2年3月11日)

⑤予定納税の減額申請により、予定納税額の負担を減らす

予定納税の義務のある方が、廃業、休業又は業況不振等により、

①その年6月30日の現況による申告納税見積額が予定納税額の計算の基礎となった予定納税基準額に満たないと見込まれる場合

②その年10月31日の現況による申告納税見積額が既に受けている減額の承認に係る申告納税見積額に満たないと見込まれる場合

において予定納税額の減額を求める手続きです。

国税庁:予定納税

前年度ある程度の所得税の納税が発生した方は、当年度の途中でその年の一部の所得税を納める必要があります。これを予定納税と言います。

予定納税の義務がある方で、昨年度より売上が落ち込み資金繰りに窮している方は検討する価値があります。

【手続き】

「申請書」と「申告納税見積額の計算の基礎となる事実を記載した書類」を期限内に税務署へ提出します。

国税庁:[手続名]所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請手続

⑥還付申告は電子申告(e-Tax)利用することで早く還付が戻る?

確定申告で還付となる方は、書面による申告手続きより電子申告をした方が還付されるまでの期間が短くなります。

還付金の支払手続きは、

  • 紙による申告:おおむね1か月から1か月半程度の期間
  • e-Tax(電子申告):3週間程度

国税庁:【税金の還付】

【手続き】

e-Tax(電子申告)を始めるには、パソコン等の準備が必要です。また最近では、マイナンバーカードを用いて自宅等からも電子申告できるようになり、便利になってます。

詳細は下記国税庁のホームページをご覧下さい。

国税庁:e-Taxの開始(変更等)届出書作成・提出コーナー

納税に困っても諦めない!税制を味方に冷静な判断を!

未曽有の危機に、先行きが見通せず不安な方も多いことでしょう。

特にフリーランスの方は収入や資金繰りの心配だけでなく、確定申告の納税の心配で頭がいっぱいかもしれません。

今ある税制で最大限できることを考えてみましょう。

無申告・無連絡による納税の延滞は特に避けたいです。

困ったら早めに税務署や税理士(1人だけでなく複数人の)に相談してみましょう。

また本稿では税制に絞ってお話しましたが、最新の融資の制度や補助金・助成金の情報も集めていきましょう。

納税に間に合わず延滞税が発生する可能性もある場合は、銀行に相談することで延滞税より低い利率により借入ができる可能性もあります。

臨時の法令が制定される可能性もあります。

正しい情報をつかんで危機を乗り越えていきましょう。

文=齋藤 雄史
編集=内藤 祐介

<プロフィール>
齋藤雄史さん
税理士/公認会計士
宮城県仙台市出身。高校卒業後、進学資金を貯めるため、新聞販売店に勤務。その後、地元の簿記専門学校に進学、東日本大震災同年の2011年公認会計士試験合格。合格後、新日本有限責任監査法人福島事務所勤務。
法律の世界に魅せられロースクールに進学し、同時期に板橋区にて会計事務所を開業。ITやクラウド対応を武器に顧客開拓に成功し、20代〜30代をはじめとする多くの起業家から厚い信頼を得ている。

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