九鬼隆則さん(41歳)
VOL.230小さいからこそ自由度大。古巣とも協働する1人メーカー
ユニークなカラオケマイクの開発
電子工作少年でした。アイ・オー・データ機器に就職して秋葉原勤務となると、夢のようで。でも30歳で独立するつもりでしたから、5年で一区切り。最初の創業は仲間と立ち上げたレイ・アウト。経営は順調、でも管理の仕事が増えてしまって。現場でモノづくりがしたくて、また起業。今度はペット業界にIoT機器を売り込もうとしたんですが…ペット業界は門外漢。数カ月で挫折しました。
古巣アイ・オー・データ機器の社長からOB会の連絡があったのはそんな時です。「もうかってるかい?」「レイ・アウトならとっくに辞めてプラプラしてますよ」。聞くと、スマホアプリにカラオケ機能をつけたいけどマイクがないという。でも私は、中国の電気街でBluetoothマイクがたくさん並んでいるのを見ていました。これをイチから設計を見直して誕生したのが、「Bluetoothカラオケマイク」です。
社長には、販売や営業はアイ・オー・データ機器に委託、私は開発に専念する形を提案されました。おかげで自由なモノづくりができる。古巣は定年まで残る人間が多い会社。社員に優しいホワイト企業なんです(笑)。新卒の頃から目をかけてくれた社長をはじめ、当時からの仲間が私の財産。狙ってたわけじゃないですが、結果的には一番いい形の独立かもしれません。
撮影/刑部友康、片桐 圭、阪巻正志、宮田昌彦
アントレ2019.冬号 安定、肩書、仲間…雇われるよさもあったけど 私、会社を卒業しました!より