種村拓哉さん(34歳)
VOL.195東京から福岡へ転居しコーヒースタンドを開業
「東京で開業」の夢を手放し
新しいコーヒーの形を追求する
28歳までに東京で、表参道にあるようなお洒落なお店を開くのが夢でした。イメージはアニヴェルセルカフェ。そのために5年、寝る間も削ってバリスタ修業をしたんですが、妻に相談すると「長崎にいる親のことはどう考えているの」と。
夫婦2人とも五島列島出身、親はそこに住んでいました。親に何かあった時に東京から帰省しようと思ったら数日かかります。一晩考えて、福岡で開業することを決めました。当初の夢は手放すしかない。でも一番大事な夢は自分のお店を出すこと。
それ以外のしょうがないことは、見ないふりです(笑)。
でも福岡に来たおかげで自分にしか作れないコーヒーの形に近づけた気がします。ここの周りには大きな公園がありオフィス街があり、住宅があり魚市場がある。いろんな人が交差する港みたいな場所です。だったら常連さんに毎日来てもらえるようにと、さっと立ち寄れる立ち飲みスタイルの店にしました。出すものはコーヒー1本に絞り、値段も安くエスプレッソ100円。作りも簡素で、当初の夢とはまるで違う店になりましたけど、僕はこの店が好きです。
常連さん同士が自然と繋がっていくのを見ると、幸せだな、と思う。7人も入ればいっぱいで「もう手狭でしょ」とよく言われるんですが、今このお店だから、こうやって輝いているんだと思うんです。
アントレ2017.秋号 「会社員の肩書、プライド、業界の慣習から自由に! 捨てれば始まる」より