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経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第100回・2℃が肝心

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起業家、経営者にとって大事なのは、世の中を見抜く力です。1つの事象をどう捉えるかで、ものの見え方も、そこから得られる情報も大きく変わります。そうした「着眼点」、実はトレーニングによって鍛えることができるのです。累計20万部を超えるベストセラーとなった『戦略思考トレーニング』シリーズでおなじみの経営コンサルタント・鈴木貴博氏に解説してもらいましょう。

いきなりですが、クイズです!

先日開かれた「気候変動サミット」で、各国首脳たちが温室効果ガスの削減について話し合ったのをニュースで見た方もいると思います。こうした削減目標の設定は、「産業革命後の地球全体での平均気温上昇を2℃以内に抑える」ことを目指した「2℃目標」に向けた取り組みの1つなのですが、それでいうと現在は地球全体の平均気温は1.1℃上がった状態なのだそうです。とはいっても、最近の異常気象による夏場の激しい暑さを考えると、軽く4から5℃は上がっていてもおかしくないような気もします。なぜこのような数字になっているのでしょうか?

クイズの答えの中に、着眼点を鍛えるポイントがある

今年4月に「気候変動サミット」がオンラインで開かれ、アメリカのバイデン大統領が「2030年までに温室効果ガスを05年比で50%削減する」と表明したのは記憶に新しいところです。

日本においても、菅総理が「13年比46%削減」を掲げましたが、これまでの取り組みを考えてもかなり高い水準の目標となっており、「どうやって削減するんだろう」などと話題になりました。

今や地球温暖化は待ったなしの状態です。何とかくい止めるためにも、温室効果ガスの削減は必須であり、そのために何ができるかを私たち一人ひとりも考えなくてはいけません。

それでは解説します!

地球の温暖化については、2010年に開かれた「気候変動枠組条約第16回締約国会議(COP16)」で合意された「2℃目標」という目安があります。これは、気候変動による悪影響を避けるために「産業革命後の地球全体での平均気温上昇を2℃以内に抑える」ことを目指したものです。

この「2℃」には根拠があり、平均気温が2℃を超えて上昇してしまうと、地球全体が元に戻らないような暑さになってしまうのだそうです。「2050年までにゼロエミッションを実現させる」といった取り組みも、全てはこの2℃の上昇を避けるためなのです。

では現在はどうなのか。産業革命後と比較して「1.1℃」上昇した状態なのだそうです。

しかし、ここ数年だけを見ても、異常気象による夏の暑さは凄まじいものがありますよね。「都心の最高気温が39℃」みたいなことが起こっているのを考えると、もっと上がっていそうなものです。何だか不思議に感じますよね。

実は、地球の表面の7割以上を「海」が占めていますが、海の上の気温は上昇しにくいことから、地球全体の平均をとるとそのくらいの数字になるわけで、決して間違っているわけではないのです。

地球全体の平均気温が2℃上がると、一説では温帯地域である陸地の気温は今よりもさらに4から5℃上昇するといわれています。そうなると、東京の夏の最高気温が43℃とか44℃になる可能性もあるわけで、これはかなり危険です。やはり温暖化は止めなくてはいけません。

温暖化が我々のビジネスに与える影響とは?

こうした気候変動は、実はかなり瀬戸際です。20年前にちゃんと手を打っておけばもっとマシだったといわれていますが、途中、アメリカが京都議定書やパリ協定から離脱したりと、世界全体でも思うように進まず、温室効果ガスは増えてしまっています。

だからこそ「今回こそはちゃんとやらないといけない」という機運が高まっているのが非常に重要なポイントで、後がないだけに、今回の各国の取り組みは本気度が高いといえそうです。

温室効果ガスを削減するには、2つのポイントがあります。1つは発電時に燃やす化石燃料を減らし、再生エネルギーに転換すること。もう1つがエアコンの温度設定を控えめにするなど燃料や電力の消費を抑え、エネルギー消費量の少ない生活を送ることです。

日本はもともと資源がない国なので、後者の取り組みで頑張ってきました。LED電球に変えたり、電化製品の性能自体を上げることなどで対応してきたわけですが、ここからさらに46%の削減という高い目標を目指すとなると、その対応にも限界があります。現実的には、再生エネルギーを増やす取り組みを進めていかざるを得なくなるでしょう。

とはいえ、砂漠が多いので太陽光発電がしやすいアメリカや、安定して風が吹くため風力発電がしやすいヨーロッパの国々などと比べ、日本はここでも資源に乏しく、世界各国と比べても苦戦が強いられる可能性があります。

そうなれば、現実問題として電力料金は高くなっていくでしょう。つまり、地球温暖化対策は、事業者にとっては「コストの上昇」に間違いなくつながることなのです。

仕方がないコストだからこそ、しっかり目を向けてみよう

異常気象がもたらす自然災害は、日本経済にも非常に大きなマイナスをもたらすことが分かっています。

2019年には台風19号が東日本を中心に大きな被害をもたらしましたが、その2019年度の自然災害による損害保険金の支払総額は1兆2000億円超。大きな自然災害が起こるたびに経済が大打撃を受けるわけで、それをくい止めるためのコストと考えれば、仕方がないのかもしれません。

おそらくビジネスをやっている皆さんは、あまりそこまでは考えてこなかったと思います。昨今はSDGsへの関心も高まっていますので、地球温暖化に少しでも目を向け、「自分ごと」として考えられるといいのかもしれないですね。

最後に、もうお分かりだと思いますが、冒頭のクイズの答えは「地球の大部分は海で、海の上の温度は上がりにくいから」でした。ちなみに、この連載が今回で100回を迎えました。節目にふさわしく、地球温暖化というちょっと高尚で大きなテーマにしてみました。

構成:志村 江

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PROFILE
鈴木貴博

東京大学工学部卒業後、ボストン・コンサルティング・グループに入社し、数々の大企業の戦略立案プロジェクトに従事。1999年にはネットイヤーグループの創業に取締役として参加。2003年に独立し、百年コンサルティングを創業する。大手企業の経営コンサルティング経験を元に2013年に出版した『戦略思考トレーニングシリーズ』(日本経済新聞出版社)が累計20万部を超えるベストセラーに。現在はビジネスをエンタメクイズ化する経済エンタテナーとしても活動中。『パネルクイズ アタック25』(優勝)、『カルトQ』などのクイズ番組出演経験も豊富。近著に『戦略思考トレーニング 最強経済クイズ[精選版]』(日本経済新聞出版社)、『日本経済 予言の書 2020年代、不安な未来の読み解き方』『「AI失業」前夜―これから5年、職場で起きること』(ともにPHPビジネス新書)など。

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