私たちは1人1人異なる肌の色や瞳の色を持ち、それぞれにふさわしい「パーソナルカラー」があります。そして1人1人に似合う色があるように、その人がもっとも輝ける仕事があります。
「自分ならではの仕事がしたい」
今回お話を伺った三輪詩織さんは、そんな気持ちを抱きながら会社で働き、自分にできることは何かを探し続けていました。
結婚や出産を経験してもその思いが止むことはなく、ようやく見つけた自分ならではの仕事、それがパーソナルカラーを扱う、イメージコンサルタントでした。
三輪さんの目標は、美容とITの融合で新たな領域を開拓すること。これまでのキャリアで培った知識や知見を活かし、パーソナルカラーの認知を広めるために躍進を続けています。
新卒で大手人材広告会社に就職。3年間法人営業に従事したのち、IT企業に転職して広報職を務める。その後、結婚・出産を経験。産休中、姉の仕事をきっかけにパーソナルカラーに興味を持ち、カラー診断技術やメイク技術を習得する。
仕事復帰後、関連企業の取締役に抜擢され、育児と仕事の両立に奮闘。仕事の傍でイメージコンサルタントの活動を開始し、2017年7月に株式会社Style Worksを設立。
もともと、美容業界に興味があったわけではないんです。働きながら見つけた、自分ならではの仕事
——まずは、三輪さんがイメージコンサルタントとしてお仕事を始めるに至った経緯を教えてください。
新卒で人材広告会社に就職し、営業の仕事を3年ほど経験した後、インターネットの知識を深めたくてIT企業の広報に転職しました。
しばらくして産休をいただくことになったのですが、その時イメージコンサルティングという仕事に出合いました。
——もともと美容関係のお仕事をされていたわけではないんですね。
はい。プライベートではそれなりに美容にも関心はありましたが、仕事は全くの異業種でした。
そんな私がイメージコンサルティングの仕事に興味を持ったきっかけは、個人のお客さまに対してパーソナルカラー診断をベースにファッションアドバイスをしていた姉でした。
忙しい日々から一転して産休に入り、なんとなく物寂しさを感じていた部分もあったので、ほんの軽い気持ちで姉の仕事を見学させてもらうことにしたんです。
——実際に見てすぐさま、パーソナルカラーに可能性を感じたのでしょうか?
そうですね。ただ、以前からパーソナルカラーの話自体はよく聞いていましたが、実をいうと当初はあまり興味をもてませんでした。
「その服はパーソナルカラーと合っていないよ」と姉から言われるたびに、「いちいちうるさいな~着たいもの着てるんだからほっといてよ。」と思っていたんです(笑)。
でも、実際に姉の仕事ぶりを見たとき、パーソナルカラーによって魅力的に変わっていくお客さまの姿に衝撃を受けました。身につける色を変えるだけで、こんなにも人の印象は変わるのかと驚いた記憶があります。
その時、「これだ!」とひらめきました。
——パーソナルカラーを使ったイメージコンサルティングが、仕事になると確信したんですね。
はい。まだまだ一般的にはあまり認知されていない仕事ですが、やり方次第ではもっとスケールしうる領域なのではと感じました。
そんな想いからまずは会社員の傍らイメージコンサルタントとしての活動を始めました。
パーソナルカラー診断とは
——そもそも「パーソナルカラー」とはどんなものなのでしょうか?
「パーソナルカラー」とは、一言でいうと、1人1人に似合う“色味”のことを言います。
例えば、赤と言っても世の中にはいろいろな赤がありますよね。
たくさんの種類がある中で、その人にとってどんな色味が似合うのか。その人の生まれ持った肌や髪、瞳、唇の色などから1番似合うものを見極めていきます。
パーソナルカラーの種類は、その色味の特徴から、大きく分けると「春」「秋」「夏」「冬」の4つに分類されます。
——自身のパーソナルカラーを知ることで、どのようなメリットがありますか
まずは、膨大な情報に惑わされることなく、自分に最適な色の洋服やコスメを選べるようになります。
テレビや雑誌、SNSなど様々なメディアでは、あらゆる情報が氾濫していますよね。
その中で、自分に似合うものを見極める視点を持つというのは、実生活にとても役立ち、無駄な買い物を防ぐことにも繋がります。
そして何より、その人の魅力がもっとも引き立つカラーを身にまとうようになるので、簡単に、でも格段に、印象のアップにつながります。
「イメージ」を扱う職業としてのこだわりと戦略
——三輪さんが仕事をする上で、何かこだわっているアイテムはありますか?
仕事柄、メイクアイテムにはこだわっています。それぞれのパーソナルカラーにあったコスメは季節ごとに厳選していて、定番ものはもちろん最新コスメのチェックも欠かせません。
またこうしたメイク道具はもちろんのこと、仕事をする上で持ち歩くもの全てになるべく気を使うようにしています。
例えば、自分のコーディネートは当然パーソナルカラーを意識していますし、細かいところではお客さまにお渡しするペン1本でもこだわりを持つようにしています。
ヘアメイクやファッション、話し方や所作、果ては香りや表情に至るまで、その人に付随する全てがイメージを形成する要素になります。
そうした人の「イメージ」を戦略的に打ち出していくテクニックをお伝えするのが私の仕事ですので、まずは私自身がお客さまに信用してもらえるように、行動、言動から持ち物に至るまで、なるべく意識するように心がけています。
——そうした細部にまでのこだわりの甲斐あってか、現在ではレッスンの予約が数ヶ月先まで取れないほど人気なのだとか。三輪さんはどのような戦略をとって、今の人気を築いてきたのでしょう?
ありがとうございます。もちろんまだまだ反省や改善点も多くありますので、あまり偉そうなことは言えませんが、当初から意識していることは「差別化」と「PR」です。
まず、この仕事は国家資格ではないので比較的参入障壁が低く、同業の方も多数存在します。そこで、何かに特化して強みを打ち出し、差別化することが重要だと考えました。
また、なんとなくコンサルティングというと、何をやっているのか実態が見えない、といったイメージを持たれがちですよね。しかもそれがイメージコンサルティングとなると認知が低いためなおさらです。
そのため、コンサルを受けていただくと、どういうメリットがお客さまにあり、どんな変化を提供できるのか、そこが明確に伝わるようなメニュー内容をまずは重視しました。
そこで注目したのが「メイク」でした。
メイクってほぼ毎日しなければならないのに、人生できちんと教わる機会って一度もないんですよね。にも拘わらず、メイクは見た目を構成する重要な要素で、人のイメージに直結します。
メイクに興味はあるけれど、やり方に悩みを抱える女性は多く存在するので、パーソナルカラーがそのお悩み解決の1つであることを伝えられたら、きっと自然と認知されるだろうと考えました。
そのために、BeforeAfter事例をどんどん打ち出し、信用と実績をつむことに注力しました。
またPRについては、これまでの仕事で得た人脈も武器になっています。
情報感度の高い広報職の女性たちへのコンサルティングは想像以上に拡散力が高く、さらに彼女たち経由で、その企業の男性経営層からの診断依頼も多く頂くようになりました。
というのも、経営陣は取材や登壇など露出機会が多いので、その際の着こなしにもパーソナルカラーが有効だからです。
私自身も以前は広報職に従事していたため、実際どういうシチュエーションがあるのかイメージできますので、より具体的なアドバイスをさせていただけることも強みです。
このように、SNSとリアル双方からアプローチしてお客さまの獲得につなげています。
独立起業は、いつだって遅くない。
——法人化する際、決め手となったものは何ですか。
ありがたいことに、最近は本当にたくさんの診断依頼をいただけて、今後の見通しが立ったこともありますが、決断に大きく影響したのは子どもの存在でした。
以前は、時短勤務で周りに気を使うことも多く、毎日育児と仕事の両立にくたくたで、自分にも子どもにも余裕がなく心身のバランスを崩すこともよくありました。
なかなか思うような成果が出せず、ある日家で落ち込んでいると、まだ2歳にもならない子どもが「ママだいじょうぶ?」と心配そうな顔で声をかけてくれたこともありました。
その時はなんて情けない母親なんだろうと、かっこ悪い自分が悔しくて涙が出ました。
そこで、そんな自分を変えたくて、この子にとってかっこいいママになれるように本気でこの仕事で頑張ってみようと思い、起業を決意しました。
——子育てをしながら仕事をこなすのは大変だと思います。
そうですね、正直毎日電池切れです(笑)。
今は日々のレッスン、お客さまへのアフターフォロー、新規の方の問い合わせ対応や、SNS運営、HP制作などの裏側の整理などを全て並行してやっているので、毎日本当に息つく暇もありません。
子どもと遊んだり寝かしつけをしている時にも、頭の片隅では常にto doがよぎります。
でも、起業はそれなりにエネルギーを使いますが、考え方によっては全てを自分で決められるということでもあります。働き方や働く仲間も自分で選択でき、子どもとの過ごし方もゆとりをもてるようになります。
もちろんその分全責任が自分にかかっているのでプレッシャーもありますが、私は会社員だったときよりも、今のほうが格段に楽しく、充実した日々を送れていると思います。
——最後に、今後の展望をお聞かせください。
これまでの仕事で培ってきたITの知識を活かして、イメージコンサルティングの世界に新しい風を吹き込みたいと考えています。
具体的には、美容関連のメディアの立ち上げを計画しています。どうせやるなら、国内有数の唯一無二のメディアを目指す意気込みです。
同時に、もちろんパーソナルカラーという概念やイメージコンサルタントという仕事の認知を広げていくことも目標です。さすがに1人では限界があるので、人員の拡充も進めています。
また「美ンバウンド」という言葉にもあるように、日本の美容は世界からも注目されていますので、語学力も生かして今後は外国人の方の対応も着手していけたらと考えています。
まだまだ始まったばかりで失敗と挑戦の毎日ですが、やっと見つけた自分ならではの仕事ですので、お客さまに求めていただける限り、一生懸命がんばっていきたいと思います。