起業家、経営者にとって大事なのは、世の中を見抜く力です。1つの事象をどう捉えるかで、ものの見え方も、そこから得られる情報も大きく変わります。そうした「着眼点」、実はトレーニングによって鍛えることができるのです。累計20万部を超えるベストセラーとなった『戦略思考トレーニング』シリーズでおなじみの経営コンサルタント・鈴木貴博氏に解説してもらいましょう。
経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 135回・半年後のコスト
いきなりですが、クイズです!
クイズの答えの中に、着眼点を鍛えるポイントがある
ファミリーマートが2021年3月より販売している「ファミマソックス」が人気を集めています。品質が高く、履き心地が良いという評判に加え、他のお店ではあまり見かけないような絶妙なカラーバリエーションも人気の理由だとか。それでいて390円(税抜き)という価格も魅力的です。
ソックスだけでなく、Tシャツなどのアウターや、インナーにも力を入れています。着心地や通気性の良さなど、モノとしてしっかりしていることから、ファンがついているのでしょう。
これらの衣料品はファッションデザイナーとの共同開発のもと、「コンビニエンスウェア」というオリジナルブランドとして展開し、新商品も続々投入されています。
コンビニエンスストアで売っている衣料品というと、かつては急な外泊や出張などの際に買う「とりあえずのもの」の印象でしたが、今や全くそうではなくなっているのですね。
それでは解説します!
そんなファミリーマートが、今後は「ユニクロ」のようにラインナップをどんどん増やしていくのかというと、私はそうはならないと考えています。コンビニエンスストアのお店に置ける品数には限界があるからです。
とはいえ、全体で約4000品目しか置けない中で衣料品の売り場を充実させていくために、ファミリーマートはある工夫をしています。
それが、サイズ展開が少ない商品を選んでいることです。
人気になったソックスは、「22-25㎝」と「25-28㎝」の2種類のみ。主に小さい方が婦人用、大きい方が紳士用となるわけですが、男女に分けて細かくいろいろなサイズを取り揃えなくていいため、カラーバリエーションも豊富に用意できるわけですね。
Tシャツについては「M」「L」「XL」の3つのサイズとなりますが、店頭では1つの棚のラインに手前からサイズごとに並べるなどしていて、場所を取らずに陳列する工夫をしています。
何より、Tシャツで面白いのが「男女兼用」、つまりユニセックスであることです。これも品数を増やさないための1つの工夫でしょう。
「ユニクロ」で人気だったユニセックスの商品
「男女兼用」で思い出したのですが、実はこれ、昔の「ユニクロ」と同じ売り方なのです。
かつてユニクロの商品は「WOMEN(ウィメンズ)」と「ユニセックス」のみで、メンズというくくりはありませんでした。
昔、ユニクロの役員の方に聞いた話ですが、ユニクロは創業時から40代、50代の女性のユーザーがとても多いのだそうです。40代や50代になると、それまでに比べて体のラインが強調される服を着なくなる人が増えるそうで、そういう人たちがユニクロのユニセックスのシャツを好んだというわけです。
今回のファミリーマートはそれを狙っているわけではないでしょうが、ユニセックスというものを今になって捉えて、日本中にある店舗で販売しているというのは、1つ面白い話だなあと感じています。
セブンイレブンやローソンに対抗していくための衣料品ブランド
ファミリーマートが衣料品のオリジナルブランドを立ち上げているのは、セブンイレブンが「セブンプレミアム」に力を入れたり、ローソンが無印良品と提携して品揃えを増やしたりしていることと同じ流れの作戦でしょう。そうやってブランディングをし、自社ならではの商品を生み出しています。
今回紹介した衣料品ブランドを展開する話は、競合との差別化という意味でも、いかに効率よく商品ラインナップを充実させていくかという点でも、非常に参考になる事例ではないかと感じています。ぜひ参考にしてみてくださいね。
最後に、もうお分かりだと思いますが、冒頭のクイズの答えは「サイズ展開が少ない商品を選んでいる」でした。ちなみに、「ファミマソックス」にはファミリーマートのブランドカラーである「グリーン」と「ブルー」のラインが入った遊び心のある商品もあるようです。「色」の印象は大事ですね。
構成:志村 江