2021/02/19 起業家・先輩から学ぶ

1年目から年収500万円超え　いきなり黒字の集客UP計画＜アントレ本誌：2019年春号より転載＞

独立を目指す人なら誰しも、初年度から売り上げを伸ばしたいと考えるものだ。

そのカギを握るのは、ズバリ「集客」である。

スタートダッシュに成功して年収500万円を達成した4人の実例を通じ、顧客の集め方を学ぼう。

顧客とファンの確保が売り上げアップに不可欠

独立を目指す人の中には、「よい商品やサービスを提供すれば、商売はおのずとうまくいく」と考える人もいる。だが、これは危険な考え方だと、起業コンサルタントの中野裕哲氏は指摘する。

「商品・サービスの質を高めるのは大切です。でも、それだけでは不十分。商品・サービスの存在が顧客に伝わり、購入してもらえなければ一銭にもならないのです。その状態が長く続けば、いずれ資金は枯渇し、商売をたたまなければならないでしょう」（中野氏）

『アントレ』が毎年行っている調査によれば、独立初年度に500万円以上の収入を得た人はたったの21％（上図参照）。最初から売り上げを伸ばすのは、かなり難しい。ただし、突破法はある。それが「集客」だ。

「できれば独立する前から、あなたの商品・サービスを買ってくれる『顧客』を確保しておくこと。同時に、あなたのビジネスをさまざまな形で支援してくれる『ファン』を見つけること。この２つをしっかり準備しておけば、最初から大きな売り上げを得られる可能性は高まるはずです」（中野氏）

利益率などから必要な顧客数を逆算しよう

多くの顧客を確保できれば、売り上げも伸びる。そこで、年収500万円を得るのに何人の顧客が必要か考えてみよう（下図参照）。

例えば飲食店の例では、客単価 3000円・利益率10％の店を想定した。１年間に500万円の収入（粗利益）を得たいなら、利益率から逆算して年5000万円の売り上げが必要だ。そこから必要な来店客数を計算すると、１日あたり56人となる。

また、同じ分野でも業態によって確保すべき顧客数が変わることを示したのが学習塾の例だ。個人指導型学習塾は多くの講師が必要で利益率は低め。その代わり、生徒１人あたりの月謝は高くなる。一方、少ない講師でまかなえるグループ指導型学習塾は利益率こそ高いが、月謝の設定は安くなりがちだ。そのため、両者では集めるべき生徒数に違いが出てくる。

あなたも、想定される利益率や客単価などから、求める収入を得るのにどの程度の顧客が必要になるのか算出してみよう。

SNSを戦略的に使い早い段階から情報発信

独立した後で顧客確保を目指して行動するようでは遅すぎるというのが、中野氏の意見だ。

「相手に自分の存在を伝えてからファンになってもらうまで、タイムラグが生じます。ですから、開業の半年～１年前には集客に取りかかるべきでしょう。例えば店を開くなら、設計や内装工事が始まった段階から、ＳＮＳを使って情報を発信するのです」（中野氏）

この時大切なのが、自らの挑戦をストーリーとして伝えること。

「私の知人に、ベトナム料理の有名店にほれ込んでオーナーに頼み込み、日本での展開を任された人がいます。彼はオーナーに気に入られ、一緒に先祖の墓参りまでしていましたよ（笑）。そうした過程をＳＮＳで伝えることで、『ここなら本物のベトナム料理が楽しめそうだ』『この店には“物語”がある』と共感するファンを増やしていったのです」（中野氏）

自社を選んでもらうには、自らをブランド化する必要がある。それにはＳＮＳの戦略的な活用が大事というわけだ。また、リアルな場で人脈を広げることも重要。
「できる人は、開業直後に近隣のオフィスなどを訪ね、割引券を配布しながらあいさつをしています。また、知人の店に互いにパンフレットを置き合うなどの工夫も有効。とにかく、リアルな場でも貪欲に動いて、人とのつながりを増やすべきです」（中野氏）

創業直後は、集客に費やす資金も時間も限られているものだ。

「だからこそ、早めに動くことが肝心です。また一般的に、売り上げの5～10％程度は人脈作りも含めた広義の『広告宣伝費』にあてるといいでしょう」（中野氏）