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1日14人しか治療できないからこそ、できることがある。鍼灸師・前川徹さんの哲学

1日14人しか治療できないからこそ、できることがある。鍼灸師・前川徹さんの哲学

質と量。

商品・サービスにおいて、一定の質を担保できなければ顧客は離れていってしまいます。

しかしどれだけ素晴らしいクオリティでも一定の量もなければ、そもそも稼ぐことができなくなってしまう。

ビジネスの世界で質を取るのか量を取るのかは、永遠の課題なのかもしれません。

今回お話を伺ったのは、鍼灸師の前川徹さん。前川さんは2018年に世田谷区等々力で、SUNplus等々力鍼灸院を開業しました。

そんな前川さんは、1日14人しか治療することができない小さな治療院だからこそできることがある、とおっしゃっています。

今回はSUNplus等々力鍼灸院にかける前川さんの想いについて、伺いました。

<プロフィール>
前川徹さん
鍼灸師・SUNplus等々力鍼灸院院長

高校時代、所属していたバレーボールのトレーナーに憧れ、鍼灸師の資格の取得を目指す。
鍼灸の専門学校を卒業後、国家資格を取得。その後、川崎市の鍼灸接骨院に就職。
約10年間の修行期間を経て2018年10月、世田谷区等々力にSUNplus等々力鍼灸院を開業。独立を果たす。

決して準備万端ではなかった。前川さんがSUNplus等々力鍼灸院を開業するまで

―世田谷区等々力にあるSUNplus等々力鍼灸院で院長を務める前川さん。いつ頃から鍼灸の道に進もうと考えていたのでしょうか?

前川さん
高校時代からですね。中学高校とバレーボール部に所属していたのですが、当時お世話になっていたチームのトレーナーから大きな影響を受けました。

身体のコンディションの調整や、トレーニング方法の相談をはじめ「どうやったらもっと身体を上手く使えるか」を丁寧に指導してくださって。

だから最初はスポーツのトレーナーになりたかったんです。しかし周りの人に相談するとどうやらトレーナーとしてだけじゃ食っていけないことが分かって。

そこでトレーナーを見据えつつ鍼灸の施術ができるよう、資格を取ろうと思ったんです。

―それで専門学校に進み、国家資格を取得したと。

前川さん
はい。卒業後は川崎にある鍼灸接骨院に就職しました。そこで6年ほど、転職して別の鍼灸接骨院に5年ほど勤めた後、このSUNplus等々力鍼灸院を開業しました。

―開業するまでの流れを教えてください。もともと独立志向はあったのでしょうか?

前川さん
どうでしょうか…。父がもともと薬局の経営をしていたので、心のどこかで独立は考えていましたが、一方で僕は安定志向なところもあるので(笑)。

資格を取って働いてみると、休みがあって毎月給与をもらって、という生活が続きますよね。その生活で特に困ることもないので、就職したての頃は特に独立を考えてはいなかったと思います。

しかし勤続年数を重ねていくと、次第に「このままでいいんだっけ?」と思うようになり。

そして最初に勤めていた鍼灸接骨院を退職する時には、独立を視野に入れつつ、経営を学ぶために転職活動をしていました。

―2社目では鍼灸整骨院の院長もされていたそうですね。

前川さん
はい。入って4カ月ほどで院長になったのですが、日々の業務で忙しく、独立に必要な経理周りや宣伝PRなどを直接学ぶ機会は少なかったですね(笑)。

それでも幸い、前職で新規店舗の立ち上げを2回経験させてもらっていたので、物件探しから内装を整えたりなど、店舗を立ち上げるまでの流れはそれなりに理解していました。

こう振り返ると、決して準備万端で独立したわけではなかったかもしれません。流れやノウハウが分かっているところと、そうでないところの差は少なからずありました。

転機が訪れたのは最後の1年間。当時勤めていた会社の社長に「そろそろ独立したら?」と発破をかけていただいて。

そこから物件を探して諸々準備を始めて、いよいよ独立することになったんです。

1日14人しか治療できないからこそ、できることがある。患者さまの満足度ファーストの哲学

―2018年にSUNplus等々力鍼灸院を開業されて、もうすぐ丸2年を迎えようとしています。実際に独立をされていかがでしたか?

前川さん
最初はめちゃくちゃ不安でしたね(笑)。

開業したのは世田谷区の等々力なのですが、自分の治療院がこの土地の人たちに受け入れてもらえるかなと。

前職では同じ世田谷区の梅ヶ丘というところで院長をしていたのですが、梅ヶ丘と等々力はバスで1本なので、立ち上げ初期の頃は前職時代の患者さまに多く来ていただけて。

なのでありがたいことに患者さまが1日にゼロ、ということはなかったです。

一方でそれも長くは続かないだろうと思っていたので、等々力で新規の患者さまに来ていただくための努力は並行して行っていましたね。

―具体的にどのようなことをされていたのでしょう?

前川さん
固定電話を携帯電話に飛ばしていつでも出られるようにしたり、ドアを開けていつでも気軽に入れるようにしたり。

あとは患者さまがいない時は表を掃除したり、あいさつしながらチラシを配ったり。

特に変わったことはしていないです(笑)。地道な集客活動をしていました。

でもその甲斐あって、ちょっとずつですが患者さまが来てくださるようになりましたね。

―施術に関して、大切にされていることはありますか?

前川さん
抽象的な言い方になってしまいますが、患者さまの満足度を高められるようにしています。

接客態度や治療院そのものの空間作りなどはもちろん、技術的な話で言えば患者さまのおっしゃる「つらい」の奥にあるものは、なんだろうと、常に考えていますね。

例えば「肩が凝っていてつらい」といって来院される方でも、肩はもちろん実は首や腰にも疲れが溜まっていたり。

時に患者さま自身も気付いていないような、根っこの部分を汲み取ることは大切にしていますね。

―集客のお話もしかりですが、前川さんは患者さまとのコミュニケーションを大切にされているのですね。

前川さん
患者さまの期待以上のパフォーマンスをするためには、必要不可欠なことだと思います。

それにSUNplus等々力鍼灸院では私を含めてスタッフは2人しかいませんから、1人あたりどんなにがんばったって1日7人。

つまり最大で治療できるのは14人。たくさんスタッフを雇って、たくさんの患者さまを見るようなスタイルの治療院ではないのです。

でもその規模感だからこそできることがあるなと。それが患者さま1人1人の満足度の向上だと思うんです。来院された患者さまの満足度が高ければ、きっとまた来てくださる。

地道なことの積み重ねかもしれませんが、大切にしたいことですね。

いろいろな縁や出会いの積み重ねが、独立する時に自分を助けてくれた

―前川さんのこれからの展望について聞かせてください。

前川さん
まだまだ先になりそうですが、いずれは店舗をもう少しだけ拡大したいです。でも全国に展開するとか、そういうのではなくあくまで3店舗くらいが理想ですね。

直近の目標はもう少しスタッフを雇って、定休日をなくしたいです。そうすればもう少し、治療できる患者さまの数も増やすことができるかなと思っています。

―最後に読者の方へメッセージをお願いします。

前川さん
先程も話したとおり、僕自身は安定志向なので「独立した方がいいよ!」と声を大にしては言えないのですが…(笑)。

でも独立をした時に、助けられたのはそれまでの人間関係でした。

それこそSUNplus等々力鍼灸院の内装も、前職時代、店を立ち上げた時にお世話になった方ですし、ロゴや診察券のデザインをしてくださった方も患者さまの1人だったり。

いろいろな縁や出会いの積み重ねが、独立する時に自分を助けてくれました。

もし独立・起業を検討されるなら、まずは今の、目の前の人間関係を大切にすることから始めてみてはいかがでしょうか。

取材・文・撮影=内藤 祐介

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