起業家、経営者にとって大事なのは、世の中を見抜く力です。1つの事象をどう捉えるかで、ものの見え方も、そこから得られる情報も大きく変わります。そうした「着眼点」、実はトレーニングによって鍛えることができるのです。累計20万部を超えるベストセラーとなった『戦略思考トレーニング』シリーズでおなじみの経営コンサルタント・鈴木貴博氏に解説してもらいましょう。
経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第62回・終わらないタピオカブーム
いきなりですが、クイズです!
クイズの答えの中に、着眼点を鍛えるポイントがある
消費税が10%に上がりました。今回は8%に上がった時の教訓があったからか、直前の駆け込み需要もそれほど目立った話題にはなりませんでしたよね。
そのかわりといってはなんですが、わかりにくい軽減税率とポイント還元にフォーカスが当たることが多かったように思います。
「キャッシュレス決済をすればポイント還元」というこの施策がどうもわかりにくいのは、3つの施策がごっちゃになっているからだと思われます。
1つは増税による消費の冷え込み対策。
2つ目が中小企業振興策。
そして、
3つ目がキャッシュレス決済の普及です。
キャッシュレスの普及については、まだまだお金もかかるしなかなか進まないだろうというのが世の中の考えでした。しかし、10月1日になってみると、あちこちのお店でキャッシュレス決済が使えるようになっています。
それでは解説します!
なぜこのような逆転劇が起こったのでしょうか。
一番大きいのは、キャッシュレス決済の処理システムの導入が安くなったからです。
キャッシュレス決済については、使う側の利便性で語られることがどうしても多くなり、やれ、どのアプリだ、その使い方は、という話になりがちです。一方、決済する企業側に目を向けると、これまで数百万円、場合によっては数千万円かかっていたシステムの導入が、今だと数万円でできるようになりました。
消費税が5%から8%に上がった際、「レジ倒産」というのが流行語になったのを覚えている人もいるかもしれません。8%に対応するようレジの設定を変えなくてはならず、それをするには数千万円の投資が必要で、ギリギリのところで経営を行っていた中小企業の中には、廃業を余儀なくされたところもあったのです。
その経験があったことからか、キャッシュレス決済の普及についても不安視され続けてきましたが、どうやら今回に限っては全くそんなことはなかったようです。
数千万円かかっていたものが、数万円で済む時代になった
なぜこれまで高額だったレジのキャッシュレス対応が数万円で済むのでしょうか? それはスマホやタブレット端末をレジで使うことができるようになったからです。実際、私がよく使うスーパーでも「○○ペイで支払います」というと、レジの従業員がタブレット端末を取り出してバーコードを読み込んでくれます。
賢いなと思うポイントが2つあります。レジ全体を作り直すのではなくキャッシュレス決済だけ別の仕組みで導入していること。そして、以前の電子マネーのように専用端末を買わせるのではなく、どこでも売っているタブレット端末でバーコードを読み取っていることです。だから投資がかからないわけです。
このように、莫大な投資が必要だと思われていたものが、気がついたら数万円で使えるようになっていたということは、実は他にもよくあります。
インターネット通販をやっている企業ならわかると思いますが、「Amazonマーケットプレイス」での出店は簡単にできますよね。そのメニューの中に、荷物のハンドリングをAmazonに委託できるサービスがあります。
それを活用すれば、確かにコストはかかります。しかし、Amazonが扱う商品と同じスピードで配送してくれるため、そのおかげで売り上げが上がったりするわけです。
中小企業がAmazonと同じ物流インフラを整えることは無理ですが、実は少しの投資で同じインフラが活用できるというのは、考え方としては同じことだと思います。
実績のあるプロの技術を安価で利用できるクラウドサービス「クラウドワークス」も同じでしょう。お店のロゴを新しくしたい、などと思った時に、これまでだとコスト面を心配してなかなか人には頼めずにいたはずです。しかし、「クラウドワークス」を活用すればクリエイターへの外注費が数万円と安く済むわけです。
自分のやり方は「時代遅れ」になっていないか!?
自身で事業を始めて何年か頑張っていると、創業時と比べて横の連携が少なくなり、自分のやり方が正しいのか、時代遅れになっていないかを確認することがなかなかできなくなることがあります。
今の時代に商売をする上では、「新しい仕組みを安く導入する」ことは間違いなく必要になるでしょう。いろんな人の話を聞くなどして、最近便利なツールがないかどうか、情報収集しておきたいですよね。
最後に、もうお分かりだと思いますが、冒頭のクイズの答えは「キャッシュレスレジの導入が数万円でできるようになったから」でした。ちなみに、今回の増税を機に、消費者が負担する税率は、買うものや支払い方法などによって3、5、6、8、10%の5種類に増えたそうです。もう頭がこんがらがりそうです(笑)
経営戦略コンサルタント
百年コンサルティング株式会社
代表取締役
鈴木貴博