起業家、経営者にとって大事なのは、世の中を見抜く力です。1つの事象をどう捉えるかで、ものの見え方も、そこから得られる情報も大きく変わります。そうした「着眼点」、実はトレーニングによって鍛えることができるのです。累計20万部を超えるベストセラーとなった『戦略思考トレーニング』シリーズでおなじみの経営コンサルタント・鈴木貴博氏に解説してもらいましょう。
経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第61回・「長持ちするタイヤ」で儲ける方法
いきなりですが、クイズです!
クイズの答えの中に、着眼点を鍛えるポイントがある
今年の夏はタピオカの話題一色でしたよね。しかし、街中にたくさんできたタピオカドリンクのお店の行列も、ここ最近は落ち着いてきたようです。
特に最近は、プラスチックを使った容器やストローに対して、環境面からの風当たりも出始めています。東京・原宿にできた「タピオカランド」がイマイチ盛り上がらなかったことを伝えるニュースなどもあり、「そろそろブームも終焉に向かうのか?」などという雰囲気がただよっています。
…と思いきや、その一方で、ファミリーレストランなどの飲食店では、タピオカドリンクが盛り上がり始めたのだとか。聞いた話だと、回転寿司チェーン「はま寿司」がミルクティーなどのタピオカドリンクのメニューを導入したところ、本部の予想を10倍近く上回る売り上げを見せたようです。
それでは解説します!
この飲食店でのタピオカ人気ですが、今までのタピオカブームとはちょっと違うものだと捉えた方が良さそうです。
なぜなら、これまで「どうせ流行りのものだろう」と思ってタピオカドリンクを飲んでいなかったような人が支えているからです。つまり、たまたま飲んでみたところ「これは美味しい」となり、繰り返し注文するようになった人が多く、そういう意味では「実需」なのです。インスタ映えやファッション、トレンドみたいなものとはあまり関係のない、リアルに求める声が支えている人気だというわけですね。
となれば、ビジネスとして検討する余地はまだまだあるのかもしれません。
「美味しい」からこそのリスク要因がある
ただ忘れてはいけないのが、過去のスイーツブームでの教訓です。昔、ナタデココが大流行した際、急激なブームに対応するために各メーカーがこぞってフィリピンなどに工場を作った結果、量産体制が整った時点でブームが終わっていたことがありました。
タピオカについては、「美味しい」という下支え需要が根強い分、一気に飽きられることはなさそうです。それでもタピオカが持つ、それこそブームを終わらせかねない弱点については把握しておくべきです。それが、「美味しい」の裏にある「太る」という話です。
この話は今に始まったことではありません。しかし、「美味しいのはカロリーが高いから」ということに気づいてしまうと、実需だけに急にタピオカ離れが進む可能性はあります。大きなリスク要因になりかねないことは把握しておくべきでしょう。
トレンドやブームとの向き合い方も、経営者に求められる力の1つである
ビジネスをやっていると、目の前にあるブームに振り回されることは非常によくある話です。仮に乗っかるにしても、時期を間違えてしまい機会損失するようなことも起こり得ます。
一方で逆の要因として、大量に仕入れができるようになった途端にブームが終わり、たくさんの在庫を抱えてしまったり、投資が回収できずに終わってしまうというようなこともありがちなのです。
そうならないように、ブームが起きているメカニズムや、それに水を差しかねないリスク要因について把握しておくことが非常に大事だというわけですね。ぜひ皆さんのビジネスでも参考にしてみてください。
最後に、もうお分かりだと思いますが、冒頭のクイズの答えは「太る」でした。ちなみに、「はま寿司」でのタピオカドリンクの売れ行きは、一番人気の「中とろ」をはるかに超える売り上げだったそうです。タピオカ人気、恐るべしですね。
経営戦略コンサルタント
百年コンサルティング株式会社
代表取締役
鈴木貴博