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能力の良し悪しではなく志が同じ人とチームを組む。女性下着通販サービスを手がける経営者の苦悩と成功

能力の良し悪しではなく志が同じ人とチームを組む。女性下着通販サービスを手がける経営者の苦悩と成功

近年日本でも増え続けている女性の起業家。

世界を見渡すと数多くの勢いある女性リーダーが、男性経営者とは違った視点、考え方で活躍しています。

男性にはない優位性から今後さらなる期待をされていますが、逆に女性ならではの悩みもあるはず。

今回お話を伺ったのは、女性下着通販サービスを展開しているフィッティン株式会社の代表取締役・本間佑史子さん。

本間さんが運営している女性下着通販サービスについて、女性起業家ならではの苦悩、そして本間さんの考える女性が成功しやすい起業スタイルとは。

起業を目指す女性なら知っておきたいアレコレを、徹底的に聞いてきました。

<プロフィール>
本間佑史子さん・フィッティン株式会社代表取締役

新卒で大手女性下着メーカー、店頭研修〜EC部門に勤務。2013年に委託制作事業・人材事業・フラッシュモブサービスを展開するスカラインターナショナル株式会社を設立。その中の新規事業として「下着のオンラインフィッティングサービスFITTY」を企画。

KOBE STARTUP GATEWAY入賞。B-DASH CAMP・IVSに出場後、2016年に下着ビジネスに集中するため、フィッティン株式会社を設立、内閣府主催の内閣総理大臣賞女性のチャレンジ賞受賞。

そして2017年、FITTIN custom line(フィッティンカスタムライン)というWEB完結型のセミオーダーメイドランジェリーの製造販売。

EC化率わずか2%!クローズドな女性下着市場に、Webで勝つための可能性


―フィッティン株式会社を立ち上げるまでのプロセスについて、お話を聞かせてください。

本間さん
外資系の大手下着メーカーに新卒で入社して、EC、サイト運用などの業務に携わってきました。店長制の組織の体制上、SEOやアフィリエイト、システム周りなどほぼ1人で全ての業務をこなしていました(笑)。

そして4年ほどで、結婚し退職。その後、女性下着を扱うスタートアップ企業にインターンとしてジョインしたのですが、経営難により離脱する運びに。

まだ女性下着という市場でビジネスがしたかった私は、すぐに起業を考えました。

―そしてフィッティン株式会社を立ち上げるのですね。

本間さん
いえ、最初に立ち上げたのはスカラインターナショナル株式会社という会社でした。

当時は資金的にも人材的にも、もともとやりたかった女性下着ビジネスを立ち上げる体力がまだ会社になかったので、前職で培ってきたスキルを活かして、人材事業やECのコンサルティング事業からSEO対策やサイト制作までを一貫して行う業務をメインで始めました。

そして1年半ほどして、会社がある程度軌道に乗ってきた段階で本来やりたかった女性下着ビジネスに移行していきました。

―新卒時代から現在まで女性下着関連のお仕事をされていますが、もともと下着のビジネスに興味があったのでしょうか?

本間さん
いえ、もともとは女性下着についての飛び抜けた興味があった訳ではありませんでした。

就職活動を行っていたタイミングでは、これから成長していくであろうインターネットをつかった業界で働きたかったということ、また吉越浩一郎さん(1992年にトリンプ・インターナショナル・ジャパン(株)代表取締役社長に就任し、2006年退任)の影響もあり、たまたま女性下着系の会社でEC関連の仕事をやらせてもらえるようになったんです。

仕事をしていく内に、女性下着の市場ってとてもおもしろいなということに気づいたんです。

―どのあたりがおもしろかったのでしょう?

本間さん
下着業界というのは、とてもクローズドな市場です。また、1つの商品に対して50サイズほどあるので、S/M/L展開の一般アパレルとは製造工程も、販売戦略も一線を画します。

在庫リスクがとても高いので、言ってしまえばスタートアップなど体力があまりない会社は進出しづらい商材でもあります。

そして日本の下着のEC化率(全ての商取引のうち、電子商取引が占めている割合)がわずか2%前後と言われています。

下着は肌に直接触れるものなので、付け心地を重要視するユーザーが多く、店舗に実際に足を運んで試着することが多いため、という理由が挙げられます。

そして、男性には女性下着の着用感は分かりずらい。

そうした背景から、弊社のようなベンチャー企業でも女性下着という市場に参入する余地があると判断しました。

―下着市場におけるEC化率がわずか2%しかないのは、実際に店舗に足を運んで購入したいというユーザーが多いから、とおっしゃっていましたが、こうしたユーザーに振り向いてもらうためにどのようなアプローチをしたのでしょうか?

本間さん
私は新卒時代、フィッティングアドバイザーとして実際に店舗へ出て、お客さまに最適な下着のサイズをご提案していました。

例えば、同じバストサイズでも体形や身長によってフィットする商品は異なります。


出典:FITTINより
https://www.fittin.jp/

本間さん
弊社が運営しているサービス「FITTIN」では、膨大なデータを集めてアルゴリズムを作成し、わずか30秒で自分にぴったりの下着を選ぶことができるサービスを作りました。

商品登録数も業界トップクラスなのでわざわざ店舗に足を運ばずとも、自分にぴったりの下着を見つけて、そのまま注文までできるというわけです。

理想か現実か。スタッフとの軋轢の末に下した、経営者としての答え


―こうしてフィッティン株式会社を立ち上げた本間さんですが、ここまで来るのに苦労したことはなんですか?

本間さん
本当にいろいろな苦労はあったのですが、1番手を焼いたのはスタッフのマインドセットですね。

経営者である自分と、実際に動いてくれるスタッフの気持ちを合わせることが1番大変だったなと思います。

―具体的なお話を聞かせていただきますか?

本間さん
最初に会社を立ち上げた時は、とにかくキャッシュを作りたかったので、少数精鋭でとにかく売り上げを伸ばしていくことを大切にしていました。

それが功を奏してなんとか会社は徐々に大きくなっていったのですが、そうした意識のもとで仕事をしていたからか、いつからか「お金を稼ぐことが正義」という考え方を持つスタッフが増えていきました。

―本間さんとしては、あくまで女性下着ビジネスをするためにキャッシュを作るという意識だったんですね。

本間さん
はい。会社が軌道に乗り始め、いよいよ女性下着のビジネスにシフトをしていくという時に、私とスタッフとの間に溝ができてしまったんです。

今思い返せば、内部紛争状態でしたね(笑)。

―売り上げ重視だったスタッフに対して、どのような方法で歩み寄っていったのでしょうか?

本間さん
モチベーションを上げるために、彼ら彼女らにとって良い条件などを取り入れるようにしました。

売り上げに応じたインセンティブの歩合を上げたり、待遇を良くしたり。さらに彼らとより密なコミュニケーションを取るようにも心がけました。

―そうした努力の末、無事に和解したのですか?

本間さん
いえ、結局ダメでした(笑)。

やっぱり、コミュニケーションを取れば取るほど価値観が違うことが明白になりましたし、いくら条件で縛ろうとしても不満は募っていく一方で。

創業時から私の周りには私よりも年上の人が多かったですし、独立心が強い人も多かったんです。

そんな中で、年下で経験の少ない私は、スタッフたちからなめられてしまうことも少なくありませんでした。

それでも当時は数字を出せる、イケイケのチームを作ればいいと本気で思っていましたし、理想と現実の間でずっと葛藤していましたね。

―それまで会社の中核を担ってきたメンバーとの軋轢なら、なおさらですよね。結局どうなったのでしょうか?

本間さん
最終的には、私のやりたかった女性下着ビジネスに舵を切ったので、その方向性に不満があるスタッフには話し合いの上、独立してもらいました。

私はどうしても女性下着ビジネスの市場で勝負がしたかった。そして、そのビジョンに共感してくれるスタッフを大切にしたかった。

だから、ビジョンに共感してくれるスタッフを残して新たなスタートを切ったんです。

―大胆な決断を下しましたね。そして現在に至るわけですが、現在のチームはどうでしょうか?

本間さん
今のチームは8人いるのですが、エンジニアとデザイナー以外は全員女子で楽しく仕事をしています。女子大みたいなオフィスです(笑)。

そして何より、今のチームはスタッフ全員がこの「FITTIN」というサービスのことが好きなんです。

スタッフ間の軋轢もなく、みんなが「FITTINをもっと良くするためにどうしていくべきなのか」をそれぞれで考えながら仕事をしています。

―同じ志を持った仲間たちが揃ったんですね。

本間さん
おかげさまです(笑)。

その人がどんなに優秀でも、見ている方向が違っていたらやっぱりダメなんです。

優秀かどうかではなく、自社のサービスに共感し応援してくれる人が、私の経営には合っているんだなと学ぶことができました。

低リスクでコツコツと売り上げを伸ばす。女性が「セルフプロデュース型起業」に向く理由


―いくつもの苦難や試練を乗り切った今、次に見ているものはなんでしょう?

本間さん
今年はフィッティン株式会社にとって、とても重要な年になります。「FITTIN」がある程度大きくなってきたので、一気に勝負をかけたいと思っています。

具体的には資金面を強化するなどして、いよいよ「FITTIN」の自社商品を作っていきたいですね。

―そのために今、どんなことが必要だと思いますか?

本間さん
「FITTIN」のビジョンに共感してくれる仲間を増やしたいですね。

具体的な例としては、今年の4月から子育てをしているお母さん達を積極的に雇うことにしました。

出産を機に仕事から離れてはいるものの、扱う商材への理解度や親和性が高いことから、彼女たちは心強い味方になってくれると思いました。

そのために彼女たち1人ひとりの働くスタイルに合わせて、時短勤務や子連れ出社、フリー出社などさまざまな制度を取り入れています。そうした導入に伴い、成果が上がってきています。

そしてこれからはもっと企業を大きくしていくフェーズに入るので、志を共にしつつもバリバリフルタイムで働いて、一緒に上を目指していける仲間を増やしていきたいですね。

―最後に、これから起業家を考えている女性に対して、何かアドバイスをいただけますか?

本間さん
起業は、自分の趣味や好きなことを個人でビジネスにしていくパターンと、スタートアップのように出資してもらってチームでビジネスをしていくパターンの2つがあると思っています。

多くの女性の場合、前者のパターンの方が向いていると思います。なぜなら女性は良くも悪くもリスクを回避しようとする傾向の強い生き物だからです。

低リスクで小さく始めてから、大きく育てていければいいと思います。

私自身は、結果的にスタートアップ企業を立ち上げてリスクを取る方向に進んでいますが、正直あまりおすすめしません(笑)。メンタル的にもかなり厳しい時もありました(笑)。

できるだけリスクを伴いたくない方はまず、堅実に売り上げを120%ずつ伸ばしていくビジネスプランから考えてみると、リスクも少なく安定した起業ができると思います。

もちろん、リスクを取ってでも急速に成長させて行きたい方は、最初からスタートアップ企業を立ち上げるのも1つの手段です。自分に合ったプランで勝負できればいいと思います。

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