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相続時に会社を廃業する際にすべきことは

相続時に会社を廃業する際にすべきことは

最近、相続に関する記事を目にする機会が増えました。

相続税法や相続法の改正があり相続を特集した記事も増え、相続を考える機会が多くなったのでしょう。

そんな相続に関する記事の中でも多い“相続税対策”や“スムーズに相続が進むための対策”といったテーマから今回は少し趣向を変えて、“親のやっていた会社を続けることができないために廃業する”際の流れについて、株式会社のケースで取り上げます。

なお、有限会社や合同会社もおおよそ同じ手続きです。

会社の廃業にはルールがある

親が会社を経営し、子どもは別の会社で会社員として働いているケースは多いでしょう。

しかし子どもが親とまったく別の仕事をしていると、親の会社を継ぐこともなかなかできないと思います。

また近年の情勢の変化で、中小企業を以前の業種のまま引き継いでいくのが難しい時代になっています。

そして会社を続けられない場合は、会社を廃業にしなければなりません。では、会社を廃業にするには何をすればいいでしょうか。

会社を廃業する場合は、会社を設立するときと逆の作業を行うことが基本になりますが、その作業は設立よりかなり面倒になります。

会社を始めるときには、まず出資をして会社の活動の基礎になる資本金を集めます。

次に会社名・会社の目的を決め、定款と会社の実印も作成します。そして会社の設立を登記するのです。

会社の設立登記が終わったら、税務署と地方自治体(以下「税務署等」)へ開業の届け出をします。

これで会社の事業はスタートできます。

会社の廃業では設立時にはない、複雑で聞いただけではわからない単語もでてきますが、おおよそ同じような作業を行うことになるのです。

会社を廃業する際の手続き

会社を廃業するには以下の手続きを行う必要があります。

会社の解散

会社を解散することを株主総会の特別決議で決議し、可決されたら解散の宣言を行います。

次に、解散の日から2週間以内に清算人を決め、官報公告を出し債権の申し出を受けます。

官報とは国が発行する機関紙(インターネット版もあります)で、公告とは官報に法令上の義務がある情報を載せることです。

株主総会で解散を議決したら、法務局へ解散と清算人の登記を行います。

債権・債務の処理

解散後は代表取締役(取締役)に代わって、清算人が債権債務の債権・債務の処理を行います。

解散の公告は2カ月間行い、その間に債権の申し出を待ちます。

常に取引がある取引先などへ解散する旨を通知して債権・債務の金額を確定し、売却が可能な財産は売却して現金化します。

公告の期間が終わったら債務を確定して債務の支払い(清算)を行います。

清算決了

清算が終わることを“清算決了”といい、財産が残った場合に株主へ分配を行います。分配後に清算決了の登記を行って一連の手続きは終了です。

会計・税務の手続き

では会計・税務の手続きはどうするのでしょうか。

会社は通常、年に一度の定款に定めた日に決算を行って、財務諸表を作成し株主などへ報告するとともに、法人税などの確定申告を行います。

会社を解散する場合は“解散日”で営業活動を終了します。清算人は解散日における財産目録や貸借対照表の作成を行います。

会計手続きとしては、解散日に決算を行って財務諸表を作成し、解散事業年度の申告書を「税務署等」へ提出し納税を行います。

解散の申告は1年に満たない期間ですが、納税の手順は通常の法人税などの申告とほぼ同様です。税務署や地方自治体へは解散の届け出を行います。

清算期間中は流動資産の回収を行い、固定資産は売却や精算をして現金化します。

負債の確定は、公告により申し出があった取引先や継続して取引のあった先からの債務金額を集計して行います。

そして、すべての債権・債務が確定したら債務を返済します。このとき会社の現金だけで債務を返済しきれない場合は、“特別清算”と“裁判所へ破産手続開始の申立て”を行うことになります。

税務手続きは、清算が解散の日から1年以内に終了しない場合は清算事業年度の確定申告書を作成し、「税務署等」へ申告書を提出し納税します。

通常の申告とは少し違う面がありますが、計算の流れは同様です。

また、消費税の課税事業者の場合は、消費税の計算をして税務署へ申告書を提出します。

解散宣言後、事業としての営業活動は止まっていますが、建物の売却や経費の支払いなど消費税にかかわる取引は発生することがほとんどなので、申告は必要になります。

納税になることもありますが、還付になることもあります。

債務の返済が完了(残余財産の確定)したら、残った現金を株主へ分配することになります。

清算人は清算事務決算報告書を株主へ提出し清算完了の報告をします。株主総会を開催し承認を得られると清算決了となります。

ここで株主へ出資金額以上の分配がある場合は、株主へ配当があったとして所得税の課税となり所得税の源泉徴収が必要になります。

残余財産の確定後1カ月以内に清算確定申告書を「税務署等」へ提出し納税をします。

ただし株主への分配がある場合は“分配の行われる1日前まで”が提出期限になります。

また、清算決了の届け出も提出しましょう。

会社廃業にかかる費用一覧

上記の流れで会社を清算した場合は、以下のような費用や納税が発生します。

登記費用

解散と清算人選任登記の登録免許税は39,000円、清算決了時の登録免許税は2,000円です。

公告費用

解散の公告費用は行数によりますが4万円程度です。

税金

法人税・地方法人税・事業税・法人住民税…法人に課税所得が出た場合
法人住民税の均等割…清算決了まで1年あたり7万円程度(自治体により若干の違いあり)
消費税…清算決了までに納付すべき消費税が発生した場合

各種報酬

司法書士報酬…登記を依頼するため
税理士報酬…申告書の提出や届け出を依頼するため
弁護士報酬…弁護士が必要になる場合

まとめ

会社の廃業は設立とは違い、かなり手間・時間・お金のかかる手続きが必要です。

専門家への依頼なしで進めることは難しい場合が多いため、専門家に依頼する分の費用もかかります。

ただ、“手続きをせず休眠会社にしておく”場合は、税務申告を怠ると後になって債務が出てくるというリスクがあります。会社を続けられない際は清算をして会社を廃業しましょう。

PROFILE

税理士 須栗 一浩

税理士法人エムエスオフィス 代表税理士
平成7年税理士登録・開業。平成27年より税理士法人へ合流。現在に至る。会社税務から個人の確定申告、相続税に至るまで活動範囲は広い。固くない、いつでも話せる税理士としてクライアントからの信頼は厚い。

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