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会社の相続を行ったらすべき相続手続きと期限について

独立ノウハウ・お役立ち

あまり考えたくはないけれど、どうしても避けられないもの。

相続は人が死亡すると開始しますが(民法882条)、相続が開始してからの手続きには、期限があるものとないものがあります。

期限があるものについては、相続が開始してから慌てることがないようにあらかじめ知識をもっておくことが大切です。

故人が会社の経営者であり、会社の株式の多くをもっていた場合などには、相続の内容によって会社の行く末が左右されることもあります。

このような意味でも、相続の手続きについてあらかじめ基本的な知識をもっておくことは重要です。

遺産相続は無期限ではない!

1.家庭裁判所の手続き ~相続放棄・限定承認~

民法では、相続を放棄する場合の家庭裁判所の手続きについて期限を設けています。

つまり、相続を放棄する場合はその旨を家庭裁判所に申述しなければならず(民法938条)さらに、自己のために相続の開始があったことを知ったときから“3カ月以内”に手続きを行わなければなりません(民法915条)。

相続の放棄をすると、初めから相続人とならなかったものとみなされるため(民法939条)、故人の負債を相続することを回避することができます。

しかし、先の期限を過ぎてしまうと相続放棄の効果が得られず、故人の負債を背負うことになってしまいます。

非常に重要な期間制限のため、“3カ月以内”は、ぜひ覚えておきましょう。

また、故人の負債の状況が分からない場合などに、相続によって得た財産の限度のみで債務等の弁済責任を負う「限定承認」を行う場合にも、“3カ月以内”に家庭裁判所に申述する必要があります(民法915条)。

2.税務申告手続き ~相続税の申告・準確定申告~

相続税の申告は、相続の開始があったことを知った日の翌日から“10カ月以内”です(相続税法27条)。

故人に基礎控除の額(平成27年1月1日以降の相続の場合は3,000万円+600万円×法定相続人数)を超える遺産がある場合などには、申告の要否を確認します。

そして申告が必要な場合には、上記“10カ月以内”に相続税の申告をしなければなりません。

無申告加算税などのペナルティが発生しないように、この“10カ月”も覚えておきましょう。

なお、この相続税の申告期限内に遺産分割協議が整わない場合には、法定相続分などに基づき税額を計算して申告することができます。

また、故人の所得につき確定申告が必要だった場合、相続人は相続の開始があったことを知った日の翌日から“4カ月”を経過した日の前日までに確定申告をしなければなりません(所得税法124条・125条、準確定申告)。

3.役員変更登記

会社において登記事項に変更が生じたときは、“2週間以内”に変更の登記をしなければなりません(会社法915条)。

例えば、株式会社の代表取締役の氏名・住所や取締役の氏名は、登記事項となっている場合がほとんどのため(会社法911条第3項13号・14号)、これらの者が死亡により退任した場合は、変更の登記をしなければなりません。

また、これは会社が行わなければならないことですが、代表者には過料の制裁もあるため(会社法976条1号)注意が必要です。

4.短期消滅時効 ~遺留分侵害額請求権~

“期限”とは異なりますが、遺留分侵害額請求権には“1年間”という短期の時効期間があります。

遺留分侵害額請求権というのは、故人の贈与や遺言による指定によって最低限度の取り分(遺留分)を取得できなかった相続人(故人の兄弟姉妹を除く)が、贈与や遺産を多く受けた者に対し、金銭の支払いを請求できる権利です(民法1046条)。

この遺留分侵害額請求権は、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知ったときから一年間行使しない場合、時効によって消滅してしまうので注意しましょう(民法1048条)。

期限の定められていない遺産相続の手続き

以上、比較的短期の期限(時効期間)が定められている遺産相続の手続きについて説明してきました。

一方で、遺産を相続人の間でどのように分配するかという“遺産分割の手続き”については期限がありません。

遺産分割は通常、以下の通り手続きが進みます。

・相続人間の協議
・協議が整わない場合には裁判所の家事調停
・家事調停でも協議が整わない場合には家事審判

これらの手続きに法的な期限はありません。

したがって、遺産分割に基づく不動産の名義変更(登記)についても期限はないのです。

もっとも、期限がないからといって、そのまま放置しておいていいわけではありません。

相続人が死亡し相続が開始すると、相続人たる地位も相続され、相続人の数が増えていきます。

例えば、曽祖父名義の不動産がそのままになっていて、いざその不動産を処分しようとしても、祖父・父らは死亡、相続人が曽孫の代で十数人にのぼっていて、相続人を探すだけで大きな手間がかかる、といったことも珍しくありません。

また、遺産分割が完了しないと利害関係のある人にも影響を及ぼします。

例えば、遺産に株式が含まれる場合、遺産分割が未了の間は、株式は相続人による準共有状態と考えられます。

しかし、相続人側で議決権を行使する者“1人”を定めて会社に通知しないと、相続人は議決権を行使できないのです(会社法106条)。
故人が経営する会社の多数の株式を保有していた場合、相続人の間で株式の遺産分割が決まらないと、その間に株主総会の議決に必要な定足数が足らず、会社の意思決定が止まってしまうこともあるでしょう。

まとめ

身近な人の死はあまり考えたくないものですが、相続が開始するとさまざまな手続きと、それに伴う判断が必要になります。

多くの財産を保有している方や会社を経営し多数の株式を保有している方などは、自分の死後、残された相続人が困ることのないようあらかじめ遺言を作成しておく、会社の株式について種類株式を発行するなど、遺産承継の対策を検討しておくべきでしょう。

相続はどうしても避けられないものなので、誰もが準備しなければなりません。

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佐藤充裕

弁護士
豊富な実績と専門的知識で、個人のお客様には、離婚・親権、遺言・相続などのご家庭内やご親族との間の紛争解決を中心にサービスを提供しております。法人のお客様には、債権回収・労務問題のほか、事業再生を中心にサービスを提供しております。他士業(税理士・社会保険労務士・不動産鑑定士など)とのネットワークがあり、各専門的知識を活かした問題解決に取り組んでいます。

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