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経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第65回・ラグビーはなぜオリンピックの正式種目にならないのか

経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第65回・ラグビーはなぜオリンピックの正式種目にならないのか

起業家、経営者にとって大事なのは、世の中を見抜く力です。1つの事象をどう捉えるかで、ものの見え方も、そこから得られる情報も大きく変わります。そうした「着眼点」、実はトレーニングによって鍛えることができるのです。累計20万部を超えるベストセラーとなった『戦略思考トレーニング』シリーズでおなじみの経営コンサルタント・鈴木貴博氏に解説してもらいましょう。

いきなりですが、クイズです!

日本開催のW杯が大盛り上がりを見せたラグビーについての問題です。なぜラグビーは、オリンピックの正式種目になっていないのでしょうか?

クイズの答えの中に、着眼点を鍛えるポイントがある

ラグビーのW杯、すごく盛り上がりましたよね。一番の理由は、日本選手たちの奮闘ぶりでしょう。予選全勝からの初のベスト8進出、そこで負けた相手が優勝国の南アフリカですから、ある意味では仕方がなかったのかもしれません。

前回大会の時は思ったほど続かなかったラグビー人気ですが、「にわか」と呼ばれるファンが増え、今回こそ根付くかもしれません。もちろん私も「にわか」の一人ですが、これからも日本のラグビーを応援していきたいと心から思いました。

それでは解説します!

さて、そのラグビーですが、もしかしたらご存知ないかもしれませんが、来年行われる東京オリンピックの正式種目には入っていません。

正確にいうと、ルールが若干違う「7人制ラグビー」は正式種目です。今回のような15人制のラグビーは長いオリンピックの歴史の中で過去4回やっていますが、それも100年近く前の時代の話です。前回のリオデジャネイロ五輪から7人制ラグビーとして久々に復活し、今回に至ります。

なぜ、15人制のラグビーが正式種目ではないのか。その謎を解く鍵は、「昔のオリンピックは開催期間が数カ月間と非常に長かった」ということと関係があります。

見ての通り、ラグビーは消耗が激しいスポーツで、体力を回復させるためにある程度の時間が必要です。3日おきに試合ができるようなスポーツではありません。今回のW杯も期間が約1カ月半と、他の種目のW杯に比べると長いものだったのはそういうわけで、つまり17日間というオリンピックの開催期間中に全日程を終了させることができないのです。

オリンピックという枠の規格に合わないため、ラグビーは「オリンピックには向かないスポーツ」だというわけですね。

だけどラグビーW杯は「世界3大スポーツの祭典」の1つである!

ただ、オリンピック規格に合わなかったことが、ラグビーというスポーツを特別なものにしているという考え方もあります。

「オリンピック」「サッカーW杯」と並び、ラグビーW杯が「世界3大スポーツの祭典」といわれるのはそのためです。日本で人気の世界陸上や野球のWBCだってそこには入れてもらえていないのです。

つまり、特別な事情によって「枠をはみ出てしまった」ことで、ブランド価値が高まったというのが、ラグビーというスポーツの面白いところの1つなのです。

今回のポイントは、「枠をはみ出ることで、ブランド価値が上がることがある」ということです。一見、ネガティブ要素に感じられることも、それによって個性が際立ったり、逆に注目を集めることがあるんだというわけですね。

例えば、「Japanese Soba Noodles 蔦」という人気のラーメン店があります。「ミシュランガイド東京2016」で、日本のラーメン屋さんで初めてミシュランの1つ星をもらったお店です。

ラーメンは海外でも人気のある食べ物ですから、どういうお店が星をもらうのかは多くの人が注目していました。ただ、日本人が好きなのは豚骨などの癖のあるもので、フランス人には選びにくい素材に間違いありません。しかし、「蔦」のラーメンは醤油ベースではあるもののコンソメスープに近く、イベリコ豚とトリュフソースを使った洋風に近い味。いかにもフランス人が好きそうなラーメンでした。

しかし、ミシュランで星を獲得したことで行列ができすぎてしまいました。近隣からの苦情やお店のキャパオーバーなどの理由から、本店以外は閉店を余儀なくされてしまったのです。

ただ、閉店という災いのおかげで、「蔦」はなおさらブランドが高まりました。現在でもカップ麺とコラボしてロングセラー商品を出していたり、いろんなお店とコラボして「蔦」のラーメンを再現しています。

まだまだある、枠に入りきらない人気者

ラーメン以外にも、車だと「ビートル」なんかは、どこにも属さない(どの枠にも入れない)ことで根強いファンがついた例でしょう。また都電も、道路を走る電車が廃れる中で、1つだけ残ってしまったためにノスタルジックで愛される乗り物になりました。

また、漫画『AKIRA』も、作者の強いこだわりから大判サイズのコミックしか発売されておらず、それによって唯一無二の存在感をアピールしています。普通なら本棚に入れにくいと嫌がられそうなものですが、そうではありません。

ラグビーがそうであるように、「規格に合わない」ことが強みになるケースはよくあるのです。自分のビジネスの特徴について考える際に、参考にしてみてくださいね。

最後に、もうお分かりだと思いますが、冒頭のクイズの答えは「17日間では全日程を終了できないから」でした。ちなみに、東京オリンピックの7人制ラグビーには、リーチマイケル選手が出場するかもしれないといわれています。それをきっかけに注目が集まり、7人制ラグビーの魅力がたくさんの人に知られれば、ラグビー人気はすごいことになりそうですね。


PROFILE
プロフィール写真

経営戦略コンサルタント
百年コンサルティング株式会社
代表取締役
鈴木貴博

東京大学工学部卒業後、ボストン・コンサルティング・グループに入社し、数々の大企業の戦略立案プロジェクトに従事。1999年にはネットイヤーグループの創業に取締役として参加。2003年に独立し、百年コンサルティングを創業する。大手企業の経営コンサルティング経験を元に2013年に出版した『戦略思考トレーニングシリーズ』(日本経済新聞出版社)が累計20万部を超えるベストセラーに。現在はビジネスをエンタメクイズ化する経済エンタテナーとしても活動中。『パネルクイズ アタック25』(優勝)、『カルトQ』などのクイズ番組出演経験も豊富。近著に『戦略思考トレーニング 最強経済クイズ[精選版]』(日本経済新聞出版社)、『「AI失業」前夜―これから5年、職場で起きること』(PHPビジネス新書)、『令和を君はどう生きるか』(悟空出版)。

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