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経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第64回・消えてなくなってほしい

経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第64回・消えてなくなってほしい

起業家、経営者にとって大事なのは、世の中を見抜く力です。1つの事象をどう捉えるかで、ものの見え方も、そこから得られる情報も大きく変わります。そうした「着眼点」、実はトレーニングによって鍛えることができるのです。累計20万部を超えるベストセラーとなった『戦略思考トレーニング』シリーズでおなじみの経営コンサルタント・鈴木貴博氏に解説してもらいましょう。

いきなりですが、クイズです!

運送会社の社長さんたちの話を聞くと、ある悩み事のせいで、歯を食いしばって経営しているという方が多いです。しかし、一方で「あと5年も待てば、その悩み事もなくなる」と大きな期待を寄せながら5年後を楽しみにしているといいます。さて、悩み事をなくす「あるもの」とは何でしょうか?

クイズの答えの中に、着眼点を鍛えるポイントがある

経営コンサルタントとして、全国を回って中小企業の経営者向けに講演をする機会があります。色々な業界の方と話をすることがあるのですが、中でも印象的なのが運送会社の社長さんたちです。

聞けば、仕事をする上で2つの大きな苦労があり、とても頭を悩ませているのだといいます。

1つが「圧倒的な人手不足」です。とにかく人が採用できず、思うように仕事を回せないことも多く苦労しているそうです。

もう1つが「労務対策」です。働き方改革の影響もあり、行政だけでなく元請け会社からも「過重労働に気をつけるように」と細かく注意があるそうです。そのため、勤務表やタイムカードなどの証拠をきちんと残すなど、やらなければならないことが増え、とにかく苦労が多いのだと皆さん口を揃えます。

それでは解説します!

そのように大変な思いをしている運送会社の経営者の方々ですが、私の講演の後に話をすると、その表情は思ったよりも明るい場合が多いです。

どうやら、講演の中で触れる「とある話」に対して大きな反響があり、ついには「鈴木さんの話を聞いたら、5年後が非常に楽しみになった」とまで言っていただくことがあります。

その話とは、「自動運転のトラックがあと5年くらいで発売される」というものです。

自動運転が普及するのにそう時間はかからないでしょう。当然、その影響は運送業界にも波及するはずです。自動運転技術を搭載したトラックの開発も着々と進んでおり、5年以内には広く販売されるようになるだろうといわれます。

自動運転のトラックが発売されると、彼らからしたら、コスト構造が大きく変わります。どのくらい変わるかというと、長距離配送にかかるコストが、1台あたり約5分の1程度ですむようになるのだそうです。

どういうことかというと、運送会社のコスト構造はトラックの費用が2割ほどで、残りの8割は人件費なのです。自動運転が当たり前になれば、人が荷物を積み込んで行き先の指定さえしてしまえば、その後は人手をかけずに車が荷物を運んでくれます。

つまり、事業の肝となる一番面倒な部分で人件費がほぼかからなくなります。

未来が明るくなるような「うまい話」は、実はある

自動運転により人件費がかからなくなれば、さらにいいことがあります。それは、2つ目の問題だった「労務問題」もきれいに消えてなくなるということです。人が介在せずに済むわけですから、それに伴う事務処理の一切も発生しなくなるわけですね。

つまり、運送会社の社長さんたちが頭を抱えている問題が、自動運転の実現により消えてなくなってしまうわけです。

もちろん、コストだけのインパクトは相殺される可能性が高いでしょう。つまり、自分たちのコストは5分の1になるわけですが、自動運転が当たり前になることで「人件費がいらなくなるんだったら、もっと安く運んでほしい」という話になり、受注額そのものが安くなるのは想像に難くありません。残念ながら、「儲かって仕方がない」という状況にはならなさそうです。

しかし、人材確保と労務管理をしっかりやらなくてはいけないという、これまでの二重苦からは解放されるわけです。そのストレスがなくなることを考えれば、未来は非常に明るいというわけですね。

どの仕事でも、経営する上で頭を抱えずにはいられない苦労や、辛くて嫌で仕方がないことは当然あるでしょう。しかし、それがサーっと消えてしまうような「うまい話」はあるんだというのが、今回のポイントです。そして、それはイノベーションによって起こるのです。

イノベーションは色々なところに波及し、人々の生活を変える

自動運転のトラックは、最初のうちはそこそこの値段がするかもしれません。しかし、大事なのは「お金」の問題ではなく、苦労や大変で仕方がないことをどう回避するかであり、それがイノベーションによって十分に可能だということです。

皆さんの周りでもどんなことが考えられそうか、ぜひ考えてみてくださいね。

最後に、もうお分かりだと思いますが、冒頭のクイズの答えは「自動運転のトラック」でした。ちなみに、自動運転車に人間の同乗が義務付けられたとしても、業界では大した問題ではないとみているそうです。つまり「横に乗っているだけでいいなら、そんな人はすぐに採用できる」ということなんだとか。AIによって生まれる仕事の1つ、なんていっては大げさでしょうか。


PROFILE
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経営戦略コンサルタント
百年コンサルティング株式会社
代表取締役
鈴木貴博

東京大学工学部卒業後、ボストン・コンサルティング・グループに入社し、数々の大企業の戦略立案プロジェクトに従事。1999年にはネットイヤーグループの創業に取締役として参加。2003年に独立し、百年コンサルティングを創業する。大手企業の経営コンサルティング経験を元に2013年に出版した『戦略思考トレーニングシリーズ』(日本経済新聞出版社)が累計20万部を超えるベストセラーに。現在はビジネスをエンタメクイズ化する経済エンタテナーとしても活動中。『パネルクイズ アタック25』(優勝)、『カルトQ』などのクイズ番組出演経験も豊富。近著に『戦略思考トレーニング 最強経済クイズ[精選版]』(日本経済新聞出版社)、『「AI失業」前夜―これから5年、職場で起きること』(PHPビジネス新書)、『令和を君はどう生きるか』(悟空出版)。

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PROFILE

蟹江幸子さん(57歳)

手作り工房MY mama/名古屋市南区
専業主婦だった約30年前、長女の誕生を機に手芸を始める。やがてネットオークションで売り始め、2008年には楽天市場に出店、今では従業員を30名抱える。ボタンなど約1万点の手芸材料を扱う。18年には「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー」を受賞。
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