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会社分割と事業譲渡の仕組みを比較! 事前に把握するべきメリットやデメリットとは

会社分割と事業譲渡の仕組みを比較! 事前に把握するべきメリットやデメリットとは

長い期間会社を経営していると、景気の変動や技術の変化などで事業の今後を見直す必要があります。自力で再建などができればよいのですが、場合によっては一部事業の切り離しを行うことを考えなければならないことも。また、拡大した事業の中で、事業内容が部門間で重複したり、関連が薄くなったりする場合もあります。

ここでは、事業の切り離しや整理の代表的な方法として“会社分割”と“事業譲渡”について比較・検討していきます。そして、それぞれのメリット・デメリットを例示しながら、会社分割と事業譲渡をどのように使い分けたらよいか解説します。

会社分割と事業譲渡とは?

会社分割とは、その名のとおり会社の事業を分割して、新たな会社や別の会社に承継させることを指します。
一方で、事業譲渡とは、事業に関する資産や負債を別の法人に譲渡することです。いずれの方法も会社の事業を他社に移転することなので同じように見えますが、異なる点がいくつかあります。以下でその違いを見てみましょう。

会社分割と事業譲渡の違う点

会社分割と事業譲渡では、主に以下の点で違いがあります。

①契約関係の移転
会社分割においては、契約関係における権利義務(債権、債務など)を一括して移転する“包括承継”が行われます。
一方、事業譲渡においては、契約関係は個別に移転する必要があり、債権であれば“債権譲渡の手続き”が、債務であれば“債権者の承諾”が必要です。

②雇用関係の移転
雇用関係においても、会社分割では包括承継となるため、労働者の個別の同意は必要ありません。ただし、労働承継法に規定された一定の手続きを踏む必要があります。
事業譲渡においては、雇用関係の移転を行う場合、個別に従業員の同意を得なくてはなりません。

③許認可の移転
許認可が必要な事業については、事業譲渡の場合、新たに許認可を申請しなければなりません。会社分割の場合は“届け出で承継できるもの””個別の許可を得て承継できるもの“”承継できないもの“に分かれるので、保有する許認可がどれに当たるかをよく調べる必要があります。

④課税について
会社分割においては、一定の要件を満たせば税制適格となり、譲渡益の繰り延べを行うことができます。税制非適格となった場合は、簿価と時価の差が、譲渡損益として認識されます。
また、消費税が課されないほか、資産の移転に伴う登録免許税や不動産取得税などの軽減措置があります。
一方、事業の移転に伴い、事業譲渡においては、簿価と時価の差が譲渡損益として認識され、差益は繰り延べをすることはできません。
課税資産に対して消費税が課されるほか、登録免許税や不動産取得税などの軽減措置もありません。

会社分割のメリット・デメリット

会社分割のメリット
・包括承継のため、契約関係の移転手続きが簡便に行える
・転籍させる従業員から、個別に承諾を得る必要がない
・許認可の一部は、届け出で承継可能
・新株の発行を選択すれば、買い手企業は資金負担なしでもできる
・譲渡益の繰り延べや各種税負担の軽減が受けられる

会社分割のデメリット
・包括承継により、簿外債務を引き継ぐ可能性がある
・税務の手続きが煩雑である
・買い手企業から新株を受け取るとキャッシュ(現金)が入らない

事業譲渡のメリット・デメリット

事業譲渡のメリット
・個別の資産などを選択して引き継ぐため、簿外債務を引き継ぐ恐れがない
・税務の手続きが比較的簡単である
・譲渡する資産が総資産の5分の1未満であれば、株主総会の決議は不要
・キャッシュ(現金)を手にすることができる

事業譲渡のデメリット
・契約関係の移転の手続きが個別となり煩雑になる
・転籍する従業員から個別の承諾が必要
・許認可はすべて取り直しとなる

会社分割と事業譲渡、どちらを選べばよいか?

これまで見てきたように、会社分割と事業譲渡ではそれぞれにメリット・デメリットがあります。ではどちらを選んだほうが、良いのでしょうか?

会社分割のほうが良いケース
会社分割においては、必ずしも売り手と買い手がいるわけではありません。債務の多い会社が、利益部門を別会社に移して建て直しを図るケースやグループ内の重複事業の集約化を図るケースなど、自社もしくは自社グループ内での再編などでの利用が考えられます。また資金負担を少なく事業を手に入れたい場合、会社分割を選べば、買い手は新株の発行により、資金負担なしで事業を取得できます。

事業譲渡が良いケース
事業譲渡は売買の形を取るので、キャッシュの受け渡しが発生します。売り手側にとっては、新しい資金で既存の債務を減らしたり、新規事業に振りわけたりできるので、経営の自由度をあげたいときに選ぶと良いでしょう。また買い手としても簿外債務などの恐れがあるときは、引き継ぐ財産を限定できる事業譲渡を選んだほうが良いと言えます。

まとめ

会社分割と事業譲渡につき、理解していただけましたでしょうか? 会社分割と事業譲渡は、それぞれの会社の状況によりどちらを選択したらよいか異なってきます。メリット・デメリットをよく理解して、より良い選択を行うようにしてください。

PROFILE

ファイナンシャルプランナー・行政書士 青野 泰弘

1964年静岡県生まれ。同志社大学法学部卒業後、国際証券に入社。その後トヨタファイナンシャルサービス証券、コスモ証券などで債券の引き受けやデリバティブ商品の組成などに従事した。2012年にFPおよび行政書士として独立。相続、遺言や海外投資などの分野に強みを持つ。

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