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経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第36回・海外で親しまれる日本食

経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第36回・海外で親しまれる日本食

起業家、経営者にとって大事なのは、世の中を見抜く力です。1つの事象をどう捉えるかで、ものの見え方も、そこから得られる情報も大きく変わります。そうした「着眼点」、実はトレーニングによって鍛えることができるのです。累計20万部を超えるベストセラーとなった『戦略思考トレーニング』シリーズでおなじみの経営コンサルタント・鈴木貴博氏に解説してもらいましょう。

いきなりですが、クイズです!

アメリカのコンビニやスーパーに行くと、いろいろな飲み物と一緒に日本茶(緑茶)も並べられて売られています。しかし、現地メーカーが出すそれらの日本茶、実は日本で一般的に飲まれているものとは全く違う特徴があります。さて、一体どのような違いがあるのでしょうか?

日本で緑茶を飲む時に、このようにして飲む人はほとんどみかけません。一方、海外のお茶が日本でもたくさん売られていますが、それらがどんなふうに売られているのかを考えてみるのが、ヒントになるかもしれません。

クイズの答えの中に、着眼点を鍛えるポイントがある

海外に行くと、日本の商品が売られているのを目にすることが多くなっています。日本で海外のものが手に入りやすくなっているように、日本の商品は世界中で親しまれ、存在感を増しているのです。

特に日本の食品は「ヘルシー」というイメージもあるようで、ウケがいい。そんな側面も後押ししているのでしょう。

ただ、時に日本人が見て「何だこれは?」と思ってしまうようなものに遭遇することもあります。にもかかわらず、そうした商品が現地で人気だったりするから、面白いですよね。

それでは解説します!

日本でもいろいろなメーカーからたくさんの商品が売られている日本茶(緑茶)。海外でもそれなりの数の商品が売られていますが、実は日本でよく飲まれるそれとは大きな違いがあります。

私は最初、「アメリカでも日本茶が気軽に飲めるなんて」などと思いながら購入し、知らずに飲んでビックリした経験があります。なんと、砂糖が入っているのです。

日本では、日本茶に砂糖を入れて飲む人はほとんどいないでしょう。しかし、アメリカではそれが当たり前になっているようなのです。どうやら、日本で売られているアイスティー(紅茶)に普通に砂糖が入っているのと同じ感覚で、「アイスグリーンティーにも砂糖を入れる」ということだとか。日本人からしたら「何だこれは」という感じですが、現地ではそういうものだと受け入れられているんですね。

少し前に、人気モデルのミランダ・カーがインスタグラムで紹介し、日本人にも知れ渡った「KOMBUCHA」という飲み物をご存じでしょうか。中身は昆布茶ではなく、実は紅茶キノコ。昭和の頃に日本でもブームになったアレです。

これも、そもそもネーミングからして「何だこれは」というものなのですが、どうやら美容や健康にいいということで、人気なんだとか。アメリカでは各社から「KOMBUCHA」というシリーズでいろいろなフレーバーが出されています。「KOMBUCHA」という名前のパイナップルピーチフレーバーの紅茶キノコ・・・日本人の感覚からしたら、よくわからないですよね。それでも、現地ではとても多くの人に親しまれているんだそうです。

「こうあるべきだ」と思わない方が、実は多くの人に受け入れてもらいやすい

日本茶や「KOMBUCHA」の話から学べることは、「日本に普通にあるものが、海外にいったときに違うカタチで売れたりする」ということではないでしょうか。誰も、緑茶に砂糖を入れたり、昆布茶なんて名前をつけたら売れるとは思わないですよね。だから、「日本の商品はこうあるべき」とは思わなくてもいいということです。

それは、日本のおいしいものを海外に広めたいと思った場合、そのまま持っていっても、必ずしも「おいしい」と思われない可能性があるということでもあります。現地の人がそれに砂糖を入れた方がいいと思ったら入れたらいいし、ピーチフレーバーが合うと思ったらそうした方がいい。そうやって海外で新しい日本の商品が育つ、ということかもしれません。そして、その際には日本人が想像し得ない方向で展開することが大いにあるわけです。

もう1つポイントがあるとしたら、「美容」や「健康」というキーワードです。日本茶や昆布茶といったものは欧米人からしたらエキゾチックなものですが、それを「美容にいい」「肌がつやつやになる」とアピールすることで、日本では本来どう親しまれているものかは別として、結果的に多くの人に興味を持ってもらいやすいというわけですね。

海外で親しまれる日本食の代表である「寿司」も、ヘルシーさが受けて世界中の人たちに食べられるようになりましたよね。そして、逆輸入されるかたちで「カリフォルニアロール」がやってきた。日本人の発想では、あのようなものは生まれにくかったわけです。

ちなみに、今では日本で当たり前のように飲まれるウーロン茶も、日本で普及し始めたばかりの昭和50年代には、苦くて日本人の口にはなかなか合わなかったようです。しかし、当時大人気だったピンクレディー(1970年代後半に活躍したアイドル歌手)がテレビCMで「ウーロン茶を飲むとやせる」とアピールしたことで、人気になったというエピソードがあります。ピンクレディーの力はあるでしょうが、「美容」「健康」というアプローチがいかに強力だったかがよくわかりますよね。

日本人が想像し得ない方向で物事が展開することもある

日本の食卓に当たり前のように並ぶ「こんにゃく」も、海外ではヘルシーメニューに欠かせない食材として人気ですよね。パスタなど麺類のかわりになるカロリーゼロの食べ物として、「こんなに食べてもカロリーゼロなのか!」と受け入れられているわけです。

海外ではもともとこんにゃくは知られていないため、最初から「カロリーゼロパスタ」として普及が始まったわけです。その成功を受けて、最近日本にも逆輸入されるかたちでダイエットパスタとしてのこんにゃくがスーパーの棚に並び始めました。そういう意味でも、ところ変われば・・・ではないですが、国が変わればいろいろな可能性が広がるわけですね。

最後に、もうお分かりだと思いますが、冒頭のクイズの答えは「砂糖が入っている」でした。ちなみに、最後に触れた「こんにゃく」、英語では何と言うのかご存じでしょうか?正解は「konjac」。コンニャク、ですね。


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プロフィール写真

経営戦略コンサルタント
百年コンサルティング株式会社
代表取締役
鈴木貴博

東京大学工学部卒業後、ボストン・コンサルティング・グループに入社し、数々の大企業の戦略立案プロジェクトに従事。1999年にはネットイヤーグループの創業に取締役として参加。2003年に独立し、百年コンサルティングを創業する。大手企業の経営コンサルティング経験を元に2013年に出版した『戦略思考トレーニングシリーズ』(日本経済新聞出版社)が累計20万部を超えるベストセラーに。現在はビジネスをエンタメクイズ化する経済エンタテナーとしても活動中。『パネルクイズアタック25』(優勝)、『カルトQ』などのクイズ番組出演経験も豊富。近著に『「AI失業」前夜―これから5年、職場で起きること』(PHPビジネス新書)。

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