起業家、経営者にとって大事なのは、世の中を見抜く力です。1つの事象をどう捉えるかで、ものの見え方も、そこから得られる情報も大きく変わります。そうした「着眼点」、実はトレーニングによって鍛えることができるのです。累計20万部を超えるベストセラーとなった『戦略思考トレーニング』シリーズでおなじみの経営コンサルタント・鈴木貴博氏に解説してもらいましょう。
経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第34回・「10分1000円ビジネス」の可能性
いきなりですが、クイズです!
今回は私自身の体験からの出題です。これからの季節に必要なものということで「暑さをしのぐもの」であるわけですが、「よく見かけるものなのに選択肢が少ない」というところから、いろいろと想像してみてください。
クイズの答えの中に、着眼点を鍛えるポイントがある
夏の暑さは毎年のこと。「今年は例年にない暑さが目立つ」「かつてない猛暑」などと毎年言われているような気がしますが、やはり今年はちょっと異常かもしれません。毎日毎日、本当に暑い日が続きます。
2020年の東京オリンピックがこの夏の時期に開催されるということで、様々なことが懸念されていますよね。たしかにこの暑さが来年から急にやわらぐとも思えませんし、年々暑くなっていくと考えていいのかもしれません。
とすれば、押さえておいて損はなさそうなのが、「暑さを先取りするビジネス」です。
それでは解説します!
さて、皆さんも暑さ対策はいろいろとされているかと思います。私事ではありますが、実は今年、初めて「日傘」を買ったのです。これまでと違う方法でこの暑さをしのごうと思ったときに、「日傘をさしてこなかったなあ」と思ったからです。
日傘を買おうと探すこと自体が初めてだったわけですが、驚いたのは、あまりにも商品の選択肢がないことです。ものはあるのですが、そのほとんどがフリルやレースが付いているような、主に女性が使いそうなものばかり。男性が持つにはちょっとなあ…という商品がほとんどなのです。「粋な感じを求めて和柄を」などと思って探したのですが、ネット上で商品の画像を見ていても、選べるほど数がありません。
ここで思ったのは、日傘に「男性向け」というジャンルがあるのだろうかということです。日傘は一般的に使われるもので、たくさんの方が持っています。しかし、これだけ商品が見当たらないということは、おそらく男性向けというジャンルは成立していないのでしょう。
そもそも男性は日傘をさす習慣がないのかもしれません。習慣がないから商品がないのか、そもそも商品がないから市場もなく、習慣として根付いていないのか、どちらなのかははっきりわかりません。
ただ、1つ言えるのは、日傘をさす習慣ができて、商品もたくさんあったら、そこに大きな市場ができる可能性を秘めているということです。暑い夏を先取りする、狙い目のビジネスの1つなのかもしれません。
暑い夏に欠かせないビジネスを生み出せれば、毎年商機がやってくる!
夏を先取りするビジネスとして可能性を秘めているのが、ウェットティッシュです。「GATSBY」などのブランドで売られている、アルコールが十分に入っている厚手のウェットティッシュは、汗ばんだ肌を拭くとアルコールの効果でスッキリします。現状では「デオドラント」(体の臭いを防いだり取り除いたりする薬剤)のジャンルで売られているようですが、実は暑い夏にはもってこいの商品かもしれません。
事実、このウェットティッシュは外回りの営業の人たちの間では当たり前のように使われていて、まさに夏には常に持ち歩く一品なわけです。しかし、「暑さ対策の必需品」という定着の仕方はされていませんよね。だからこそ、そこにチャンスがありそうです。暑い夏を見越した売り方をすれば、間違いなく売れそうですよね。
もう1つ実例を挙げると、私はこれを「隠れた発明」だと思っているのですが、衣料品メーカーのGUが販売しているスーツの上下が非常に面白いのです。普通のダークスーツに見えるのですが、着てみると非常に涼しい。それは素材にヒントがあります。実はジャージ素材でできているのです。
言ってみればジャージと同じわけですから、本来は動きやすさを重視したものだと思われますが、暑さ対策にピッタリに思えるのです。膝を曲げたりすると伸びた部分がテカテカになり、「いかにもなジャージ」な感じになってしまうのは仕方がありませんが、ぱっと見はわかりません。私も講演などに呼ばれて、この暑いさなかにスーツを着用しないといけないシーンはよくあるのですが、そういう時に非常に重宝しています。
おそらく、そんなに爆発的に売れている商品ではないのかもしれません。特に話題になっている気配がないからです。しかし、上下でそろえても6000円程度という価格で、夏の暑さにも対応してくれるわけですから、売り方次第で火がつく可能性はありそうです。
暑い夏にピッタリな新しいビジネスが、身の回りに隠れているかも!?
既存の商品であっても、見方をちょっと変えてみれば、市場がもっと大きくなりそうなものが実際にあるということがお分かりいただけたのではないでしょうか。
「暑い夏」をただ過ごすのも、四季を大切にする日本人らしくていいですが、せっかくならビジネスにも役立てたいですよね。
身の回りのものをいろんな視点で眺めてみると、そこには新しいビジネスチャンスにつながるような、思わぬ発見があるかもしれません。起業家ならぜひやっておきたいことの1つですので、ぜひ挑戦してみてくださいね。
最後に、もうお分かりだと思いますが、冒頭のクイズの答えは「日傘」でした。ちなみに、購入した日傘は愛用しており、おかげで暑さをしのげています。よく見るとビニール傘と同じ材質でできているようですから、急なゲリラ豪雨があっても安心です(笑)
経営戦略コンサルタント
百年コンサルティング株式会社
代表取締役
鈴木貴博