「どうしたら商売繁盛するのか」
多くの独立・起業予定の方が悩むところはやはりココ。繁盛するビジネスを漠然と考えても、なかなかいい具体的な案やイメージは思いつきません。そんな都合のいい必殺技なんてないか… と、起業に踏み込めない人は多いのではないでしょうか。
しかし、実は商売繁盛のコツは意外と簡単に見つかります。答えは業態での業績を因数分解し、かけ算と足し算で分けて考えること。あとは、その式の中で一番大切な部分を攻略するだけで、商売繁盛のヒントをつかむことができるのです。
本シリーズでは、そうした商売繁盛の秘訣を業種別に解説。4回目は、自分が好きな商品に囲まれて始められる、起業で人気の業種「雑貨店」。『アントレnet Magazine』編集部が総力を挙げて解説する雑貨店の攻略法をさっそくご覧ください!
売上と経費の要素のうち、「ギフト用」「自分用」の2つに客単価を分けてみる!
雑貨店の独立・起業では、以下のかけ算が基本。
売上 = 客単価 × 客数
この客単価と客数のそれぞれを伸ばせば売上は必然的に上がっていきます。では、具体的にどうすればよいのか。このかけ算を因数分解して、解き明かしていきましょう。
雑貨店での客単価の伸ばし方
雑貨店での客単価は「自分用に買う商品」と「ギフト用で買う商品」の2つに分けて考えます。すると、客単価の伸ばし方がとらえやすくなるからです。
まずは、前者の「自分用に買う商品」での客単価の伸ばし方を考えます。
売上が伸びない雑貨店でよく起こりがちなのが、店主が好きな商品だけを並べて、同じ趣味の人に買ってもらうという「マニアがマニアに売る」という形になっている状態。これでは、客単価を伸ばすのはとても難しいです。お客さんが自分用に買う商品といえどもあなたが好きな商品を並べるだけではいけません。
この「自分用に買う商品」で客単価を上げていくには“生活総取り”がポイントになってきます。“生活総取り”とは、文字通り「生活」の全てをお店の商品でまかなえるようにする方法。衣食住に関連する商品をお店に揃えるのです。
こうしたお店は、ライフスタイルショップといわれます。衣食住を1つの世界観でまとめて、生活に必要なものを充実させることで単品の購入ではなくなり、1人のお客さまが複数の商品を買ってくれるようになります。その結果、客単価をアップすることが可能になるのです!
次に、「ギフト用に買う商品」での客単価の伸ばし方です。これは、2つのアプローチで実現します。
1つ目は、ギフト向きの商品を増やす。ギフトのニーズに応えるような商品を用意します。具体的には以下の条件に合う商品をラインナップに加えていきます。
●「無難な商品ではなくサプライズ性がある商品」
●「でも、飛びすぎていなくて、失礼にはならない商品」
この2つが条件です。例えば、部屋に置くだけで部屋の雰囲気がオシャレになる空気清浄機。野菜の形をしたペンなどです。2つの条件に合う商品は、多くの友人に同時にプレゼントしたくなる商品。これらをギフト用商品として増やしておくことで、客単価が上がっていくのです。
「ギフト用に買う商品」での客単価を伸ばす2つ目のアプローチは、ギフトラッピングを無料で行うこと。お客さまにとってのギフトを贈る面倒さを取り除くのです。そうして、ギフトを贈ろうというニーズの掘り起こしができます。
売上のかけ算のうち2番目の「客数」について見てみましょう。客数はずばり次の方法で伸ばしていきましょう。
それは、ギフトラッピングの際にお店の情報を印刷したPRカードを添えること。
お店のPRカードと一緒にラッピングをするのです。これは、お店をチラシで宣伝するよりも有効。プレゼントをもらった人がギフトを気に入る→PRカードを見てお店に行ってみようと思う…この好循環を作るわけです。
この連鎖によって、ギフトを気に入った人がほかの友人にギフトを贈るさらなる好循環も起こすことができるでしょう。その影響力は、チラシを配るよりも大きいのです。
つまり、人から人へ贈られるギフトを通じて新規顧客の開拓を行っている状態。ラッピング代としてかかるコスト(100円ほど)が販売促進費にも当たるわけです。
これら3つの方法で、客数をしっかり伸ばしていきましょう。
雑貨店における売上の考え方
売上=客単価(自分用+ギフト用)×客数
●客単価:「生活」の全てをお店の商品でまかなえるようにして「自分用」に買う商品の単価を上げていく。更に「ギフト向き」商品を増やして単価の上積みをはかる
●客数:ギフトラッピング時に、PRカードを添えて客数を伸ばす
郊外ロードサイドへの出店で賃料を抑える!雑貨店はこうして経費を減らし利益を増やす
雑貨店の経費は、次の足し算で考えます。
経費 = 原価 + 固定費 + 変動費
経費の足し算を構成する3つの要素を順番に見ていきましょう。
●雑貨店の原価について
雑貨店における原価(原価率)は、おおむね60%と相場が決まっています。問屋からの仕入だと、雑貨店に限らず物販ではこの率が標準的です。
他方、大手の雑貨チェーン店ならば、海外にある工場からの直接仕入や自社生産などで原価を下げることも可能です。しかし、起業直後の雑貨店では海外からの仕入も、自社生産もできないため原価率は60%となるのです。
そこで、固定費と変動費を下げることが経費を減らして利益を増やすために必要となります。
●雑貨店の固定費について
雑貨店の固定費は主に、人件費と物件の賃料から成り立っています。このうち「物件の賃料」の粗利益に対する比率を、雑貨店の業界標準以下に抑えることがポイントになります。
物件の賃料の業界標準は次の通りです。
●路面店舗:粗利益の15〜20%
●ショッピングセンター入居店舗:粗利益の25〜30%
物件の賃料を抑える方法としてオススメなのが、都心から離れた郊外のロードサイドに出店すること。無理に都心へ出店するのではなく、郊外ロードサイドでの出店を検討してみてください。
ちなみに、人件費は粗利益の40%が目安です。人件費は2010年代の人手不足以降、なかなか押さえることが難しいのが現実。そこで、物件の賃料を抑えることが大切となります。
●雑貨店の変動費について
雑貨店における変動費は、販売促進費が大半になります。ショッピングセンターに入店しているのならば、ショッピングセンターの集客力に頼ることができるでしょう。しかし、路面店はそうはいきません。自力による努力が必要です。ただ、その際も変動費の目安は意識したいもの。雑貨店も含む、一般的な小売業は売上の5%が変動費の目安です。
比率を抑えるにあたっては、客数の伸ばし方で先にご説明した「ギフトラッピングの際にお店の情報を印刷したPRカードを添えること」が有効です。チラシではなく、PRカードを添えることで販売促進費を抑え、売上に占める変動費の比率5%以内を目指してください。
【雑貨店における経費の考え方】
経費=原価+固定費(人件費+物件の賃料)+変動費
●原価:原価率は60%前後。変えにくい
●固定費:人件費は粗利益の40%。物件の賃料は粗利益の15〜20%(路面店)/25〜30%(ショッピングセンター入居時)
●変動費:ほぼ、販売促進費。売上の5%以内が目安
郊外のロードサイドへの出店とギフトへの注力。これであなたの雑貨店は繁盛へ!
この記事の冒頭で触れたように、雑貨店での独立・開業を考えている人の中には、自分が好きな商品に囲まれてお店を開きたいと思っている人もいるでしょう。しかし、それだけではビジネスは成り立ちません。
でも、大丈夫です!今回ご紹介した様々な繁盛のコツを踏まえた経営をしていけば、地元で愛される雑貨店へ近づけるのですから。
●「生活」の全てをお店の商品でまかなえるようにして、自分用の商品での客単価を上げる
●ギフト向け商品を増やして客単価を上げる
●ギフトラッピングにPRカードを同封して客数を増やす
●郊外のロードサイドへの出店で固定費を抑える
こういった積み重ねで、あなたが開店する雑貨店を、多くのお客さんが訪れる繁盛店にしていきましょう!