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家族経営している会社を相続するにはどうすればいいのか

家族経営している会社を相続するにはどうすればいいのか

代々一族が社長を務めてきた会社や老舗の店舗など家族経営を行う会社では、親族に事業を継がせることが一般的です。

一族の財産を他人に継がせることが難しいことが主な理由でしょう。

しかし、親族内承継に関してはさまざまな課題が存在することも認識しておく必要があるのです。

今回は、親族内承継の際の注意点について解説していきます。

親族内承継とは

親族内承継というのは、子どもや配偶者、そのほかの血縁関係にある人間に事業を承継する方法です。

日本政策金融公庫が行った2018年の調査によると、小規模事業者では約65%が、中規模企業では約42%が親族内承継を行っていることがわかります。

事業規模が小さくなるほど親族内承継を選ぶ企業の割合が高くなる傾向があります。

親族内承継の流れ

親族内承継も一般的な事業承継と同様に、以下の手順で進めていく必要があります。

1.事業承継に向けた準備を行う

事業承継を行うにあたって、経営権や事業用資産の移転・事業体制の再構築・従業員や取引先、金融機関、株主などのステークホルダー(利害関係者)たちからの理解と協力の獲得、といった多数の課題に対応しなければなりません。

これらは長い時間をかけて行います。

そのために、現経営者は事業承継に対する理解や判断力を培う必要があります。

さらに、第三者へ相談できる環境の構築など入念な準備を行わなければなりません。

2.自社の経営を“見える化”する

現経営者と後継者が会社の現状に対して共通認識をもった上で今後の事業の方向性を明らかにすることが、事業承継の円滑化につながります。

そのために、会社の経営状況・経営課題・経営環境・経営資源の存在などを“見える化”することが効果的です。

3.事業承継に向けた経営改善を行う

事業承継は、現状の課題を踏まえた上で経営改善に取り組む絶好の機会です。

会社の将来に希望をもつことができれば、後継者の事業承継に対する意欲も高まります。

そのために、現経営者と後継者との間で経営体制を最適化し、今後に向けた経営改善を図るための道筋を作ることが効果的です。

4.事業承継計画を策定する

事業承継は、多数の課題をゴールに設定した時期(事業承継の実施時期)までに解決していかなければならないため、計画的に物事を進めていく必要があります。

そのために、「どのようなことを、いつまでに、どのような方法で取り組み、どのような結果を実現させるのか」といったことを明らかにした事業承継計画を策定することが効果的です。

5.事業承継の実行

ゴールとして設定した時期に後継者に対して経営権・事業用資産の移転を行い、後継者を中心にした体制での経営をスタートさせます。

前経営者は経営に極力口出しをせずに後継者に任せる姿勢をもつことが、事業承継後の経営を安定化させる上で効果的です。

親族内継承のメリットとデメリット

親族内承継特有のメリット・デメリットには、それぞれ以下の3点が考えられます。

メリット①:現経営者の抵抗感が和らぐ
事業承継を行う際には、現経営者が築き上げてきた資産などを後継者に譲り渡すことになります。身内の人間に譲り渡すのであれば現経営者の抵抗感が和らぎ、事業承継を円滑に進めることができるでしょう。

メリット②:従業員や取引先、金融機関からの理解を得られやすい
親族外の人間に事業承継を行う場合、対象者を後継者として認めたくないと考える従業員も現れる可能性がありますが、子どもなどの親族が後継者となる場合は、自然な流れだと受け止められることが多く、従業員からの理解を得られやすくなります。
これは事業承継後の経営の安定化につながるため、取引先や金融機関からの理解も得られやすくなるでしょう。

メリット③:早い段階から事業承継の準備をすることができる
早い段階で親族を後継者と決めておくことで、事業承継前から後継者に社内のさまざまな業務を経験させ、経営の実績を積ませることができます。それにより、事業承継の円滑に進め、確実性を高めることが可能となります。

デメリット①:後継者が能力不足な場合に事業承継後の経営が不安定になる
親族外の人間に事業承継を行う場合は、能力のある人物に経営を任せることで事業承継後の経営の安定化をはかることができます。一方で、親族内の承継ありきで能力のない親族に経営を任せてしまうと、事業承継後の経営が不安定になります。

デメリット②:後継者が廃業などの決断をしづらくなる
事業を継続させるために、経営環境の変化に応じた事業規模の縮小などの決断が必要となる場合があります。あるいは、事業再生の見込みが無くなった場合に、傷口を広げないためにも廃業を決断しなければならなくなる場合もあるでしょう。
親族内承継の場合、後継者が心理的にこのような決断をしづらくなることが発生しやすいです。

デメリット③:相続を巡る親族内のトラブルが起きやすくなる
親族内承継の場合、現経営者名義の資産を後継者に譲ることが生じます。
そのことに不満を覚える親族がいた場合、相続を巡る親族内のトラブルが起きやすくなります。

親族内継承の注意点

親族内承継を行う場合は、以下の3点に注意する必要があります。

1.経営方針に関して経営者と後継者間での考えを合わせる

親族外承継の場合は、現経営者の経営方針を継承することを前提に経営を任せると比較的スムーズに事が進みます。

しかし親族内承継の場合は、譲る側と譲られる側との距離が近いことが理由で経営方針を巡る対立が起きやすくなります。

よって、後継者を指名する段階で、経営方針に関して現経営者と後継者間での考えを合わせなければなりません。

2.後継者以外の親族への配慮を行う

親族内承継を行うことで、後継者以外の親族に相続財産が減少するなどの不利益が生じる場合があります。

そのことが親族間でのトラブルに発展しないように、後継者以外の親族への配慮を行わなければなりません。

3.現経営者の個人保証への対応を考える

個人保証とは、中小企業が金融機関等から金銭の借入をする場合、経営者やその家族など個人が企業の債務返済を保証することです。事業承継後、現経営者の個人保証を後継者が引き継がないようにするためには金融機関の同意が必要となります。

まとめ

親族に事業承継を行うことは自然な流れでもあるのですが、後継者が親族であるが故の課題も存在します。

将来、親族内承継を想定している経営者は、そのことを充分に理解した上で、早い段階から事業承継に向けた準備を行いましょう。

PROFILE

大庭経営労務相談所 代表 大庭真一郎

東京生まれ。
東京理科大学卒業後、民間企業勤務を経て、1995年4月大庭経営労務相談所を設立。
「支援企業のペースで共に行動を」をモットーに、関西地区を中心として、企業に対する経営支援業務を展開。支援実績多数。中小企業診断士、社会保険労務士。

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