起業家、経営者にとって大事なのは、世の中を見抜く力です。1つの事象をどう捉えるかで、ものの見え方も、そこから得られる情報も大きく変わります。そうした「着眼点」、実はトレーニングによって鍛えることができるのです。累計20万部を超えるベストセラーとなった『戦略思考トレーニング』シリーズでおなじみの経営コンサルタント・鈴木貴博氏に解説してもらいましょう。
経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第73回・徳川吉宗はなぜ桜を植えたのか
いきなりですが、クイズです!
クイズの答えの中に、着眼点を鍛えるポイントがある
コロナウイルスによって世界中が大変なことになっていますよね。すでに影響は出始めていますが、今後、経済に与える打撃はものすごいものになりそうです。
そんな中、アメリカの株価を見ていたら気づいたことがありました。多くの銘柄がコロナショックにより下がり続ける中、3つの会社の株が真っ先に反転し始め、急に上がり始めたのです。
このタイミングで株価が上がるということは、多くの人が「この会社は今の逆境に強いに違いない」と考えたからでしょう。
そんな会社とはどういう事業をしている会社なのか。それを考えることが、答えに近づくためのポイントです。
それでは解説します!
まず1つ目が、世界最大の小売店として知られる「ウォルマート」です。アメリカの人たちがいろんな物資を買いだめに行こうと思った時に、真っ先に足を運ぶ場所です。
人間の心理として不安がゆえに「買いだめ」に走ってしまいがちで、多くの人がお店に殺到するだろうという予測からウォルマートの株価が真っ先に上がったのです。
日本でもスーパーマーケットの棚から一時的に食品がなくなったことがありましたが、やはりアメリカでも同様のことが起こりましたので、この見立ては合っていたということでしょう。
これから先、都市が封鎖されたりして物流が断絶するなどの問題が起こってしまったとしても、ウォルマートほどの規模であれば、対応もしっかりしているでしょう。店舗数も多いですし、騒ぎが大きくなればなるほど強みを発揮する小売業だと多くの人が思ったということですね。
自宅で暇を持て余す人が増えると、何がもうかりそうか?
その後、2つ目の銘柄が動き始めました。それが「アマゾン」です。
外出を控えて家にこもる時間が多くなると、「巣ごもり商品の需要が上がる」と考えたのでしょう。その時に強いのがデリバリー系のビジネスで、その筆頭であるアマゾンが真っ先に注目されたのです。
日本でいうと、楽天やヤフオク、メルカリなどの「自宅にいながら簡単に買い物ができるサービス」に注目が集まるのと同じですね。3月下旬頃からは様々な飲食店がデリバリーやテイクアウトのサービスに力を入れるようになり、中でも宅配デリバリーの総合サイト「出前館」が注目され始めていることから、日本でもアメリカと同様の動きが出始めていると考えてよさそうです。
そして、家にいる時間が長くなればなるほど、暇をもてあますようになることは容易に想像がつきます。
しかも非常にネガティブな状況下です。暇つぶしとして何を求めそうかを考えたら、真っ先に浮かぶのは「エンタメ」ではないでしょうか。
3つ目の銘柄は、「ネットフリックス」でした。
家に籠って楽しむとしたら、オンライン上で楽しめるストリーミング配信であるネットフリックスのようなビジネスはもってこいです。しかもアメリカに限らず、世界中で需要が高まることが想像できます。ゆえに多くの人がその成長に注目したというわけですね。
いつの時代もある、逆境に強いビジネス
今回はアメリカの話ではありましたが、日本に住んでいる皆さんもリアルタイムで同じ状況下にいることから想像がしやすかったのではないでしょうか。
いつの時代も、逆境に強いビジネスというのは間違いなくあります。それを見つけるには、逆境がもたらす状況を想像して、そこに打ち手や解決策を提供できるものが何なのかを考えてみることでしょう。
コロナウイルスにより、たくさんの人が苦境に立たされていると思いますが、新しいビジネスのヒントをちょっと考えてみるだけでも、前向きになれるかもしれませんね。
最後に、もうお分かりだと思いますが、冒頭のクイズの答えは、「ウォルマート、アマゾン、ネットフリックス」でした。まずは1日も早くコロナウイルスが終息し、日常が戻ってくることを切に祈りたいと思います。
経営戦略コンサルタント
百年コンサルティング株式会社
代表取締役
鈴木貴博