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資金を集める前に知るべき正しいベンチャーキャピタルの選び方

資金を集める前に知るべき正しいベンチャーキャピタルの選び方

私は「クラウドクレジット」というFinTechスタートアップでCFOとして、これまで複数回の資金調達を主導してきました。

調達額は数十億円を超え、調達先は有名ベンチャーキャピタル(以下、VC)ばかりです。

今回は、VCからの資金調達について、実際の経験に基づき解説していきます。

VCに出資されるメリット

VCに出資される一番のメリットは、資金に加えて経営陣が会社経営を行う上でのサポートを得られることです。

VCによっては、“既に株式公開している企業”など自社よりステージが先に進んでいる投資先があります。

そういったVCは、ステージが進んでいる会社で得た知恵を(守秘義務の範囲内で)、新たな投資先へ積極的に還元してくれます。

VCが持つネットワークも魅力的で、何か困った時に相談すればさまざまな協力先を紹介してくれるなど、リソースの限られるスタートアップにとっては心強い限りでしょう。

また、ガバナンス(企業統治)が強化されることもメリットです。自己資金のみで会社運営をしていくと、創業者が公私を混同したりモラルハザードに陥ったりするケースがあります。

外部資本を入れ、必要に応じてVCから社外取締役を派遣してもらうことで、これらを未然に防ぐ効果が得られます。

最終的にIPO(新規上場)するにせよ、M&A(売却)するにせよ、ガバナンスが緩いとそれが致命的なディール・ブレーカーになりかねません。

資金があまり必要ではなくても、早期にVCを株主として迎え入れ“意図的に”ガバナンスを強化しておくことは検討に資するでしょう。

さらに、PR面でのメリットもあります。有名VCから出資を受けることで「ああ、あの会社はあのVCのお眼鏡にかなったのだ」という認知をされます。

VCによっては自社で専属チームを持ち、積極的にPRをしてくれることもあるでしょう。

ベンチャーキャピタルにも得意ジャンルがある

得意ジャンルは大きく分けて以下の2軸で整理することができます。

・投資ステージ
・セクター(業界)

投資ステージについては、VCのWebサイトを訪ねれば「シード・アーリー・グロース・レイター」のどのステージで主に投資を行っているかの記載があることが多いです。

最近はVC数が増えるなかで、特定のステージ特化型が増えている印象があります。

まずは、自社のステージが上記分類のどこに当たるかを把握し、打診するVCを選択するのがおすすめです。

VCの得意なセクター(業界)については、VCの投資先を訪問前に調べてみましょう。

投資先をざっと見て自社がいる市場に近いところがあれば、そのVCには知見がある可能性が高いので、訪問時に話がかみ合う可能性が高まります。

また、知見があれば前述したサポートも出資後に受けやすくなります。

一方で、投資先に自社がライバル企業とみなしている先があれば、コンフリクト(利益相反)の問題が発生しうるため、守秘義務に留意しながら接触することが必須です。

上記に加えて、「資金調達ラウンドのリードを取れるか?」という軸もあります。

見落とされがちですが非常に大事なポイントで、VCによっては「他社VCが乗るなら乗るよ」というスタンスしかとらないところもあるほどです。

リードが決まらないと上記のようなサブVCもついてこないので、“まずはリードを決める”ことを心掛けましょう。

資金調達するベンチャーキャピタルは複数? 単独?

これにはメリット・デメリットがあります。

複数の場合は、株主数が増えてしまう分、コミュニケーションコストが増加し、利害調整に苦慮する場面も出てくる懸念があるでしょう。

一方で、上述したメリットも大きくなる(もちろん調達額も増やせる可能性がある)ので、デメリットがメリットを上回らない臨界点を見極めることが大事です。

複数のVCから資金調達を受ける場合は、窓口として専属職を設けて対応することをおすすめします。

社長(創業者)が引き続き窓口を担う例もありますが、出資後はVCが一定のモニタリングを行います。

資料の提出など工数がとられるものもあるので、それにいちいち社長が対応することはあまりおすすめしません。

一方で、VCから出資してもらった資金で事業を運営していることを絶対に忘れてはならず、VCと対話する際には社長がその場にいることが望ましいです。

失敗しないベンチャーキャピタルの選び方

失敗しないVCの選び方は、VCから出資を受ける前に、受けた後のサポートやモニタリング体制について徹底的にヒアリングし、納得した上で出資を受けることでしょう。

株主になってもらうことは「同じ船に乗る」ことを意味します。

また、一度出資してもらった場合、よほどのことがない限り袂を分かつことはできません(資本政策の不可逆性)。

VCに限らず、出資を受けることは“結婚”に近いイメージとよく言われていて、実際に私もそういう側面があると思っています。

資金調達は、資金繰りの関係で時間の制約もあることが多いですが、焦って判断を誤らないように余裕のあるうちにお目当てのVCと会話を開始し、相互理解をはぐくむ時間を確保してください。

また、VCによっては担当者が離職してしまうリスク、償還期限が想定外に短いリスクもあるので、これらの点についてもよくヒアリングしておきましょう。

まとめ

どのVCを選ぶかによって、出資後の自社の成長速度が大きく変わります。選ぶ立場になるためにも、普段から自社の事業・チームを磨いておきましょう。

PROFILE

坂本 隆宣

国内証券会社、外資系投資銀行にて主にクロスボーダー・大型取引のM&Aアドバイザリーに従事後、コンサルティング会社にて資本政策アドバイザリーチームを立ち上げ。現在はFinTechスタートアップであるクラウドクレジット㈱にて取締役CFOを務める。

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