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経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第23回・1000円割引

起業家、経営者にとって大事なのは、世の中を見抜く力です。1つの事象をどう捉えるかで、ものの見え方も、そこから得られる情報も大きく変わります。そうした「着眼点」、実はトレーニングによって鍛えることができるのです。累計20万部を超えるベストセラーとなった『戦略思考トレーニング』シリーズでおなじみの経営コンサルタント・鈴木貴博氏に解説してもらいましょう。

いきなりですが、クイズです!

小売業の専門家から聞いた話です。アメリカの大手小売りチェーンのとあるスーパーが、集客のためにいろいろなチラシやクーポンを発行し、その効果をデータに基づき検証したんだそうです。結果、最も効果が出てリピート率が高かったのが、「キャッシュ」を配るということだったそうですが、さて、このキャッシュとは具体的にどういうものでしょうか?

ヒントは、当たり前ですが「それをもらうとお店に行きたくなるもの」です。ちなみに日本にも同じものがあります。皆さんがもらって嬉しいものは、どんなものでしょうか?

クイズの答えの中に、着眼点を鍛えるポイントがある

あらゆる分野でAI(人工知能)が使われ始めています。特にビッグデータを使ってデータ解析がしやすい集客などの分野では、世界中でいろいろな実験や研究が行われているようです。

集客のための1つの事例として、アメリカのとあるスーパーでは、チラシやクーポンの効果についての調査、分析が行われたといいます。

リピート率を高めるためにはどんなチラシやクーポンが効果的なのか。どのタイミングで、どういうお客さんに渡すのがいいのか。いろいろなデータをとった結果わかったことの1つが、今回のクイズです。

それでは解説します!

皆さんも、お店で買い物をした際にいろいろなクーポンをもらうことがあると思います。特定の商品が安く買えたり、「次回使える○%割引き券」みたいなものや、他のお店で使える割引券など、さまざまですよね。

調査によると、いろいろと発行したクーポンの中でもっとも反応がよかったのが、「期間限定ポイント」でした。つまり、「○月○日まで使える10ドルのキャッシュ」をクーポンとして配るのが、最もリピート率が高かったんだそうです。

ポイントカードに入会して最初の購入額がある程度まとまってあり、なおかつ住所がお店に近い人を対象に、AIがクーポンを発行したのだそうですが、結果、見事に多くの方がクーポンを持って再度来店したといいます。

配布したのは、「1000円あげたのでこの期間に使わないとなくなりますよ」というクーポンなわけですが、これは「お店に来たら1000円割引しますよ」ということと言ってみたら同じなわけです。なのに、後者の「お店に来たら1000円割引」のクーポンと比較して、キャッシュでプレゼントした方が、行動率が高かったんだそうです。

なぜでしょうか。それは、「もらったキャッシュ(お金)がなくなるのが嫌だ」という心理が働いたからです。

別に実物の現金をもらったわけではありませんし、クーポンだから使わなくても別に損するわけではないのに、そう思ってしまうというところが、とても面白いなあと思いました。

スマートフォンの普及によりクーポンの可能性が広がっている

このような期間限定のキャッシュを配る施策は、日本だと携帯電話関連のサービスや、インターネット通販などではよくあるものです。

例えば、携帯電話会社の中には、月の頭にその月内に使える500円分のクーポンを配布するところがあります。それをもらってしまうと、「何かで使わなきゃ」と思って無理にでも使っちゃうわけですね。

この手法、リアルの店舗ではなかなか普及しませんでした。クーポンの管理が難しく、人にあげることもできてしまうため、来店したのが本人なのか、確認する術がなかったからです。

しかし、今はスマートフォンが普及したことでクーポンなどの配布もしやすくなり、1対1で管理もしやすくなりました。しかも、利用したかどうかがデータで蓄積できるなど、いろいろな面で便利になったのです。今後もクーポンの普及は見込めそうですよね。

世界から見たら、実は日本は後れている

クーポンやチラシを使った集客は、一見我々の生活では当たり前のように感じるかもしれませんが、リアルな店舗でそういった期間限定のキャッシュを配ることは、実はまだまだ行われていないようです。

しかも、海外の方がこうした施策は進んでおり、日本はだいぶ後れをとっていると言われています。

今回ご紹介した事例を参考に、配るならどんなものがよさそうか、自分の商売ならどんなことができそうか、ぜひ考えてみてくださいね。

最後に、もうお分かりだと思いますが、冒頭のクイズの答えは「期間限定ポイント」でした。最近はあまり見かけなくなりましたが、行くたびに無料券をもらって毎回安く食べ続けられる飲食店が、昔はよくありましたよね。あれはあれで絶好の集客のための施策ではありますが、データや効率性を重視する今の世の中では、なかなか実現しにくくなっているのかもしれません。時代とともになくなるサービスの1つ、なのかもしれませんね。


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経営戦略コンサルタント
百年コンサルティング株式会社
代表取締役
鈴木貴博

東京大学工学部卒業後、ボストン・コンサルティング・グループに入社し、数々の大企業の戦略立案プロジェクトに従事。1999年にはネットイヤーグループの創業に取締役として参加。2003年に独立し、百年コンサルティングを創業する。大手企業の経営コンサルティング経験を元に2013年に出版した『戦略思考トレーニングシリーズ』(日本経済新聞出版社)が累計20万部を超えるベストセラーに。現在はビジネスをエンタメクイズ化する経済エンタテナーとしても活動中。『パネルクイズアタック25』(優勝)、『カルトQ』などのクイズ番組出演経験も豊富。近著に『仕事消滅 AIの時代を生き抜くために、いま私たちにできること』 (講談社+α新書)。

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1936年生まれ。幼少から着物に親しんでいたが、定年退職後の2001年、脳梗塞を患い、帯が結べなくなる。
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