起業家、経営者にとって大事なのは、世の中を見抜く力です。1つの事象をどう捉えるかで、ものの見え方も、そこから得られる情報も大きく変わります。そうした「着眼点」、実はトレーニングによって鍛えることができるのです。累計20万部を超えるベストセラーとなった『戦略思考トレーニング』シリーズでおなじみの経営コンサルタント・鈴木貴博氏に解説してもらいましょう。
●経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第21回・広がる元日休業
いきなりですが、クイズです!
目が不自由な人は絶対にできないだろうと思われていたことを実現させた、というのが大きなヒントです。どんなものがありそうか、いろいろと考えてみてくださいね。
クイズの答えの中に、着眼点を鍛えるポイントがある
ドバイの警察が、「1人乗りドローン」を導入したニュースが話題となったのをご存じの方もいるかもしれません。ドバイといえば言わずと知れたお金持ち国家です。その資金力を武器に世界でも最先端といわれるような最新機器の導入を積極的に導入するドバイ警察は、一部で「ヤッターマン警察」などと呼ばれているんだそうです。
そんな彼らが1人乗りドローンを使って何をするのか。そう、犯人追跡です。
犯人を空から追跡し、逮捕に追い込みます。1人乗りドローンが入れない場所では、中から小型のドローンが出てきてさらに犯人を追跡するらしく、これはもう、マンガやテレビドラマのような世界が現実となりつつある、そんなふうに言えそうです。
それでは解説します!
近畿日本ツーリストは国内外でのいろいろな旅行ツアーを企画・販売していますが、最近話題となっているのが、高齢者や障がい者などに向けたツアーです。
「年齢や障害などによって旅行を楽しむことを諦めてほしくない」というのが企画のコンセプトだそうで、特にその中でも注目されているのが、目が不自由な人向けの「自動車運転体験ツアー」です。
事前に講習を受けた後、教習所の車のように助手席にブレーキを積んだ車を使い、インストラクター同乗のうえで運転操作を1つずつ覚えていきます。2日間の日程の間に、最終的には自分の運転だけでコースを走れるようになるということで、「目が見えないので自動車運転は諦めていた」という人が噂を聞きつけて殺到し、毎回即日完売の大人気ツアーになっているそうです。
このような誰もが無理だと思っていることを実現してしまう企画力・実行力もすごいですし、コンセプトを含め、競合他社との差別化にも成功しているわけですから、このツアーの成功は「さすが」の一言です。
これは日本の会社ではありませんが、ハワイでは目の不自由な人でも参加できる「セスナの操縦体験ツアー」もあるそうです。こうした、一見不可能だと思われることも、技術の進歩やサービス提供側の努力、そして発想の転換などによって実現可能となっている。そんなふうに言えるのかもしれませんね。
ドローンの技術を使えば、目が不自由な人もバイクにも乗れる!?
先ほどお話したドバイの1人乗りドローンですが、犯人追跡で使えることが分かったということで、その後は「1人乗りタクシー」としても使えるのではないかと注目が集まっているそうです。
ドローンの特性を応用すれば、別の乗り物であっても誰かに遠隔操作してもらうことができそうです。例えば、バイクです。目の不自由な人にはさらに難易度が高いと言われるバイクの運転が、こうした技術によって可能になるかもしれません。
サービスという点では、ハワイではセグウェイの試乗体験を絡めた観光ツアーなどもあるようです。一定時間操作を練習した後、セグウェイに乗ってダイヤモンドヘッドまで観光に出掛けるというもので、実際に私の妻が体験したのですが、運動が得意ではない彼女でも十分に操縦と観光を楽しめたとのこと。
日本では、セグウェイで公道を走ることは禁止されていますから、すぐに同様のサービスが実現するのは難しいでしょう。しかし、技術とアイデアをうまく使えば、どんな業界においても新しいサービスを生み出すことは可能なのです。
既にある技術を参考にどんなビジネスができそうか考えてみよう
今回紹介した乗り物にまつわる技術は、どれも既にあるものばかりですから、すぐにでも日本で実現できます。特にドローンを使った1人乗りタクシーなどは需要も高いはずで、事業機会は非常にあると思われます。
しかし、規制緩和という意味で日本は非常に遅れており、そうしたいいアイデアがあっても、なかなか実現までに時間がかかります。もったいないですよね。
今後は規制緩和を進めるとともに、世界で注目される技術を使ってビジネスチャンスを広げることをもっとやっていく必要があるのかもしれません。
今の時点では、こうした世界の事例を参考に、自分ならどんなビジネスができそうか考えてみるのはいいトレーニングになると思いますので、ぜひ考えてみてくださいね。
最後に、もうお分かりだと思いますが、冒頭のクイズの答えは「自動車運転」でした。ヤッターマン警察ことドバイ警察では、今後はロボット警察官の導入も予定されているとのことです。1人乗りドローンにロボット警察が乗り、上空から監視したり非常時に救出活動を行う時代が、そう遠くない未来に実現するとしたら、それはまさにロボコップの世界ですね。
経営戦略コンサルタント
百年コンサルティング株式会社
代表取締役
鈴木貴博