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経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第136回・カラフルなソックス

独立ノウハウ・お役立ち

起業家、経営者にとって大事なのは、世の中を見抜く力です。1つの事象をどう捉えるかで、ものの見え方も、そこから得られる情報も大きく変わります。そうした「着眼点」、実はトレーニングによって鍛えることができるのです。累計20万部を超えるベストセラーとなった『戦略思考トレーニング』シリーズでおなじみの経営コンサルタント・鈴木貴博氏に解説してもらいましょう。

いきなりですが、クイズです!

ファミリーマートが販売する「ファミマソックス」が人気です。カラーバリエーションが豊富であることや、履き心地の良さもヒットの理由だといわれています。実はソックスだけでなく「Tシャツ」などのアウターも人気で、これらの衣料品は「コンビニエンスウェア」という同社のオリジナルブランドとして展開されています。このままではファミリーマートが「ユニクロ」みたいになってしまいそうですが、コンビニエンスストアはお店全体に置くことができる品数が少ないため、おそらくそうはならないと考えられます。さて、ここからがクイズです。お店全体で約4000品目しか置けない中で新たに衣料品を展開するファミリーマートは、ある工夫ができる衣料品だけを取り扱っているのですが、それは一体どのようなものでしょうか?

クイズの答えの中に、着眼点を鍛えるポイントがある

ファミリーマートが2021年3月より販売している「ファミマソックス」が人気を集めています。品質が高く、履き心地が良いという評判に加え、他のお店ではあまり見かけないような絶妙なカラーバリエーションも人気の理由だとか。それでいて390円(税抜き)という価格も魅力的です。

ソックスだけでなく、Tシャツなどのアウターや、インナーにも力を入れています。着心地や通気性の良さなど、モノとしてしっかりしていることから、ファンがついているのでしょう。

これらの衣料品はファッションデザイナーとの共同開発のもと、「コンビニエンスウェア」というオリジナルブランドとして展開し、新商品も続々投入されています。

コンビニエンスストアで売っている衣料品というと、かつては急な外泊や出張などの際に買う「とりあえずのもの」の印象でしたが、今や全くそうではなくなっているのですね。

それでは解説します!

そんなファミリーマートが、今後は「ユニクロ」のようにラインナップをどんどん増やしていくのかというと、私はそうはならないと考えています。コンビニエンスストアのお店に置ける品数には限界があるからです。

とはいえ、全体で約4000品目しか置けない中で衣料品の売り場を充実させていくために、ファミリーマートはある工夫をしています。

それが、サイズ展開が少ない商品を選んでいることです。

人気になったソックスは、「22-25㎝」と「25-28㎝」の2種類のみ。主に小さい方が婦人用、大きい方が紳士用となるわけですが、男女に分けて細かくいろいろなサイズを取り揃えなくていいため、カラーバリエーションも豊富に用意できるわけですね。

Tシャツについては「M」「L」「XL」の3つのサイズとなりますが、店頭では1つの棚のラインに手前からサイズごとに並べるなどしていて、場所を取らずに陳列する工夫をしています。

何より、Tシャツで面白いのが「男女兼用」、つまりユニセックスであることです。これも品数を増やさないための1つの工夫でしょう。

「ユニクロ」で人気だったユニセックスの商品

「男女兼用」で思い出したのですが、実はこれ、昔の「ユニクロ」と同じ売り方なのです。

かつてユニクロの商品は「WOMEN(ウィメンズ)」と「ユニセックス」のみで、メンズというくくりはありませんでした。

昔、ユニクロの役員の方に聞いた話ですが、ユニクロは創業時から40代、50代の女性のユーザーがとても多いのだそうです。40代や50代になると、それまでに比べて体のラインが強調される服を着なくなる人が増えるそうで、そういう人たちがユニクロのユニセックスのシャツを好んだというわけです。

今回のファミリーマートはそれを狙っているわけではないでしょうが、ユニセックスというものを今になって捉えて、日本中にある店舗で販売しているというのは、1つ面白い話だなあと感じています。

セブンイレブンやローソンに対抗していくための衣料品ブランド

ファミリーマートが衣料品のオリジナルブランドを立ち上げているのは、セブンイレブンが「セブンプレミアム」に力を入れたり、ローソンが無印良品と提携して品揃えを増やしたりしていることと同じ流れの作戦でしょう。そうやってブランディングをし、自社ならではの商品を生み出しています。

今回紹介した衣料品ブランドを展開する話は、競合との差別化という意味でも、いかに効率よく商品ラインナップを充実させていくかという点でも、非常に参考になる事例ではないかと感じています。ぜひ参考にしてみてくださいね。

最後に、もうお分かりだと思いますが、冒頭のクイズの答えは「サイズ展開が少ない商品を選んでいる」でした。ちなみに、「ファミマソックス」にはファミリーマートのブランドカラーである「グリーン」と「ブルー」のラインが入った遊び心のある商品もあるようです。「色」の印象は大事ですね。

構成:志村 江

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PROFILE
鈴木貴博

東京大学工学部卒業後、ボストン・コンサルティング・グループに入社し、数々の大企業の戦略立案プロジェクトに従事。1999年にはネットイヤーグループの創業に取締役として参加。2003年に独立し、百年コンサルティングを創業する。大手企業の経営コンサルティング経験を元に2013年に出版した『戦略思考トレーニングシリーズ』(日本経済新聞出版社)が累計20万部を超えるベストセラーに。現在はビジネスをエンタメクイズ化する経済エンタテナーとしても活動中。『パネルクイズ アタック25』(優勝)、『カルトQ』などのクイズ番組出演経験も豊富。近著に『戦略思考トレーニング 最強経済クイズ[精選版]』(日本経済新聞出版社)、『日本経済 予言の書 2020年代、不安な未来の読み解き方』『「AI失業」前夜―これから5年、職場で起きること』(ともにPHPビジネス新書)など。

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