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エリート営業マンから大工、そして農家へ。ある男が歩んできた、”みんなと違う道”

生ボイス

神奈川県藤沢市で、農薬や化学肥料を一切使わずに自然栽培野菜をつくる中越節生さん。

もともとは優秀なビジネスパーソンでしたが、一念発起して大工を志し、さらに農家へと転職を果たしました。

安定して稼ぐ選択肢を捨てて、なぜ農家になったのか。「農業は宝の山」と言う中越さんに、大胆な決断の背景や自然栽培野菜の可能性、そして死ぬ時に後悔しない生き方についてうかがいます。

【中越節生さん・プロフィール】
無農薬・有機野菜農家。1970年東京都生まれ。日本大学農獣医学部水産学科を卒業後、不動産会社、そして外資系保険会社に勤務。2005年、大工になるために工務店で修業を開始。

その後、農業の道に進み、無農薬・無化学肥料の有機野菜の栽培に力を入れる。2012年8月、神奈川県藤沢市に直売所兼八百屋カフェをオープン。タレントつるの剛士さんへの農業指導、地元野菜のPR活動も行っている。

  1. 苦学生からエリート営業マン、そして家族に家を残そうと大工に
    1. ── 大学を卒業して、不動産の企業に就職したのはなぜですか?
    2. ── 営業の仕事はいかがでしたか?
    3. ── そして転職をされるわけですよね。
    4. ── 成績優秀な営業マンから大工になることに、奥さま反対しなかったのですか?
    5. ── まったくの未経験から始めて、3年で家を建てるというのは、相当に大変なことだと思うのですが。
  2. 農家は「いつまで経っても1年生」。だったら自分にもできるのではないか
    1. ── そして、次に農業へ。どのようなきっかけがあったのですか?
    2. ── 勝算があったということでしょうか?
    3. ── 具体的には、どのような販売方法を?
    4. ── 順調な一歩を踏み出せたようですね。
    5. ── 藤沢に決めた理由は?
    6. ── 畑だけでなく、お店も始められましたね。
  3. とことん考え、「みんなと違うことをやる」ことが大切
    1. ── 中越さんは、それまで続けてきたことをスパッと辞めて、新しいことに何度も挑戦してきました。その決断力の源になっているものは何ですか?
    2. ── それでは今、後悔しないために一番力を入れていることは何ですか?
    3. ── 仕事を変えたいという人に対して、農業という選択肢を自信を持って提示できますか?
    4. ── 農業に限らず、独立して何か事業を始めるにあたって、一番重要なことは何でしょうか?

苦学生からエリート営業マン、そして家族に家を残そうと大工に

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── 大学を卒業して、不動産の企業に就職したのはなぜですか?

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中越節生(以下、中越)
大学2年になる前に、父が会社を潰して莫大な借金を背負うことになってしまったんです。

学費も生活費も自分で稼がなければならなくなり、1日4〜5件のバイトをこなしました。

長男だったので、就職してからも家族のために借金を返していかなければいけない。

そこで、固定給プラス歩合で稼ぐことのできる不動産の営業を選びました。

── 営業の仕事はいかがでしたか?

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中越
厳しい職場でしたが、それでも辞めるわけにはいきませんから、必死に働き続けました。

やがて成績トップになり、営業部長にもなって、ようやく借金を全額返すことができたんです。

── そして転職をされるわけですよね。

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中越
使命感がなくなってしまったのでしょうね。生活には余裕ができたけれど、幸せとは感じられなかったんです。

そんな時に顧客だった方からスカウトされて、生命保険会社に移りました。

そこで働くうちに、人の死について考えるようになって、自分が死んでも家族に家を残してやりたい、それなら大工だ、と。

ちょうど知り合った工務店の社長がいたので、修業をさせてくれと頼んで働き始めました。そして3年後に中古住宅を買い、それを壊して、自分の家を造りました。

── 成績優秀な営業マンから大工になることに、奥さま反対しなかったのですか?

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中越
まだ結婚前でしたが、相談はせずに決めました。

「大工になったよ」って。借金はしないし、給料もきちんともらえるから、生活に困ることはないと説明しました。

── まったくの未経験から始めて、3年で家を建てるというのは、相当に大変なことだと思うのですが。

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中越
修業しながら、大工の仕事以外まで含めて、家を建てることの全て見させてもらったんです。それで全体の仕組みを理解できたことが大きかったですね。

あとは、大学時代にとにかくいろいろなバイトをしたこと。あの時の経験は、何でもできるんだ、という自信につながったと思います。

農家は「いつまで経っても1年生」。だったら自分にもできるのではないか

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── そして、次に農業へ。どのようなきっかけがあったのですか?

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中越
家の近くの土手を走っていて、休耕地や休耕田が多いことに気がついたんです。それでいろいろと調べるうちに、農家の高齢化や食料自給率など、さまざまな問題があることを知りました。

これは何とかしなければ、誰かがやらなければと思っているうちに、それなら自分がやろう、という気持ちになっていったんですね。

そして市役所に相談しに行ったのですが、門前払いされてしまって。それで農業への熱がますます燃え上がってしまいました(笑)。

そこからは農作業をしている人に直接たずねたり、直売所で農家を紹介してもらったりしているうちに、有機農業をしている方と出会って、その農園で働くことになったんです。そこで1年働いて、独立しました。

── 勝算があったということでしょうか?

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中越
野菜って、実はそれほど手をかけなくても意外にできるということを学んだんですね。それに、農家の方に話を聞くと、皆さん「自分はいつまで経っても1年生だ」とおっしゃるんです。

つまり、正解がないということ。だったら自分にもできるのではないかと思ったんです。また、売る仕組みについても、営業をずっとやってきた経験から、もっと良いものにできるという考えはありました。

── 具体的には、どのような販売方法を?

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中越
宅配専門です。無農薬の自然栽培野菜を作り、お客さんを見つけて、直接届けるというスタイル。たとえば新しくできた大規模マンションを調べて、チラシをポスティングするんですね。

そんな営業を続けていくことで、お客さんを獲得していきました。また、それとは別に会員制の畑も作り、年間契約で野菜を定期配送する仕組みも作りました。

── 順調な一歩を踏み出せたようですね。

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中越
そうですね。しかし、唯一の誤算が原発事故による放射能汚染です。震災当時、僕たちが農家を始める際に選んだ畑が、除染調査重点地域になってしまって、安全安心の野菜をうたうことができなくなりました。

ちょうどこども生まれる時期でもあったので、一時避難をし、新しい土地でまた畑をやるために動き始めました。それで2012年4月に、藤沢市に越してきたんです。

── 藤沢に決めた理由は?

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中越
放射能値が低いこと、産休明けの妻の都内への通勤が可能なこと、そして市役所の方が非常に協力的だったことですね。また、有機野菜を作っている有名な方がいて、その人にも相談することができました。

こちらで野菜を作り始めると、ちょうど藤沢市の観光大使になったばかりのつるの剛士さんが畑をやりたがっているという話があって、その指導をしながら一緒に藤沢野菜のPR活動をするようにもなりました。

── 畑だけでなく、お店も始められましたね。

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中越
畑一本でやるリスクを感じてしまったんですよね。それで、野菜を売りながら農業相談もできるお店をやろうと思い、物件を見つけて、自分で内装まで全てやってオープンしたのが「駅前直売所八〇八」です。

とことん考え、「みんなと違うことをやる」ことが大切

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── 中越さんは、それまで続けてきたことをスパッと辞めて、新しいことに何度も挑戦してきました。その決断力の源になっているものは何ですか?

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中越
僕の信念は、明日死んでも後悔しないように今を生きること。「あの時にああしておけばよかった…」と思いたくないんです。

── それでは今、後悔しないために一番力を入れていることは何ですか?

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中越
自然な循環、ですね。誰か1人が勝つのではなく、あらゆるものがうまくまわる仕組みを作れたなら、みんなが幸せになれるのではないか、と。

僕の畑では、農薬も化学肥料も使わず、畑だけでまわしていきます。循環こそが一番調和がとれる方法であって、それは畑も社会も一緒だと思うんですよ。

そういった仕組みを作るために、売り先を見つけることが難しい新規就農者の野菜も買い取って販売しています。

── 仕事を変えたいという人に対して、農業という選択肢を自信を持って提示できますか?

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中越
農業は宝の山です。やりたい人はぜひ藤沢に来てほしいですね。

実際、新規就農者は増えています。無償で借りられる畑もありますし、無農薬野菜を扱う飲食店やスーパーもたくさんあります。大きなチャンスだと思いますよ。

── 農業に限らず、独立して何か事業を始めるにあたって、一番重要なことは何でしょうか?

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中越
とことん考えることです。あらゆることを想定して、失敗の芽をつぶし、うまくいく方法を自分の頭で徹底的に考える。そこまで考えてやったことなら、どうにかなるものです。

成功したかどうかなんて受け止め方で違ってきますし、そもそも自分で認めさえしなければ失敗にはなりません(笑)。

それともう1つ、相談に来た人に僕がかならず言っているのが、「みんなと違うことをやれ」ということ。成功例があるからといって、同じことをしてはダメです。

たとえば僕の場合は、車でしか行けないところによくある直売所を駅前に作りました。人が何を求めているのか、あったら良いけれど今はまだないものは何か、それをとことん考えた結果なんです。

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アントレスタイルマガジン編集部

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