融資を確実に通す、創業計画書の書き方を徹底解説!【税理士が教えるお金と起業③】

融資を確実に通す、創業計画書の書き方を徹底解説!【税理士が教えるお金と起業③】

独立・起業の「お金」に関する悩みを、税理士の齋藤雄史先生に解説していただく「税理士が教えるお金と起業」シリーズ。

今回は、資金調達時の融資を受けるために必要な、創業計画書の項目を1つずつ丁寧に解説していただきます。

「創業計画書をどう書けば良いのわからない!」「そもそも創業計画書ってなに?」と感じている方は、是非参考にしてください。

創業計画書の書き方を徹底解説!

創業計画書とは、日本政策金融公庫から資金調達を受ける際に提出する審査書類のこと。創業計画書はいわば、事業のプロフィールのようなものです。

創業計画書を通じて、融資担当者は「あなたにお金を貸して、返済してもらえるか?」をチェックします。

だからこそ、誠意を持って”あなたの事業をきちんと理解してもらえる”創業計画書を作成していきましょう。

今回は日本政策金融公庫の創業計画書を例に、各項目別に何をどのように記載するのかを解説していきます。

実際に書くときは、公庫のホームぺージから創業計画書のExcel形式のファイルをダウンロードして編集するとよいでしょう。

最初は何回も書き直すことが多いため、手書きよりファイルを編集することをおすすめします。

1.創業の動機

まずは「創業の動機」についてです。あなたが事業を立ち上げるに至った経緯を書きます。

「ただなんとなく事業を立ち上げたい」など、動機がふわっとしている人にお金を貸したくありませんよね?

ポイントは「実績となる事実」をおさえておくと、より説得力が増していくということです。
例えば、「不動産会社に勤めていた」→「仕事が評価されて、顧客が付いてきた」→「知識・経験を生かして独立」という流れですと、すでにお客さんがいる状態からスタートしているというのが伝わりますよね。

簡単な例ではありますが、ストーリーを持つことは、とても重要な要素と言えます。

2.経営者の略歴等

略歴についても重要なポイントは「ストーリー」です。”創業の動機”で書いた内容を裏付けるような略歴になっていれば、よりベストですね。

先程の例に合わせると「不動産業を行いたい」→「不動産会社に努めていた」や「宅地建物取引士取得」があると、事業に対する意欲、能力について実績をアピールすることができます。

略歴と言っても、必ずしも出身高校・大学などを書く必要はありません。あなたの事業に直接関係するものを記入できていれば良いでしょう。

3.取扱商品・サービス

取扱商品・サービスでは、ズバリあなたが”誰に””何を”売って売り上げを作るのかを記載します。

ポイントとなるのは、「数字」と「独自性」です。

飲食店の例をあげて考えてみましょう。

例)
①100種類のオリジナルビュッフェ(夜限定)@5,000円
②スペシャルランチセット(昼限定) @3,000円
③お土産用セット @1,000円~@5,000円

上記のように料金単価を入れることで、売り上げ計画の裏付けにもなり、説得力が増します。商品やサービスに独自性(セールスポイント)を入れることで、戦略が融資担当者に伝わりやすくなります。

加えて、見込み客があるようでしたら、必ず記載をしておきましょう。この後の「事業の見通し」欄の裏付けにも繋がります。

4.取引先、取り引き関係等

事業における重要な販売先、仕入れ先を記載する箇所になります。重要なポイントとなるのは「具体性」です。

創業当初は信用も少なく、取引先の記入には苦労するかもしれません。

そのため具体的に書けば書くほどプラス材料になる、ということです。

融資担当者の目線に立ってみれば、具体的に仕入れ先・販売先が明記されていて、支払いの条件も整っている。

あとは動かしていくだけの状況が分かれば、高評価につながることは容易に想像できますよね。

ただ創業当初は、販売先・仕入れ先等、具体的に決まってないケースも多いと思いますので、具体名を書くのが難しい場合は、個人や法人と書きましょう(見込み先も可)。

具体的に内容を埋めていくためにも、「取引先との契約条件を整えておくこと」「契約書や発注書など書類を整えて、証拠を作っておくこと」は心がけておきましょう。

5.従業員

創業にあたり、現在の従業員数を記載していく欄になります。※印にもありますように、3カ月以上継続して雇用する予定があれば合わせて記載してきます。

この後「8.事業の見通し」で人件費を記載する箇所がありますので、整合性が取れている必要があります。

6.借入の状況

続いて借り入れの状況欄についてです。ここでは書き漏れに注意が必要です。というのも、創業融資に限らず、融資では信用情報機関への問い合わせが行われるケースがあります。

この問い合わせで、現在あなたには借り入れがどこから、いくらあるのかが分かってしまいます。審査を有利にしようと安易に考えて、隠すことは絶対にやめましょう。

あなた自身が借り入れについて、把握しきれていない場合は、信用情報機関(CICやJICC)に問い合わせてみましょう。利用手数料1,000円で情報を取得することができます。

「携帯代を割賦で購入していて、支払いが遅れていた」など、自分でも状況を把握していないといったケースがよく見受けられます。一度調べておいて損はないでしょう。

7.必要な資金と調達方法

こちらの欄は、「設備資金」「運転資金」「調達方法」の3つを記載していきます。特に重要な項目ですので、しっかりと確認してください。

「設備資金」では、事務所費用や内装費など事業を始めるのに必要な設備を記入していきます。賃貸の敷金や、パソコン、ソフトウエアなども該当します。

「運転資金」は、設備投資以外の費用が該当します。人件費や仕入れ費用など事業運営のために必要な経費を記載していきます。おおよそ3カ月〜4カ月程度の経費を記載していくとよいでしょう。

設備資金も運転資金も、適切な金額を入れていくために、見積書をもらって証拠を取っておきましょう。融資担当者もそれぞれ相場は知っていますので、不適当な金額を入れてしまうと悪印象につながります。

次に資金の調達方法です。ここで注意するのは(調達資金=設備資金+運転資金)になるようにすることです。つまり、「事業をするのに、自己資金だけでは足りないのでこれだけ貸してください」という表になるわけです。

ちなみに、日本政策金融公庫の新創業融資制度では、自己資金は融資額の1/10以上保有していなければなりませんので注意してください。

特に一時的に口座にお金を入れておくという、いわゆる「見せ金」は絶対に行わないようにしましょう。

実際に見せ金でなんとかならないかと相談される方がいらっしゃいますが、通帳の6カ月ほど前分はチェックの対象となります。確実にバレてしまいますので、やめましょう。

8.事業の見通し

最後に事業の見通しについてです。こちらも重要な欄になります。特に事業の見通しについては上記の欄だけでは不十分です。必ず別途資料を用意するようにしましょう。それだけ重要な項目である、ということをご理解ください。

ここで作成するのは、1年分の「売り上げ計画」「費用予測」になります。

ポイントになるのは、「実現可能で、客観的な数字」であること。

売り上げ計画の場合、例えば、飲食店の売り上げ予測であれば、座席数と回転数、平均単価があれば1日の売り上げが測定できます。これに営業日数をかければ、売り上げ予測が立てられます。

売り上げ予測
例)
10席×5回転×1,000円(平均単価)=5万円

参考にする数字には、業界平均値を使用していきましょう。日本政策金融公庫のホームページに掲載されていますので、ご参考までに活用いただければと思います。

日本政策金融公庫|国民生活事業

そして最後に利益となる部分です。この利益となる部分が、毎月の返済額を下回っていると融資を受けることはできません。

その他、納税資金や個人の場合にはご自身の生活費も考慮した上で「無理なく返済ができる計画ですよ」ということを示していきましょう。

まとめ

今回は日本政策金融公庫の創業計画書を例に取り上げて、書き方・ポイントについて順序立てて解説してきました。

商品やサービスの説明、事業の見通しについては、創業計画書のフォーマットのみで伝えきるのはなかなか難しいのではないかと思います。必ず別途資料を作成しましょう。

これまで紹介してきたように、創業計画書はいかに「自分の事業を相手に理解してもらえるか」がとても重要になります。

様々な資料や情報、数字を使うため、煩雑で面倒に感じられる方も多いかもしれませんが、全ては自分の事業を応援してもらうための準備です。根気よくがんばっていきましょう。

<プロフィール>
齋藤雄史さん
税理士/公認会計士
宮城県仙台市出身。

高校卒業後、進学資金を貯めるため、新聞販売店に勤務。その後、地元の簿記専門学校に進学、東日本大震災同年の2011年公認会計士試験合格。

合格後、新日本有限責任監査法人福島事務所勤務。
法律の世界に魅せられロースクールに進学し、同時期に板橋区にて会計事務所を開業。

ITやクラウド対応を武器に顧客開拓に成功し、20代〜30代をはじめとする多くの起業家から厚い信頼を得ている。

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元記事はこちら
アントレSTYLE MAGAZINE
https://entrenet.jp/magazine/17784/