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個人事業主に労働基準法は適用する? 労働時間に制限はあるのか

個人事業主に労働基準法は適用する? 労働時間に制限はあるのか

働く人の長時間労働が問題となっています。

2015年には、大手広告代理店の女性社員が長時間労働による過労が原因で自殺し、労災認定された件が大きく取り上げられ社会問題となりました。

このような背景もあり、労働基準監督署では企業に対し長時間労働を是正するための監督指導が強化され、指導に従わない場合は労働基準法違反となって罰則が科せられます。

では、労働基準法とはどんな法律なのでしょうか?

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労働基準法とは

労働基準法は、労働者における労働条件の最低基準を定めた法律で、1947年に制定されました。

労働条件の内容は、労働時間・賃金など多岐にわたりますが、労働時間を例にとると原則は週40時間となります。

労働者保護の観点から労働基準法を下回る労働条件は無効となります。ちなみに、労働基準法9条によると、労働者とは「職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。」とあります。

簡単に言い換えると“会社に雇われて給料を受け取る者”です。

「労働基準法第32条1項」(e-GOV検索)

個人事業主に労働基準法は適用される?

では、個人事業主は労働者にあたるのでしょうか?

個人事業主の場合は、従業員としてではなく業務の委託(請負)契約を締結した上で仕事を受け、その対価は賃金ではなく報酬として支払われます。従って、労働者ではないので労働基準法の適用はありません。

しかし、実態が労働者派遣であるにも関わらず、形式として業務の委託(請負)契約を締結しているケースもあります。これを“偽装請負”と呼びます。

労働者派遣と業務委託の区別は、派遣先(発注者)と派遣元(受託会社)の労働者との間に指揮命令関係が生じているかどうかによって判断されます。

ただし、肩書きだけでは実態はどのような働き方をしているのかが明確にできません。そのため、契約の形式や契約書のタイトルなどでは判断せず、実質的な働き方で判断されます。判断の基準は以下などの要素を総合的に考慮します。

•仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無
•業務の内容及び遂行方法に対する指揮命令の有無
•勤務場所・勤務時間の指定・管理の有無
•業務用機械や器具の所有や負担関係、報酬の額など
•専属性の程度 など

それぞれ詳しく解説していきます。

「あなたの使用者はだれですか?偽装請負ってナニ?」(東京労働局)

「(1)「労働者」の定義」(独立行政法人労働政策研究・研修機構)

仕事の依頼、業務の指示等に対する諾否の自由の有無

業務委託を受けている身なのか、労働者としての身なのかを判断するにあたって判断材料となる概念は、「使用されている」といえるかどうかです。個人事業主として業務委託(請負)を正当に受けられているかどうかは、以下の2つの条件が満たされているかがポイントです。

1.仕事の依頼そのものを自身の意思で断れるか
2.仕事の依頼を受けた後の業務内容について委託者(発注者)の指示を断れるか

具体的な仕事の依頼や業務従事の指示に対して諾否の自由があるのであれば、他人に従属して労務を提供しているとはいえません。それに対して、依頼のあった仕事自体を自由に断れないような関係性があるのであれば、それは「雇用契約」であると判断されやすくなります。

指揮監督の有無

指揮監督関係において、業務委託を受けている個人事業主が業務の内容および遂行方法について業務の依頼主である発注者の具体的な指揮命令を受けていることは、基本的かつ重要なポイントです。

労働法基準法に左右されない業務委託の形式で仕事ができているのかどうかは、業務の遂行方法について個人事業主が自分で判断しているのか、仕事の遂行方法について管理されることなく自分の裁量で進められているのかがポイントです。

自分で仕事のやり方や進め方を選べず、指示監督を受けている状態の場合「雇用契約」であると判断されやすいです。発注者の命令や依頼などにより、予定害の業務に従事する場合にも、発注者による一般的指揮監督を受けているかどうかが判断材料に加えられます。

勤務場所・勤務時間の拘束性の有無

指揮監督関係の基本的な要素として、勤務場所及び勤務時間が指定されている、または管理されているかどうかがポイントになります。

労働場所及び時間の指定または管理とは、「何時間働くのか」「いつ休憩時間を取るのか」などの、時間や場所に関する判断を自分でできるかという観点です。働く時間や場所を自由に決定できないで指示命令に従って動いている場合や、拘束されている関係性がある場合には「雇用契約」であると判断されやすくなります。

なお、長時間労働を発注者の都合で強いられているようなことがあれば、雇用契約であることを認めさせた上で、残業代などを請求することも検討できます。

業務用機械の所有・実費の負担関係

パソコンや事務機器など、業務に使用する機材を誰が用意しているかという観点も重要になります。

会社から用意された機材などを使って業務を行っている場合、またはそれらの購入にかかる費用を会社が負担している場合は「雇用契約」に近づきます。機械や器具などの経費負担に限らず、交通費などの実費が会社負担である場合も「雇用契約」と判断されやすくなります。

それに対して、本人が著しく高価な機械や器具などを所有している場合には、事業経営を自らの計算に基づき行っているとして「事業者」として認められやすくなります。

一般労働者との報酬額の差異

当該企業において同様の業務に従事している場合、報酬が同様の額なのかどうかという観点も重要です。

例えば、当該企業において同じような業務内容で同様の額の報酬をもらっているとすると、実質的には他の労働者と変わりがないという解釈のもと「雇用契約」に近づきます。それに対して、当該企業において同様の業務に従事している正規従業員と比較して報酬の額が著しく高額である場合、自らの計算と危険負担のもとに事業経営を行う「事業者」への代金の支払いと考えられます。そのため、「事業者」と判断されやすくなるのです。

※危険負担とは、双務契約が成立した後に、一方の債務が債務者の責任がない事由(災害など)で目的物が滅失や損傷し、(物を引渡すという債務が)履行できなくなった場合に、そのリスクをどちらが負担するかということ

「民法改正による新制度(第4回)- 危険負担」(独立行政法人中小企業基盤整備機構)

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専属性の程度

働く側からの観点として、業務依頼を受けている企業の仕事を収入のメインにしているかどうかも、重要なポイントです。以下の条件のうちどちらかが当てはまる場合には、専属性の程度が高く、実質的に一般労働者と同じという解釈がなされるため「雇用契約」に近づきます。

・制度上または時間的余裕がないため事実上、他者の業務に従事することが制約されている
・報酬に固定給部分があったり、業務配分から事実上、固定給になっていたりするなど、生活保障的な要素が強い

そのほかにも、以下のようなポイントに当てはまるようであれば「雇用契約」に近づきます。

・採用や委託などの際の選考過程が正規従業員の採用とほとんど変わらない
・報酬について給与所得としての源泉徴収を行っている
・労働保険の適用対象である
・服務規律を適用している
・退職金制度や福利厚生を適用している など

このようにさまざまな観点から、一般労働者の待遇と比較し、それらを総合的に勘案して契約や業務提供の実態が実質的に雇用契約に基づく労務の提供と変わらないと判断された場合には、雇用形態を結んでいる「労働者」だと認められることになるのです。

「労働基準法研究会報告 (労働基準法の『労働者性』の判断基準について)」(厚生労働省)

最高裁で適用されると判例が出た「INAXメンテナンス事件」

具体的な事例がないと分かりにくいと思いますので、判断の基準として1つの目安となる判例をご紹介します。

住宅設備機器の修理補修会社(以下、A社)と、A社と業務委託契約を締結して修理業務に従事するカスタマーエンジニア(以下、CE)の労働組合(以下、B)との間の事件です。

BがA社に団体交渉を申し入れたところ、A社は「CEは個人事業主であり、労働組合法上の労働者ではない」との理由で交渉を拒否しました。

これに対し、BはA社が団体交渉を拒否することは不当労働行為にあたるとしました。

この件に関して最高裁判所は以下の理由により、CEは労働組合法上の労働者であるとの判決を出しました。

なお、労働組合法でいう“労働者”は、「職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者をいう。」とされています。これに対して労働基準法では“労働者“の定義に、使用されていることは含められておらず、賃金等の収入によって生活する者であれば、現に賃金を得ていない失業者も含まれると解釈されていますが、ほとんど同じ意味だと解釈して良いでしょう。

(1)A社が行う住宅設備機器の修理補修等業務の大部分は、約590人いるCEをライセンス制度やランキング制度の下で管理し、全国の担当地域に配置されたCEの業務日及び休日はA社が指定していた。

(2)また、業務委託契約の内容はA社が定めた「業務委託に関する覚書」により規律されており、その内容についてCE側で変更する余地はなかった。

(3)さらに、CEの報酬は、A社による個別の業務委託に応じて修理補修等を行った場合に、A社があらかじめ決定した顧客等に対する請求金額に、A社がCEにつき決定した級ごとに定めた一定率を乗じ、これに時間外手当等に相当する金額を加算する方法で支払われていた。

(4)加えて、CEは、A社から修理補修等の依頼を受けた場合、業務を直ちに遂行するものとされ、承諾拒否をする割合は1%弱であった。また、業務委託契約の存続期間は1年間でA社に異議があれば更新されないものとされていた。

(5)しかも、CEは、A社が指定した担当地域内においてその依頼に係る顧客先で修理補修等の業務を行い、原則として業務日の午前8時半から午後7時までA社から発注連絡を受け、業務終了時に所定様式のサービス報告書をA社に送付する等、作業手順等が記載された各種マニュアルに基づく業務の遂行を求められていた。また業務の際には、A社の制服を着用し名刺を携行していた。

上記の項目をまとめると、CEはA社の指定する業務遂行方法に従い、その指揮監督の下で労務の提供を行っています。

それに加えて、その業務についての場所や就業時間など、一定の拘束を受けていたことになります。

この場合、CEはA社の従業員であるとされ、労働基準法の適用を受けます。

個人事業主の場合、仕事を依頼した企業と業務の委託(請負)契約を締結する際には、将来のトラブル防止のためにも契約書の内容はよく確認しておきましょう。

「労働委員会関係裁判例データベース」(厚生労働省)

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労働基準法以外にも押さえておきたい法律

個人事業主でも労働基準法が適用されるのか解説してきましたが、労働法基準条以外にも、個人事業主として覚えておくべき法律はあります。

ここで紹介するのは「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)」と「下請代金支払遅延等防止法下請法」の2つです。個人事業主として自分の身を守るためには、法律の知識をつけて何かあった際に備えておくことが望ましいです。2つの法律について、詳しく見ていきましょう。

私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)

独占禁止法とは、正式には「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」といいます。公正かつ自由な競争を促進し、自主的な判断で事業者が自由に活動できるようにするための法律です。中小企業や個人事業主に対して大企業が自らの地位を利用するような取引がある場合、「独占禁止法」または、下請事業者に対する親事業者の不当な取り扱いを規制する「下請法」という独占禁止法の補完法が発動されます。

例えば、売り上げのほとんどをZ社との取り引きが占めている状態の個人事業主だったとします。そのとき、Z社が一方的に個人事業主に対して支払っていた対価を下げる行為は、独占禁止法または下請法違反になる可能性が極めて高いです。このように、取引先より一方的に不利な条件を突きつけられた場合、取引先に故意・過失があったかどうかを問わず、損害賠償の請求ができます。

「独占禁止法の概要」(公正取引委員会)

下請代金支払遅延等防止法(下請法)

独占禁止法の補完法である「下請法」は、正式名称を「下請代金支払遅延等防止法」といいます。親事業者の支払い遅延や買いたたきなどを禁止することで下請事業者の利益を保護し、取引の公正化を推進するための法律です。要するに、下請事業者が不利にならないように保護する法律です。

業務を請け負う立場上、個人事業主は弱くなってしまうことが多々あるものの、下請法のような法律で保護が受けられるのです。しかし、下請法のことをきちんと理解していないと、不利な条件で業務を請け負ってしまうことになりかねません。

この法律では、親事業者が、注文した物品などの受領を拒否したり、事前に取り決めていた報酬を減額したりすることなどを禁止しており、これを守っていない親事業主は下請け法違反となります。

個人事業主として今後の生計を立てていきたいのであれば、自分の身を守るための法律は理解しておいたほうが安心でしょう。

まとめ

個人事業主は基本的に労働基準法の適用はありません。従って時間無制限で働くことは可能かもしれません。しかし、働きすぎて身体と心の健康を損ねてしまう場合もあります。長い期間ベストコンディションで働くためには、労働時間を自分自身でコントロールすることが必要です。

また、個人事業主であっても労働条件によっては事業主と雇用形態を結んでいる「労働者」と変わらない場合があります。このようなケースでは例外として労働基準法の適用となることもあります。ただし、労働者として認められるには単純に契約の形式や契約書のタイトルなどで判断することは難しいです。そのため、実態としてどのような待遇のもとで働いているのかによって判断されます。個人事業主だからこそ法律を身につけて、自分の身を守れるよう備えておきましょう。

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PROFILE

ちはる

大手IT商社でプロダクトプロモーション担当を経て、 WEBコンテンツ制作会社に転職し、ライターとして所属。その後、独立し、現在はビジネス・不動産関連の記事を主に執筆。

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