飲食料品の海外輸出ビジネスにともなう適切なリスクマネジメントについて
- 2022.11.13
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日本政府は2020年4月に「農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律」施行のもと、農林水産物・食品の輸出額を2025年までに2兆円、2030年までに5兆円に増やす目標を掲げ、輸出促進のさまざまな施策を実施しています。
世界的な和食ブームや環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(TPP11)、日EU経済連携協定(EPA)発効なども追い風となり、日本の農林水産物や食品は輸出額の増加が期待されています。
こうした動きを受け、これまで日本国内のみを販売市場としていた食品を輸出する機運が高まり、貿易取引の経験がない生産者や卸売者が直接貿易にチャレンジする傾向が高まっています。
一方で農林水産物・食品は、時間の経過とともに品質が劣化したり、仕向国の輸入検疫の結果によっては輸入不許可命令が出され廃棄処分・積戻し等の措置が取られたりと、輸出にあたって特に注意が必要な商品といえます。
これから輸出にチャレンジする場合、押さえておくべきポイントをいくつかご紹介します。
輸送計画
食品を貯蔵するにあたり、最適な貯蔵条件(温度・湿度など)を維持できたとしても、品目ごとに貯蔵できる日数(貯蔵限界)には限度がありますので、輸送する生鮮青果物の貯蔵限界を踏まえた適切な輸送計画を構築することが必要です。
梱包
海上輸送で輸出された生鮮青果物に、荷崩れによる潰れやカビ、腐敗が発生する事例があります。その多くは日本国内での輸送に使用しているカートンをそのまま輸出に使用したことが原因です。
国内輸送用のカートンは強度が充分でなく、荷役中や海上輸送中の動揺や振動に耐えられない場合があります。
また、国際輸送用のカートンには通気性を確保するために小さな穴を開けることが一般的ですが、この穴がない国内輸送用のカートンを使用したためカートン内外で結露が発生し、水濡れによってカートンの強度が落ちて貨物が潰れたり、カビが発生し腐敗が進行するという事故が発生します。
予冷
予冷とは、輸送が始まる前に生鮮青果物をあらかじめ適切な温度帯に冷やしておくことをいいます。
十分な予冷を行わなかったために、生鮮青果物に品質劣化が発生する事例があります。
また、実際の輸出にあたっては、各国・地域の輸入に関する諸規制や輸出手続きについても理解が必要です。こうした情報は、JETRO(日本貿易振興機構)や農林水産省のホームページで確認することができますので、参考にするとよいでしょう。
また、農林水産省の「農林水産物・食品輸出プロジェクト(通称:GFP)」では無料で会員登録ができ、会員間での情報共有等も出来ますので、ぜひ活用してみてはいかがでしょうか?
番外編:万が一の事故をカバーする保険
これらのポイントに注意していても事故を100%防ぐことは困難です。
万が一の事故をカバーするための保険もありますのでご紹介します。
【外航貨物海上保険】
国際間を輸送される貨物は、海上・航空・陸上輸送中にさまざまな危険にさらされます。滅失や損傷などの他にも、輸送船舶の沈没・座礁、輸送用具の衝突や火災などの大事故もあります。外航貨物海上保険は、このようなさまざまな危険から生じる損害を補償する保険です。
外航貨物海上保険では、英国保険市場において作成された協会貨物約款(Institute Cargo Clauses : ICC)が国際的に普及しており、貿易条件によって船の手配・保険の手配がそれぞれ異なっていることに注意が必要です。
貿易条件 | 船の手配 | 保険の手配 |
---|---|---|
FOB | 輸入者 | 輸入者 |
CFR | 輸出者 | 輸入者 |
CIF | 輸出者 | 輸出者 |
保険手配において、フォワーダー(通関業者)が契約している包括契約にお任せしているケースも多く、海上保険の必要性や保険料をしっかりと理解しないままに勧められたものに加入しているというケースが少なくありません。
保険についてはフォワーダー任せにせず信頼できる代理店に相談することで、必要以上の補償内容の保険となることを防ぐことができ、保険料負担を軽減できるケースが多いです。
注意点として、一般的な外航貨物海上保険では、輸送中の温度変化による損害や腐敗・品質劣化は協会貨物約款(Institute Cargo Clauses : ICC)において補償対象外であることから、カバーされておりません。
中小事業者にとっては、これらのトラブルが一番の心配事であると言えます。
そこで、「食品の腐敗・品質劣化」「冷凍貨物の温度変化損害」「輸入不許可」による損害も補償される食品輸出専用の保険を開発しリリースしている保険会社もありますので検討してみることも良いでしょう。
他にも、輸出後の食中毒等にそなえる保険(海外PL保険)など、必要に応じて検討する必要があります。
慣れない商習慣のなかで安心してビジネスを行うためにも代理店に相談したうえで判断することをおすすめします。
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