個人事業主から法人になるときの手続きは何をすればいいの?

個人事業主から法人になるときの手続きは何をすればいいの?

個人事業主として事業を始め、順調に売上を出せるようになると、「法人化」というキーワードが頭にちらつくようになります。独立する以上、「株式会社○○」と名乗るのは一つのステータスになる感じがありますよね。

では、法人になるのはどうしたらよいの?と聞かれると、知っている方は多くありません。実は結構複雑です。今回は、法人になるときに、
・どんな手続きあるのか
・どれくらい費用がかかるのか
を解説していきます。

一般的に設立される会社は、株式会社・合同会社が多いので、この2パターンを紹介していきますね。(よく聞く「有限会社」は、2006年の法改正により、設立自体が不可になっていますので、今回は特に触れません)

法人化の手続き(登記)

個人事業主は税務署に開業届けを出しさえすれば手続き完了ですが、法人の場合は手間も時間もかかります。ただ、どれも外せないものばかりですので、知っておきましょう。

<法人登記のときにやること>

・法人の種類を選ぶ(株式会社・合同会社など)
・商号(会社名)を決める
※所在地の管轄法務局で、同じあるいは類似する商号(会社名)がないかを確認し、商号を決める
・法人としての定款、概要を決める
(商号・社名、所在地、発起人、取締役、取締役と監査役の有無、資本金額、会社の事業年度)
・会社の印鑑を作成する
・役員の報酬を決める
・資本金額(最初に事業用に用意したお金)の支払いをする
・登記書類の作成、申請

作成した書類を、各地方の法務局に提出することで手続きができます。

事前に決めていることもあるかと思いますので、手続きの時に新しく必要になるのは、「法人としての定款、概要を決める」「登記書類の作成・申請」などですね。このあたりは、司法書士・行政書士など専門の士業のプロの方に頼るのもありです。下でも触れますが、数万円程度で受けてくれることがほとんどです。

法務局のこちらのページ「商業・法人登記の申請手続」がわかりやすいので、ぜひ一度見てみましょう。
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/touki2.html
※法務局HP:「商業・法人登記の申請手続」

法務局の窓口に直接提出してもよいですし、今は、マイナンバーカードを利用してオンライン申請をすることもできます。
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/shogyo_online01.html
※法務局HP:「株式会社の設立登記をしたい方(オンライン申請)」

<登記が完了した後に必要な手続き>

法務局に提出して、登記が完了した後にも手続きが待っています。目的によって赴く事務所が違いますので、しっかり覚えておきましょう。

◆税務署に提出するもの
―法人設立届(法人設立後2ヵ月以内)
―青色申告の承認申請書(法人設立後3ヵ月経過、あるいは最初の事業年度終了日のいずれか早い方の前日)
―給与支払い事務所等の開設届出書(給与支払い開始の1ヵ月以内)
―源泉所得税の「納期の特例の承認」に関する申請書(特例を受ける月の前月末)

◆自治体に提出するもの
―法人設立届書(自治体によって届け先、期限が異なります)

◆年金事務所:(社員がいる場合は加入義務/設立後5日以内)
―健康保険・厚生年金保険 新規適用届

◆労働関係:(雇用者がいる場合/雇用後10日以内)
労働基準監督署
公共職業安定所

こちらも、どれもMUSTです。漏れてしまうと、後から罰則・罰金が科せられるケースもありえますので、しっかり覚えておきましょう。そして、最初は皆素人。それぞれの事務所に行けば、窓口の方がとても丁寧に対応してくれるはずです。

法人化にかかる費用

個人事業主だと開業届を出せば無料で登録ができますが、法人化は出す書類が複雑な上に費用がかかります。株式会社で登記する場合が多いと思いますので、まず株式会社から。ざっとこのあたりの費用がかかります。

株式会社設立にかかる費用

【1】実費(法定費用) 24万2000円
定款用の収入印紙代:4万円
定款の認証手数料:5万円 ※資本金×0.7%と比較して高い方
定款の謄本手数料:2000円
登録免許税:15万円

この中で収入印紙代の4万円は、電子定款にすれば無料です。ただ、電子定款には専用機器が必要ですので、業者を使わず自分で進める場合は、かかるものを思っていた方がよいでしょう。

【2】その他費用 約1万円(個人差あり)
実印作成代:5000円~
印鑑証明取得費:約300円×必要枚数
登記簿謄本発行費:約500円×必要枚数

【3】資本金
1円~ ※999万円を超えると税制面で不利になる場合あり

昔は一定の金額を入れないと株式会社は設立できませんでしたが、今は1円からでもOKです。そして、最初から1000万円以上にしてしまうと、1年目から消費税の課税事業者になってしまいますので、その点も注意しましょう。

以上、全部足すと、おおよそ25万円程度になります。
定款の作成などを司法書士さんに依頼する場合は、手数料として数万円かかります。

さらに、急いで設立しないといけない場合や、自分で対応する時間がない場合は、手続きを丸々業者に任せてしまうこともできますが、別途5万程度かかると思っていた方がよいでしょう。これら全て足すと、30万円は超える計算ですね。

自分1人でやると10万円ほど節約できますが、会社設立の経験が豊富なプロのアドバイスを受けられる機会、そして時間そのものを節約できることを考えると、十分価値があると考えている経営者が多いようです。

合同会社設立にかかる費用

次に合同会社はこちら。(株式会社は出資者は株主ですが、合同会社の出資者は社員そのものです)
費用については株式会社と異なるところだけ補足してご説明します。

【1】実費(法定費用) 10万円
定款用の収入印紙代:4万円
登録免許料:6万円 ※資本金×0.7%と比較して高い方

株式会社と同じく、収入印紙代の4万円は、電子定款にすれば無料です。ただ、電子定款には専用機器が必要ですので、業者を使わず自分で進める場合は、かかるものを思っていた方がよいでしょう。

ちなみに、合同会社は社員間の総意がとれていればよいので、公に作る定款の作成自体が不要です。

【2】その他費用 約1万円(個人差あり) ※株式会社と同じ
実印作成代:5000円~
印鑑証明取得費:約300円×必要枚数
登記簿謄本発行費:約500円×必要枚数

【3】資本金  ※株式会社と同じ
1円~ ※999万円を超えると税制面で不利になる場合あり

以上、全部足すと、おおよそ11万円程度になります。株式会社は定款を作る必要がない分、費用が安いですね。

※補足になりますが、株式会社は会社の社員以外の人からも資金を集めるため、対外向けの資料として「定款」が必要になりますが、合同会社は出資者が社員だけのため、不要になります。

法人化の手続きは何度も行うものではありませんが、一つ一つ間違えることができないものです。
一人でもできるものではありますが、できるだけ周りの経営者や専門家に相談しながら進めることをおススメいたします。