やさしいお金の専門家・横川楓先生に聞く、独立前に必要な5つの準備!

やさしいお金の専門家・横川楓先生に聞く、独立前に必要な5つの準備!

「会社をやめて独立を考えているけど、実際どんな準備をしたらいいのか、よく分からない……」。

独立・起業を検討していると、そうした悩みも少なからず生まれてくるのではないでしょうか。

今回から始まるアントレ Style Magazine新連載は、ファイナンシャルプランナー/やさしいお金の専門家・横川楓先生と学ぶ「独立するなら知っておきたいお金のこと」。

ただでさえ難しい印象のあるお金の話題。本連載ではそんな「お金と独立」にまつわる悩みやヒントやアドバイスを、横川先生に伺います。

第1回は、独立を検討する新人イラストレーター・庵(いおり)ちゃんに、横川先生がアドバイス。その様子を会話形式でお届けします!

お金のことは会社任せで、どこか苦手意識のあった庵ちゃん。果たして庵ちゃんは、無事に独立の準備を進めることができるのでしょうか?

<プロフィール>
横川楓さん
やさしいお金の専門家・経済評論家
明治大学法学部卒、その後同大学院へ進学、24歳で経営学修士(MBA)を取得。

実家は会計事務所を経営。同年代の友人たちのお金に対する意識と、将来の資産形成、所得格差、年金問題、増税など、これからの日本を担う世代に振りかかる様々なお金の問題との乖離に疑問を持ち、お金の知識の啓蒙活動を開始。

ファイナンシャルプランナー(AFP)や、マイナンバー管理アドバイザー、マネーマネジメント検定等の資格を取得する。

<聞き手プロフィール>
庵(いおり)ちゃん
イラストレーター

都内に勤める、27歳の会社員。
学生時代から絵を描くことが好きで、数年前から副業としてイラストレーターの仕事を受けるようになった。
近年は副業での収入が本業の稼ぎより多くなったことから、満を持して独立を決意。

会社員時代とは異なり、お金の管理も全て自分で行わなければならない、フリーランス。
独立する上で知っておくべきお金のことを勉強するべく、横川先生のところにやってきたのだった――!

やさしいお金の専門家・横川楓先生が解説! 独立前に必要な、5つの準備!

庵ちゃん
横川先生、初めまして。イラストレーターの庵(いおり)です!
横川さん
こちらこそ初めまして!
早速なんだけど、庵ちゃんが知りたい「お金の悩み」って、どんなことなのかな?
庵ちゃん
独立とお金にまつわること、全部です!
横川さん
今日全部を話すとなると……流石に時間がかかっちゃうから、順番にね(笑)!
庵ちゃんはこれから、会社をやめて独立をするんだよね?
庵ちゃん
はい! 今までは兼業のイラストレーターとして活動してきたんですけど、結構ちゃんと稼げるようになってきたし、これからは思い切って専業としてがんばってみようかなって!
横川さん
じゃあ今日は「独立前にやっておきたい準備」に絞って、解説していくね。1つずつ見ていきましょう!

①【税務署】開業届と、青色申告承認申請書を提出しよう!

横川さん
まず1つ目は、開業届と青色申告承認申請書を提出すること。

開業届というのは、税務署に対して「私はこれから、個人事業主(イラストレーター)として、生計を立てていきますよ!」と、意思表明をするようなもの。

これは兼業イラストレーターとして、会社員をしながら副業で仕事をする場合にも必要になってくるのだけど……。

庵ちゃん
大丈夫です! 副業でイラストの仕事を始めた時に、開業届は出しておきました!
横川さん
それなら良かった! ということは青色申告承認申請書もその時に?
庵ちゃん
はい。先輩のイラストレーターの人に「一緒に書いて出した方がいいよ」と言われたので、まとめて書いておきました!
横川さん
すごいね、ちゃんとしてる!
「開業届は書いても青色申告を出しそびれちゃった」って人も結構いるし、そもそも「青色申告って何?」っていう人もいるから。

庵ちゃん
まぁ「青色申告」がどんなモノなのかは、あんまり分かってないですけどね(笑)。
横川さん
「青色申告」を出してるってことは、所得税を決める確定申告も、毎年ちゃんとやってるってことだよね?
庵ちゃん
はい! 領収書と戦ってます!
横川さん
確定申告には「白色申告」と「青色申告」という2種類の方法があるの。

白色申告よりも青色申告の方が、特別控除や純損失の繰り越し・繰り戻しをはじめとした、いろいろな特典がつくから節税効果になるんだけど……。

庵ちゃん
トクベツコウジョにジュンソンシツ……?
横川さん
……うん。まぁ青色申告の細かい話はまた今度解説するとして、要するに庵ちゃんにとっていいことがあるよ、ってことで(笑)。

いいことがある分、青色申告は白色申告に比べていろいろやらなきゃいけないことや、管理しないといけないことがあったりするの。

確定申告書を作る際には「MFクラウド」や「freee」といったクラウド会計サービスを使うと、青色申告に対応しているから使ってみるといいと思うよ。

PCではもちろん、スマホアプリでも対応しているからどれかインストールしておくといいかも!

庵ちゃん
スマホからでもできるんですね!

早速アプリをダウンロードしてみます!

②【銀行】女性は特に、早めに事業用口座を作っておこう!

横川さん
2つ目は事業用の銀行口座を作っておくこと。

庵ちゃんのように、本業は会社員で、副業で収入がある人って意外と事業用口座を持っていない人が多いから、この際ぜひ作っておいて損はないと思うよ。

ところで庵ちゃんは結婚してるの?

庵ちゃん
……絶賛彼氏募集中ですっ!
横川さん
ならなおさら、今のうちに口座を作っておくといいかも!

庵ちゃんみたいなイラストレーターなら「ペンネーム」という文化もあるだろうし、開業届を出すときにペンネームを屋号として提出しているよね。

女性は特に結婚して苗字が変わることがあるから、屋号で作った事業用口座があるとすごく便利だよ。

もちろん結婚してから苗字が変わった後で口座を作ってもいいのだけど、苗字が変わると口座の名義名を変える必要もあるし、取引先にとっても屋号の事業用口座があった方が分かりやすいはず。

庵ちゃん
分かりました! どこの銀行がいい、とかありますか?
横川さん
具体的に「どこの銀行にした方がいい!」とかは特にないんだけど、ネットバンクとかは比較的審査も通りやすいし、スマホ1つで完結できるから便利かな。

「いざという時、窓口があった方が安心」という人は、職場の近くのメガバンクや家の近くに都市銀行の支店があれば、そこでもいいと思うよ!

庵ちゃん
職場を辞めたら自宅で仕事をすることが多くなるので、家の近くの銀行の口座を開設してみようと思います!

③【カード会社】事業用クレジットカードは、必ず作っておこう!

庵ちゃん
クレジットカードなら1枚、普段使っているのがあるんですけど、新しいのを作った方がいいんですか?
横川さん
これもさっきの銀行口座と同じで、事業用のものを1枚用意しておいた方がいいかな。

特にクレジットカードは会社員時代に作っておかないと審査が通りづらくなるから、会社を辞める前に必ず手続きをしておいた方がいいよ。

庵ちゃん
わ、分かりました! これは早めに準備しておきます!
横川さん
事業用とプライベート用でクレジットカードを使い分けて、事業用の方をクラウド会計サービスに紐付けておくと、確定申告の時も楽になるからそれも忘れずにね!

④【役所】国民年金への切り替えと、国民健康保険への加入はマスト!

横川さん
4つ目は、準備というよりは実際に会社を退職してから行うのだけど、「年金」と「健康保険」の手続きをしないといけないの。

年金は、今までは会社の「厚生年金」(公務員は共済年金)に加入していたけれど、これからは「国民年金」に切り替えて、健康保険はこれから「国民健康保険」へと切り替える。

庵ちゃん
なんか、大変そうですね……。
横川さん
手続き自体はそれほど難しくないんだけど、名前を覚えるのが大変かもね(笑)。

会社員時代は、庵ちゃんの代わりに会社がどちらの手続きも行っていてくれたけど、独立したからには、全部自分でやらないといけないから最低限は覚えておこう。

会社を退職したらなるべく、早めに手続きしておくといいと思うよ。

⑤【番外編】なるべく貯金を作っておこう!

庵ちゃん
ちょ、貯金……!
横川さん
もう独立することが決まってる庵ちゃんにとっては、これはもう今更かもしれないけれど……。事業で何が起こるか分からないから、すぐに使えるお金はなるべく多めに手元に準備しておこう。

また業種にもよるけど、借り入れや融資をアテにした資金繰りは、最初のうちは特におすすめしないかな。

どんな業種でも基本的には小さく始めて、そのあとコツコツと大きくしておくやり方が理想だと思う。

その点、副業から始めて独立をする庵ちゃんは、バッチリとシミュレーションできているんじゃないかな?

「知らなかった」じゃ済まされないことも? 独立するなら知っておくべきお金のこと!

庵ちゃん
ありがとうございました! 会社を辞める前に準備するべきところがだいぶ分かった気がします!
横川さん
それは良かった!
でも今日お話したのは、本当に最低限のやるべき手続きばかり。

独立してから「これから気をつけるべきこと」や「これは知っておいた方がいいこと」なんかを含めたら、実はもーっとたくさんあるの。

会社員以上に、フリーランスはお金にシビアにならないといけない場面がたくさんあるし「知らなかった」じゃ済まされないこともあるから。

次回以降はもっと踏み込んだ内容を解説していくから、一緒に勉強していきましょう!

構成・文・撮影=内藤 祐介
イラスト=ram

元記事はこちら
アントレSTYLE MAGAZINE
https://entrenet.jp/magazine/28171/