開業届の書き方・出し方は?入手方法から提出期限まで徹底解説!
- 2022.05.14
- 会計・経理

開業届とは、個人事業主としてビジネスを始めるときに、必ず出さなくてはならない書類です。しかし、ビジネスに集中していると、開業届を書くのは後回しになりがちなものです。
本記事では、開業届の書き方や提出期限・方法を詳しく解説します。
開業届を出す前に確認すべきことと、副業の場合はどうすればいいのかについても、お伝えします。
- 1. 開業届とは?
- 2. 開業届の書き方
- 2.1. 【開業届を書く前に】職業選びは要注意!
- 2.2. 開業届の各項目の書き方
- 2.2.1. ①税務署名、提出日
- 2.2.2. ② 納税地、上記以外の住所地・事業所等
- 2.2.3. ③ 氏名、生年月日
- 2.2.4. ④ 個人番号
- 2.2.5. ⑤ 職業
- 2.2.6. ⑥ 屋号
- 2.2.7. ⑦ 届出の区分
- 2.2.8. ⑧ 所得の種類
- 2.2.9. ⑨ 開業・廃業等日
- 2.2.10. ⑩ 事業所等を新増設、移転、廃止した場合
- 2.2.11. ⑪ 廃業の事由が法人の設立に伴うものである場合
- 2.2.12. ⑫ 開業・廃業に伴う届出書の提出の有無
- 2.2.13. ⑬ 事業の概要
- 2.2.14. ⑭ 給与等の支払の状況
- 2.2.15. ⑮ 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書の提出の有無
- 2.2.16. ⑯ 給与支払を開始する年月日
- 3. 開業届の出し方
- 4. 開業届を出す前に確認すること
- 5. 開業届の書き方は簡単!早めに提出しよう
開業届とは?
開業届とは、個人事業主になるために提出する書類のことです。正式名称は『個人事業の開業・廃業等届出書』です。
あくまでも『個人事業主になるための書類』であり、法人設立の際に提出する書類とは異なります。
開業届は副業でも必要?
会社から独立し、個人事業主となる場合は、開業届を提出することになります。では、会社に勤めながら副業として事業を始める場合も、開業届を出すべきなのでしょうか。
副業を始める場合も、開業届は出すべきです。まず、開業届には提出義務があります。事業を始める以上、開業届は出さなければなりません。
また開業届を出せば、副業にかかるお金を経費にしたり、青色申告の控除を利用したりできるようになります。
「そもそもどんな仕事があるのか?」副業についてまず調べたい方はこちらの記事を読んでみてください。
開業届の書き方
開業届と聞くと、複雑な書き方で、手続きも難しいと思う人は多いでしょう。しかし、開業届の書き方はいたってシンプルです。手続きも、1時間以内で終わるほど簡単です。
【開業届を書く前に】職業選びは要注意!
開業届には、どんなビジネスをしているのかを書く『職業欄』があります。そして事業にかかる税率は、職業によって異なります。開業届を書く際は、職業を正確に記入しましょう。
職業ごとの税率は、各都道府県のWebページに記載されています。『個人事業税 〇〇県』と検索してみましょう。
開業届の各項目の書き方
職業選びの重要性を理解したら、いよいよ実際に、開業届を書いてみましょう。
ここからは、開業届の各項目の書き方について、詳しくお伝えします。
①税務署名、提出日
『税務署長』と書かれた欄には、開業届を提出する税務署名を書きます。基本的には、所轄税務署の名前を書くことになります。
提出日はそのまま、開業届を提出する日付です。開業してから1ヵ月以内に出すのが好ましいですが、過ぎても罰則はありません。
② 納税地、上記以外の住所地・事業所等
納税地とは、納税をする場所のことです。『住所地』『居住地』『事業所等』から納税地にしたい場所を選び、住所を書きます。電話番号は、固定電話でも携帯電話でも構いません。
住所地:自宅のことです。基本的には自宅が納税地となります。
居住地:海外に自宅が、日本に居住地がある場合に選択し、日本の住所を記入します。
事業所等:事務所や店舗を納税地としたい場合に選択します。
『上記以外の住所地・事業所等』は、納税地を自宅以外にする場合や、自宅以外に事業所がある場合に記入します。
③ 氏名、生年月日
氏名横の押印は、個人印でも屋号印でも問題ありません。ただし、屋号印を押す場合でも、氏名を記入してください。
④ 個人番号
マイナンバーのことです。マイナンバーカードに記載の番号を書きましょう。
⑤ 職業
どんな職業で開業するのかを書きます。所定の書き方はなく、どんな仕事をしているのかがわかるように書きましょう。税率は職業によって決まります。
⑥ 屋号
屋号とは、個人事業主としての会社名のようなものです。店舗名や事務所名を屋号にする場合が多いですが、自由に決めることができます。氏名をそのまま屋号にしても構いませんし、屋号がなくても構いません。
⑦ 届出の区分
新しく開業する場合、開業に印をつけるだけで構いません。事業の引き継ぎの場合は、住所と氏名も記入します。
⑧ 所得の種類
自分の所得に当てはまるものを選びます。独立・開業の場合は、基本的には事業所得を選びます。
不動産所得:不動産の貸付による所得
山林所得:山林の伐採や譲渡による所得
事業(農業)所得:不動産所得、山林所得以外の所得
⑨ 開業・廃業等日
開業した日を記入します。実際に仕事を始めた日でも、開業届を出す日でも構いません。
⑩ 事業所等を新増設、移転、廃止した場合
新しく独立・開業した場合は不要です。
個人事業主が事務所を移転した場合に書く欄です。事務所の移転や、事務所=自宅の場合に引越しをしたときなどに書きます。
⑪ 廃業の事由が法人の設立に伴うものである場合
新しく独立・開業した場合は不要です。
個人事業主をやめて法人を設立する、いわゆる『法人成り』のときに書く欄です。設立した法人の名称・代表者名・納税地・設立登記日を記入します。
なお、最初から法人を設立する場合は、法人設立届を提出します。開業届の提出は必要ありません。
⑫ 開業・廃業に伴う届出書の提出の有無
開業に伴い、青色申告や消費税に関する書類を提出する場合に印を入れます。
⑬ 事業の概要
職業欄に書いた仕事として、具体的にどんな事業をしているのかを書く欄です。
例えば職業が『飲食業』であれば「飲食店の経営」「弁当の調理・宅配」のように書きます。
⑭ 給与等の支払の状況
従業員を雇用し、給与を支払う場合に記入します。それぞれの項目には、次のことを書きます。
専従者:家族従業員のこと
使用人:家族以外の従業員のこと
従業員数:専従者と使用人は分けて記載
給与の定め方:月給や日給などの給与の支払い方法を記載。ボーナスがある場合は『〇給+ボーナス』となります
税額の有無:源泉徴収の有無。基本的には『有』になります
⑮ 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書の提出の有無
従業員数10人未満の場合に適用できる特例について、申請書の提出有無を書きます。給与を支払う人数が常時10人未満の場合は、申請することで、源泉徴収勢の支払いを年2回にまとめられます。
⑯ 給与支払を開始する年月日
従業員がいる場合、いつから給与を支払い始めるのかを書きます。給与支払いがすでに始まっている場合は、支払い開始日を記入しましょう。
開業届の出し方
開業届は、いつまでに、どこに出せばいいのでしょうか。次からは、開業届の提出期限や入手方法、提出方法をお伝えします。
開業1ヵ月以内に提出する
基本的には、開業日から1ヵ月以内に開業届を出すことになっていますが、過ぎていても罰則はありません。ただし、開業した年に青色申告をする場合は、開業日から2ヵ月以内に開業届を提出しなくてはなりません。
開業届を手に入れる
開業届は、所轄税務署か、国税庁のWebから手に入れます。
所轄税務署とは、簡単にいえば最寄の税務署のことです。ただし、所轄以外の税務署から開業届を手に入れても、問題はありません。税務署がどこにあるのかわからない方は、こちらのリンクから調べられます。
税務署の所在地などを知りたい方│国税庁
開業届は、国税庁のWebサイトからも入手できます。ページ中ほどにある『個人事業の開業・廃業等届出書(提出用・控用)(PDF/865KB)』からPDFをダウンロード、印刷して使います。ダウンロードした開業届に各項目を入力し、印刷することも可能です。
[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続│国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/04.htm
開業届を提出する
開業届の提出先は、基本的に所轄税務署です。提出する方法は3つあります。
【税務署に持参する場合】
所轄税務署に開業届を持参し、提出する方法です。所轄税務署に行き、その場で開業届を記入・提出することもできます。提出時には『印鑑』『マイナンバーのわかるもの』『本人確認書類(マイナンバーカードがある場合は不要)』が必要です。
【税務署に郵送する場合】
所轄税務署に開業届を郵送し、提出する方法です。郵送時には『マイナンバーがわかる書類の写し』『本人確認書類の写し』『控え返送用の切手』を同封しましょう。
【税務署の時間外収受箱に投函する場合】
所轄税務署の時間外収受箱に投函し、提出する方法です。郵送時と同じように『マイナンバーがわかる書類の写し』『本人確認書類の写し』『控え返送用の切手』を同封しましょう。
開業届の控えは必ず保管する
開業届の控えは、次のようなときに必要になります。必ず保管しておきましょう。
・事業用口座を開設するとき
・仕事用のクレジットカードを作るとき
・個人事業主としての契約を結ぶとき
個人事業主は、会社員や法人と比べて信用力に欠け、クレジットカードの審査に通りづらいといわれています。そんなときは開業届の控えを提出することで、審査が通る確率を少し高められます。
開業届を出す前に確認すること
開業届の書き方・出し方が分かれば、いつでも独立・開業できます。しかし、開業届を出す前に、確認しておきたい『2つのこと』があります。
失業手当をもらっていないか?
開業届を出す前に、失業手当をもらっていないか確認しましょう。
失業手当は、雇用保険に入っていた会社員が、失業したときにもらえる手当のことです。開業届を出せば、当然『失業状態』ではなくなります。失業手当がもらえなくなるということを覚えておきましょう。
配偶者や家族と扶養関係になっていないか?
開業届を出す前に、配偶者の扶養に入っていないか、配偶者を扶養に入れていないかを確認しましょう。
基本的に、配偶者の扶養から外れるのは「年間所得130万円を超えた場合」です。しかし、会社(健康保険組合)によっては所得にかかわらず、個人事業主の配偶者は扶養には入れないと定めていることもあります。
また、個人事業主は配偶者を扶養に入れることはできません。個人事業主は社会保険ではなく、国民健康保険に加入することになるからです。会社を辞め、開業届を出してからでは、配偶者を再度扶養に入れることはできないので気をつけましょう。
開業届の書き方は簡単!早めに提出しよう
独立・開業する場合でも、副業を始める場合でも、開業届の提出は欠かせません。経費や控除の申告も、開業届を出していなければできません。開業届は必ず出しましょう。
開業届を目の前にすると、各項目に難しそうな言葉が並び、書くのが億劫になるかもしれません。しかし、実際に書き出してみれば、全く難しくないとわかるでしょう。本記事を見ながら、項目を1つずつ埋めていきましょう。
開業届を出すことの具体的なメリットや独立・開業後の節税対策はどのようにすればいいのかを知りたい方は、こちらの記事もぜひお読みください。
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赤塚 元基
SaaSなどのIT系、投資やベンチャー企業の動向、オウンドメディアなどビジネス系を主に執筆。
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