転職で住民税の負担は重くなる?軽くなる?ケースごとに解説

転職で住民税の負担は重くなる?軽くなる?ケースごとに解説

転職する際に見落としがちな手続きの一つに『住民税の支払い』があります。転職するタイミングによって『住民税の額が変わるケース』や『自分で払う必要があるケース』など様々な状況になることが考えられます。思わぬ出費となり支払いに困ることになったり、手続きを誤って支払いが滞ってしまったりすることがないよう、簡単にでもよいので、住民税の仕組みを把握しておくことが大切です。
本記事では、転職と住民税に関してケースごとに解説していくので、ぜひ参考にしてください。

住民税の基礎知識

そもそも住民税とは、どのようなものなのでしょうか。また、住民税は大体いくらなのかなど『住民税の基礎知識』について解説していきます。

そもそも、住民税とは?

住民税は、市町村民税(東京23区の場合は特別区民税)と道府県民税(東京都の場合は都民税)を合わせたものです。所得税は国に納めますが、住民税は『その年の1月1日に居住している』地方自治体に納めることになります。住民税の税率は地域によって異なります。

給与から毎月天引きされているとはいえ、給与明細に記載されている額をみたら意外に高額で「何に使っているのだろうか」と気になる方もいるのではないでしょうか。そんな住民税ですが、主に行政サービスを維持するために使用されます。

住民税の計算方法

住民税の計算方法につきまして、ここでざっくりと紹介します。住民税は以下のように計算されています。

所得割額 + 均等割額 = 住民税

所得割額とは、前年の所得に応じて計算される税額のことを指します。おおよそ、前年の所得の10%となっているため、所得が高ければ高いほど、税金も高額になります。

一方の均等割額は、広い範囲の人に負担を求めることが目的であるため、税額が一律5,000円(市町村民税の3,500円+道府県民税1,500円)となっています。※令和5年度まで

住民税の納付方法

住民税の納付方法は、特別徴収と普通徴収の2通りあり、納付の方法が大きく異なります。会社員の方は、基本的に特別徴収で納付していると考えてよいでしょう。転職の際に気を付けたい点は、転職先が決まっていない場合は普通徴収になる可能性があることです。ここでは、特別徴収と普通徴収の違いについて解説するので、転職を考えている方は確認しておきましょう。

特別徴収

特別徴収とは、給与所得者であるが個人が納税する代わりに、給与を支払う企業が自治体に住民税を納め、代わりに毎月給与所得から特別徴収(天引き)される仕組みです。会社員は、基本的には特別徴収にあたるため、給与から住民税が天引きされていることを確認したら、住民税に関してはそこまで気にかける必要はありません。

普通徴収

普通徴収とは、個人が自治体に直接住民税を納めることをいいます。特別徴収と異なり、6月に一括で納税するか、1年を4分割して納税することになるため、一度に納税する額は大きくなります。普通徴収は、基本的には個人事業主や給与所得を得ていない人などが納税する方法です。

転職先が決まっていない場合、住民税はどうなる?

転職活動している際、転職先が決まっていない状態で退職する方もいると思います。転職先が決まっていない場合の住民税はどうなるのでしょうか。実は、退職するタイミングによって納税の額や方法は変わってきます。ここでは、1~5月に退職する場合と6~12月に退職する場合について解説していくので、しっかり頭にいれて退職するタイミングを考えましょう。

1~5月の間に退職する場合

1~5月に退職する場合は、退職する年度分の残りの住民税は最後に支払われる給与もしくは退職金一時金から一括で特別徴収(天引き)されます。そのため、最後の給与をあてにして転職活動する予定の方は、予想よりも給与の振込額が減ることになるので注意が必要です。
特に1月や2月の早い段階で退職してしまうと、住民税の特別徴収額も大きくなります。特別徴収額が給与額を上回ってしまうと、普通徴収に切り替えられるため、その点にも注意が必要です。資金が十分でない場合は、転職活動の予定と退職のタイミングのバランスを考えましょう。

6~12月の間に退職する場合

6~12月の間に退職する場合は、退職月の住民税までは特別徴収ですが、それ以降の住民税は普通徴収に切り替わります。自治体から納付書が郵送されますので、納付書に記載されている期日までに納税するようにしましょう。

転職先が決まっている場合に必要な『住民税の手続き』

転職先が決まっている場合に必要な住民税の手続きについて解説します。転職先でも特別徴収で納付したい方が多いと思います。その場合は、転職前の会社と、転職先の会社で必要な手続きがあるので、忘れないように行いましょう。

1.転職前の会社に『給与所得者異動届出書』をもらう

まず必要なことは、退職予定の会社に給与所得者異動届出書の作成を依頼することです。給与所得者異動届出書を作成してもらったら、次のステップに進みましょう。

なお『給与所得者異動届出書』の名称は、各自治体により呼び名が異なります。

2.転職先の会社で、特別徴収の手続きをする

次に、退職した会社に作成してもらった『給与所得者異動届出書』を転職先の会社に提出し、転職先の会社から自治体に提出してもらいましょう。提出が完了すると、引き続き特別徴収により住民税を納付することになります。

ここで注意しておくべき点は、給与所得者異動届出書は「退職日の翌月10日まで」に自治体に提出する必要があるという点です。期限は必ず守るようにしましょう。

転職時に気を付けたい、住民税のアレコレ

以上、転職と住民税について解説してきましたが、その他にも転職時に気を付けたいケースを以下の3つにまとめました。

・転職先での収入が転職前の収入より下がるケース
・転職時に手続きをしなかったケース
・転職ではなく独立するケース

ここでは、この3つについて解説していくので、必ず頭にいれておきましょう。

収入ダウンで、住民税の負担が重くなることも

まず注意すべきケースは「転職先での収入が転職前の収入より下がる」ケースです。

例えば、転職で新しい業界などに挑戦することになると、収入が減少するケースがあると思います。ここで直面する問題として「収入は減少しているにも関わらず高額な住民税を納税する必要がある」ということです。住民税は前年の所得から算出されているため、転職で収入が変わったとしても、下がった年収が反映されるのは翌年になるため、こういったギャップが生まれることになります。

また住民税の減免措置は、各自治体によって異なりますが『生活に困窮するほど所得が下がった場合』など厳しい条件を設けていることが多いため、転職で収入が減ることが分かっている方は、必ず転職後の住民税の負担も考えて、資金を準備しておきましょう。

手続きをしないと、普通徴収に切り替わる

2点目に注意すべきケースは「転職時に手続きをしなかった」ケースです。この場合、特別徴収から普通徴収に切り替わってしまうため、タイミングによっては3か月分の住民税を一括で支払う必要があります。

普通徴収でも問題ない方も多いとは思いますが、自分で納税する手間や手続き漏れのリスクなどを考えると、特別徴収への切り替えを行っておいた方がよいでしょう。なるべく手続きを行うことをおすすめします。

転職ではなく、独立する場合は?

最後に「転職ではなく独立する」ケースの注意点について解説します。独立する場合は、特別徴収という選択肢がなくなり、普通徴収になります。独立初期は収入が安定しないことも多いため、前年の所得が多い方は特に注意が必要です。先ほども言及しましたが、住民税の減免措置は『生活に困窮するほど所得が下がった場合』など厳しい条件を設けていることが多いため、独立を予定している方は、必ず金銭的に余裕を残して独立するようにしましょう。

転職を決める前に、住民税の『負担』を見つめ直そう

ここまで転職と住民税に関して、ケース別に解説してきました。上述した通り、ケースによって住民税の納付方法や納付額は大きく変わってきます。

特に注意すべき点は、転職前後で収入が変わるケースや、独立するケースです。転職で収入が増える場合は、(その年に限って)住民税の負担は収入と比較して軽くなるので、そこまで気に留める必要はないと思います。しかし、転職で収入が減ってしまう場合は、収入に対する住民税の比率が高くなってしまうため、あらかじめ想定しておくことが大切です。

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PROFILE

TOM

ベンチャー企業のシステムエンジニアから独立し、フリーランスエンジニア兼Webライターとして活動中。ライティング業は、M&Aなどビジネス系の記事を中心に執筆。
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