総開業資金の1/10を自己資金で賄えると、融資がおりるって?

総開業資金の1/10を自己資金で賄えると、融資がおりるって?

アントレ独立おたすけサービスに来る資金調達相談の中に融資の相談もございますが、
その中には「自己資金の10倍融資で借りられるんでしょ?」と言われる方もいらっしゃいます。

その背景は、日本政策金融公庫の新創業融資制度のこちらかと思います。

公庫制度

たしかにバッチリ書いていますね。

そしてこの制度は2022年3月時点の公庫さんのHPに明記されているので、100%確かな情報です。

ただ1/10自己資金があるからといって融資がおりるのか?

このあたりを一緒に考えたいと思います。

1/10持っていることは「十分条件」ではないことはたしか


大前提、融資の審査内容は金融機関のトップシークレットですから、
審査基準が完全に明らかになることはありえません。

だから、「○○なら大丈夫」と言う方がいれば、
それは経験則から来る自信、もしくは勘違いだと思ってください。

ただ一つ言えることは、「自己資金が開業資金総額の1/10以上あること」は、
融資申請するための最低基準であるということ。

大学入試の共通一次にある足切りと同じようなものとお考えください。

1/10に満たなければそもそも審査することもなくNG決定ということです。

この意味からも、「1/10あれば通る」ということではないことをお分かりいただけるでしょう。

最低ラインを越えていれば後は個別判断。ただ、大きく借りるとどういうことになるのかは知っておこう


じゃあいくらなら融資を受けられるのか?

というのは誰しも気になることだと思います。

知りたいですよね。

ただ、私達からよく伝えているのは、「借りられるのか?」を金融機関に問いかける前に、
「返せるの?」を自分に問いかける方が先です。

講演などでよく話す内容を例に挙げましょう。

◆総開業資金が1000万円。自己資金500万円・融資で500万円

ちょうど半々ですね。

この場合はどういう返済になっていくか計算してみましょう。

まず設備資金の場合は返済期間が最長7年間であることが多いので、年あたり約70万円。

ということは月に約6万円返済すればいいことになります。

そして、利益を出すと当然税金を取られます。

ざっくり営業利益の3割程を税金で持っていかれるとすると、
営業利益ベースで毎月9万円の黒字を7年間維持することによって、
500万円+利息の返済できることになります。

◆総開業資金が1000万円。自己資金100万円・融資で900万円

ではこの場合はどうでしょうか?

全く同じ商売をやると考えた時、7年間で900万円ですから、
年あたり130万円の返済が求められるので、月あたりは11万円になります。

同じように、ざっくり営業利益の3割程を税金で持っていかれるとすると、
営業利益ベースでなんと15万円の営業利益を7年間出し続けることが必要になるのです。

そうです。

同じ商売で同じ利益を出しているのに、返済金額はかたや月9万円。

もう一方は15万円。

この差が、自己資金で多く賄うか、最小にするかの差なのです。

金融機関は利息とともに7年間返し続けてもらえる人にお金を貸すわけですから、
1/10しか自己資金を持たない人は、
足切りをクリアした人の中で一番不利な立場に置かれるのは致し方ないことです。

ここから、頑張って作る事業計画書の個別判断により、最終融資可否がわかります。

事業計画書には上に書いたような融資の返済計画も明記します。

事業で出る売上とかかるコスト、そして利益を算出し、
さらには生活費を差し引いても融資を返せる算段があることを示していくことが求められます。

1/10でも審査はしてもらえますが、
この「貸したお金を返してもらえるか」ということに明確に回答することが求められますので、
それも込でチャレンジしましょう。

もちろん、利益が出やすいモデルであれば検討はしてくれますので自信を持つべきところは持って臨みましょう!