【事業融資の落とし穴①】念のため余分に借りておく、はありえない。その理由は?

【事業融資の落とし穴①】念のため余分に借りておく、はありえない。その理由は?

数回にわたり、事業融資の進め方・気を付けるべきポイントについて書かせていただきました。もう一点是非、知っていただきたいことがあるので、追加で解説いたします!

創業融資の相談を受けるときに、「たぶん500万円くらいで始められるけど、余裕をもって、200万円くらい多めに借りておきたいんです」と言われることがあります。

色々な事例がありますので一概にはいえませんが、原則、融資は体裁上、「とりあえず多めに借りておく」ということはできない、と思っておいた方がよいと思います。
それはどういうことか、詳しく解説していきます。

 

「何に使うか明確に分かっている金額」だから融資判断ができる

前の記事で、「お見積書がない設備資金は融資がおりない」と説明したことがありますが、考え方は近いです。

金融機関が融資を出すか否かを判断するときは、「それは創業に不可欠な金額かどうか?」を見極めます。
つまり、「本当に必要なら融資を考えますし、必要ないなら出さない」と考えます。ここに、前にもお見せした日本政策金融公庫の創業計画書の「資金使途」の欄があります。

 

 

ここには、事業を始めるのに必要なものと金額を書きます。設備資金のところはお見積書の添付が必須です。
そして、運転資金欄には、人件費・広告宣伝費・食材原価など、事業スタート後の運営継続に必要な支出の項目が入りますが、原則こちらはお見積書は必要ありません。

多めに借りたい人の多くは、「運転資金用に多く借りておこう」と考えるものです。

しかし、甘く考えられがちですが、お見積書が不要だからといって、いたずらに多く金額を書いても大丈夫、と考えるのは間違っています。
相場と乖離がある費用は、悪目立ちして不審に思われてしまう可能性があります。

金融機関には日々、無数の事業融資の申請が来ており、目はとても肥えています。
「このビジネスの人件費なら、〇〇円くらいかな」という相場感を理解しているものです。余分に借りたい気持ちは、見透かされてしまうと思っていた方がいいでしょう。(気持ちはわかってくれると思いますが)

 

慎重になるのは良いこと。運転資金を多く確保しておきたいなら、単月黒字までの期間を長く見立てておきましょう

とはいえ、運転資金は多く確保しておくことに越したことはありません。

金融機関も、決してお金を貸したくない訳ではありません。
「何に使うか分からないお金は貸せない」だけなのです。

仮に200万円余分に借りておきたいのであれば、「その200万円分を何に使うのか」が具体的に計画書に記されていれば、十分検討に値します。

例えば、1ヶ月で人件費で3名分で60万円・家賃で20万円・広告宣伝費で20万円かかる場合。
「2ヶ月分の費用を運転資金として見込んでおき、何か想定外の事情があって単月黒字が2ヶ月間遅れたとしても事業継続ができるように、200万円借りておきたいんです」と説明できるようにすればいいのです。事業計画書に、月々の経費については書いてあるはずので、筋は通るはずです。

金融機関は、慎重に着実に計画を立てる方こそ、事業成功の可能性が高いと思っているはずなので、融資が通る可能性はむしろ上がってくるでしょう。

 

私達の元に相談を頂く場合も「〇〇円くらい余分に借りておきたい」というご要望を聞いた時は、上の内容を必ず伝えています。
「余分に借りれたって言ってた人がいましたよ」と言われることもたまにありますが、それは、その方がきちんと資金の使い途を考え、計画書に具体的に記載されていたにすぎません。

私達としても、慎重に考え、多めに運転資金を見積もっていく考え方は大賛成ですので、是非一緒に「使い途」まで具体的に考えていき、着実に事業を続けていける資金計画を立てていきましょう!