トップが語る!「フランチャイズ成功の奥義」

トップが語る!「フランチャイズ成功の奥義」

とり鉄

飲食店経営は、志だけではダメ。質実剛健でなくてはなりません

株式会社とり鉄 代表取締役社長 小林 剛氏
外食チェーンの勢力図が変わった。新業態を次々と設立していた会社が、資金調達のために優良事業部を売却したからだ。そんな事業部の一つだった「とり鉄」。新体制になってからも業績好調の理由とは。
かかわる人すべての人生を豊かにしたい

「とり鉄」ブランドは、(株)タスコシステムグループの事業部として生まれました。今年で設立9年目になりますが、大きな動きとしては7年目の事業部分割でしょう。一昨年7月、(株)タスコシステムグループから分社化され、その3カ月後に株式会社アスラポート・ダイニンググループへ株式譲渡されました。

その際、再出発の意味を込めて、経営理念を見直したんですね。「愛を持って世の中に人財活性の場を創造する。かかわるすべての人たちの自己実現のために」というのが新しい理念です。

「かかわるすべて」というのは、直営店スタッフはもとより、加盟店オーナー、その家族、従業員も含まれます。全員の人生が豊かになるような会社にしていきたい。これが会社経営の大前提となっています。

「とり鉄」との出合いは、第1号店のアルバイト

実は私は、「とり鉄」の第1号店にアルバイトとして入社しました。ですから、このブランドにはひとかたならぬ愛情を持っています。

タスコシステムの経営が厳しくなり、「とり鉄」をはじめいくつかの事業部が他社に売却されることになった時、迷わず「とり鉄」についていく決心をしたのもその強い愛情からです。

心身のすべてをかけて、このブランドと従業員を守り抜こう。「とり鉄」とともに会社を移る時、そう決意したんですね。経営理念に掲げた言葉には、こういう背景もあるんです。

複数ブランドを持つグループ会社ならではの強みも

「ヒエやアワを食べなくてはならない時は、一緒に食べてください。でも、ステーキが食べられるようになった時は、必ず一緒に食べましょう」。私たちは、加盟店オーナーにそうお願いをしています。「本部だけが儲かればいい、力のない加盟店はつぶれてもしょうがない」という考え方をするつもりは毛頭ありません。実際、資金面でも人材面でもできる限りサポートをしているんですよ。

例えば、出店前の研修。多くのブランドを持つグループ会社の強みとして、開業後に起こりがちなトラブルや思いがけない失敗などへの対応策を事前に提供します。ですから、業界未経験の方にも安心して開業していただけるんです。

また、熱い思いがあっても資金調達が難しいオーナーに対しては、資金面での補助も柔軟に対応しています。

その他、スーパーバイザーが月1回以上訪問し、収益改善のアドバイスや資金援助の相談、人材が不足しがちな時期のオペレーションなど、出店後の体制つくりにも素早く対応できるように努力をしています。

大きく儲けるよりは、着実に長く続く経営がモットー

昨年からの金融不安で、外食チェーンは厳しい状況に置かれています。しかしながら当社は、確実に利益を出している。それには理由があります。

まずは、低い価格設定。「とり鉄」の主な客層は、20代前半〜30代前半の若い人たちですから、客単価は2800円に設定しています。これは業界内でもかなり安い価格帯だといえるでしょう。

なぜ、こんな価格設定が可能なのか。それは、店舗を「ターミナル立地、オフィス立地、ロードサイド、商店街」と4つのカテゴリーに分け、立地特性に合う運営計画を立てているからです。カテゴリー別にメニュー選定をしていくことで、材料の無駄を省き、ローコストを実現しているというわけです。

次に比較的小さい店舗が多いということ。「とり鉄」の平均店舗面積は、30坪です。広すぎると、店のスタッフを確保しづらい繁忙期に人手が足りなくなり、サービスの低下にもなりかねません。

当社は、「ひとこと、ふたこと多いサービス」をモットーに、サービス面での充実を図ってます。「S1サーバー・グランプリ」(NPO法人繁盛店への道が主催)というクレーム対応や突発的な要望に対する顧客サービスを競う大会に、全店舗がエントリーしているのですが、昨年は浜松町店の店長が関東でのグランプリをいただきました。こういった大会に積極的に参加することは、サービス向上に大いに役立つと考えています。自分のサービスを客観的にとらえることができますから、ひとりよがりのサービスが減っていくんです。

なぜ、当社がここまでサービスにこだわるのか。それは、このことが社会的意義につながると考えているからなんです。低単価でもQSC(クオリティ、サービス、清潔さ)を充実させることで、「安かろう、悪かろう」という外食産業に持たれがちなイメージを払しょくしていく。それが、私たちの使命だと考えています。

新生FCに入るメリットは、一緒に成長できること

加盟店オーナーで成功される人は、信念と大きな志を持っている人ですね。「思いは手法の上流にある」という言葉があります。どんなテクニックよりも思いが物事を左右するということです。

あとは、大胆さと繊細さを兼ね備えた経営ができる人。志を持つ一方で、足元も見る。「経営は質実剛健でなくてはならない」というのが、私が財務面で傾いたタスコシステムで苦しみながら学んだことです。大きく売り上げを出していくというよりは、着実に長く続けられる店舗運営をする。これは、ぜひ加盟店オーナーとも共有していきたいですね。

「とり鉄」は、様々な可能性を秘めているブランドです。オーナーの側からも、思いついたことがあれば、どんどん提案してほしい。有効な施策ならできる限り本部がサポートしていきます。そうやって本部も加盟店も一緒に成長して、みんなで「とり鉄」ブランドをはぐくんでいけたらと考えています。

儲かる加盟店オーナーの掟
高い志を持ちながら、同時に足元を見た堅実な経営ができる
地域のニーズに合わせた独自の提案を本部にしていける
仕事を通じて、かかわる人すべてが成長してほしいと願える
取材・文 / 高嶋千帆子 撮影 / 刑部友康

Profile

高校卒業後、飲食業、ホテル業を経て、2000年、「とり鉄」第1号店にアルバイト入社。その後、株式会社タスコシステムグループの成長とともに事業部長に就任。同社の事業会社として東京タスコが設立された際には、代表を任される。2005年、「とり鉄」分社化とともに代表取締役社長に就任。

社史
  • 【2000年】
  • (株)タスコシステムグループのとり鉄事業部として、第1号店(学芸大学店)オープン。
  • 【2007年】
  • (株)タスコシステムグループより分社化。3カ月後に(株)アスラポート・ダイニンググループへ株式譲渡。
  • 【2009年】
  • 東北から九州まで69店舗 (うち直営店13店舗、フランチャイズ56店舗)を展開。3年で100店舗という目標を掲げている。
  • 【DATA】
  • 本社所在地 / 東京都港区海岸1-16-1 ニューピア竹芝サウスタワー21階

20代〜30代前半が主な客層。男女比は7対3。メニューは、手羽1本105円、とりももの串打ち焼き126円、レバーの串打ち焼き126円、ぽんぽちの串打ち焼き168円という安価設定で客単価2800円を実現

バックナンバー
緑で日本を豊かにしたい。世のため、人のためになるビジネスは、不況でも確実に伸びるんです
国土緑化株式会社 代表取締役 堺 亜琉氏
住宅も経営も、複数の柱で支えた方が長持ちするんですよ
株式会社新昭和 代表取締役社長 松田芳彦氏
飲食店経営は、志だけではダメ。質実剛健でなくてはなりません
株式会社とり鉄 代表取締役社長 小林 剛氏
関東エリア限定のコンビニ。地域密着の強みを最大限に生かすことが当社の戦略です
株式会社スリーエフ 代表取締役社長 中居勝利氏
直営店スタッフも、加盟店オーナーも働く仲間は、みな家族。それが、根本の考え方です
養老乃瀧株式会社 代表取締役社長 野村幹雄氏
商売に絶対はない。だからこそ、自分の店に妥協しない人が勝つんです。
時計台観光株式会社 代表取締役 志釜利行氏

ページの先頭へ