トップが語る!「フランチャイズ成功の奥義」

トップが語る!「フランチャイズ成功の奥義」

養老乃瀧

直営店スタッフも、加盟店オーナーも働く仲間は、みな家族。それが、根本の考え方です

養老乃瀧 株式会社 代表取締役社長 野村 幹雄氏
1966年にフランチャイズ第1号店を成増にオープンさせた「養老乃瀧」。日本のフランチャイズの草分け的存在である。全国的な加盟店展開を成功させた秘訣とは。
まずは親孝行。そこから感謝の心が生まれる

「企業は人なり」というのが、私たちの経営理念の柱です。従業員一人ひとりの人間形成ができていなければ、企業として成り立ちません。そのため当社では、学校に行きたいと考える若い人たちに資金的な便宜をはかったり、人格を高めるための従業員研修を積極的に行っています。

研修を終えたら、息子がきちんとあいさつをするようになった、と喜ばれる親御さんもいらっしゃるんですよ。仕事を通じて、人格形成してもらう。仕事で疲れたお客さまを、心からの笑顔で迎える。それが社会貢献にもつながると考えています。

社是に「親孝行と勤勉」という言葉を揚げているのもそのためで、親を大切にする心は、人間形成をするにあたって、いちばん核となることなんです。

仕送りをしてみようか、母の日に何か贈ろうか。感謝の心を表すためには、自分の頭で考えなくてはなりません。マニュアルではできないものなんです。自分で考え、感謝の心を表すために行動する。それを繰り返すうちに、人に感謝する喜びを知るわけです。そして、そのことは仕事にもつながります。お客さまはもちろんのこと、自分にかかわるすべての人に感謝できるようになるんです。

創業から5年で約100店舗に拡大

このような考え方は、創業当初からです。高度成長期の50年代に「企業の利益だけを追求せずに、働く人たちの人格形成や人とのつながりを大切にする」といったことをうたう企業は珍しかったようです。ほかの企業さんや、外国からも社員教育の現場を見学に来られたと聞いています。

もちろんフランチャイズでも、この考え方は変わりません。我々がフランチャイズ事業を始めたのは66年。ちょうどその10年前に横浜で第1号店を出したのですが、その時「養老乃瀧」は大衆食堂でした。24時間営業するうえにメニューも多彩。とにかく忙しくて従業員不足に頭を悩ませていました。そこで、もっとオペレーションを簡素化しようと、今のような居酒屋の形態が生まれたんです。

これは人気が出ましてね。店も一気に広がり、5年でほぼ100店舗になりました。物流センターも設立され、ロジスティックスも整備された頃、創業者が「今度は、店をのれん貸ししよう」と言い出した。

最初は社員も半信半疑でした。まだアメリカからフランチャイズシステムが入ってくる前の話ですから。

しかし、発表するやいなやオーナー希望者が現れた。そこで、すぐにフランチャイズ1号店をオープンすることになったというわけです。

加盟店が儲からないと、本部も儲からない

一般的に、加盟店展開のことをフランチャイズチェーンと言いますね。我々はそれを、ファミリーチェーンと呼びます。社員に限らず、加盟店オーナー、その従業員を含めて家族だ、という意味です。

理念が親孝行からきていますから、当社の社風は非常に家族的なものがありましてね。働く側も経営者側も一つになろうという思いがベースにあります。加盟店が儲からなければ、本部も儲からないという考え方を常にしているんですね。

ロイヤリティを一定額制にしているのもそのせいです。売り上げ高に対しパーセンテージで計算される変動金額制ではないんです。それは、オーナーの利益担保を第一に考えた結果なんですね。広告費や運送費に使用するための共益費のようなものを一定額、負担していただきますが、それ以外はオーナーさんの利益となる。これによって、多くの利益を出したオーナーさんは、その分多く利益を得られる仕組みになっています。

営業成績は人格の反映である

私は実は東北で店舗開発をしていたことがありましてね。その時、16年間で約230店舗、加盟店をオープンさせました。なかには事業に失敗されて、一家で路頭に迷う寸前で本部に駆け込んできた方もいらっしゃった。その後、オーナーとなって一生懸命働かれて、数年で借金を返済されましてね。そのご夫婦から、「子供を学校に行かせることができました」なんて言われると、この仕事をしていて本当によかったと思ったものです。同時に、オーナーさんにはとにかく成功してもらいたい。そのための協力は惜しまずしていこうと決意したんです。

オーナーとなって成功する人の共通点は、やはり第一に企業理念に共感し、本部の指導を守る人ですね。スーパーバイザーは皆、直営店経験者ですから、成功も失敗も熟知している。信頼して指導に従ってほしいんです。

第二に、家族の協力がある人。夫婦二人三脚で頑張る人は成功する確率が高い。家族経営ですと、多店舗展開もしやすいですからね。

そして最後に、人格。私は「営業成績は人格の反映」だと思っています。自分だけが儲かればいい、では続きません。この仕事は「ビジネスを売るのではなく、幸福を売るビジネスなんだ」と、そう考えてほしいんです。お客さま、従業員、すべての人に感謝の心を持てる人。結局、最後はそういう人が成功するんですよ。

儲かる加盟店オーナーの掟
仕事を通じて、人格を磨き続けようと思う。
親を大切にしたいという気持ちを持てる。
心から応援し、協力してくれる家族がいる。
取材・文 / 高嶋千帆子 撮影 / 平山諭

Profile

1953年、富山県生まれ。70年、養老乃瀧株式会社入社。店舗での現場責任者、スーパーバイザーを経て、88年仙台支部に店舗開発職として赴任。16年間で東北・北海道で約230店舗の加盟店をオープンさせた。

社史
  • 【1951年】
  • 長野県松本市に(株)富士養老の滝設立。
  • 【1956年】
  • 神奈川県横浜市に「養老乃瀧」 第1号店開設。本社を長野県松本市から、神奈川県横浜市に移転。
  • 【1961年】
  • 養老商事(株)(現・養老乃瀧(株))設立。この後、5年間で約100店舗の直営店がオープン。
  • 【1966年】
  • フランチャイズ第1号店を、板橋区成増に出店。
  • 【1996年】
  • 新業態 海鮮番屋 「魚彦」 第1号店開店。
  • 【1998年】
  • 新業態 やき鳥専科 「一の酉」 第1号店開店。
  • 【2000年】
  • 新業態 だいにんぐ 「楽顔亭」 第1号店開店。
  • 【2002年】
  • 新業態 海鮮居酒屋 「だんまや水産」 第1号店開店。
  • 【2004年】
  • 新業態 串や 「二の酉」 第1号店開店。
  • 【2008年】
  • 現在全国に950店舗を運営(うち、直営店86店、加盟店864店)。
    ※2008年3月末
  • 【DATA】
  • 本社所在地 / 東京都豊島区西池袋1-10-15

海鮮居酒屋「だんまや水産」。枝豆300円、まぐろの刺身490円、さばの塩焼き420円とリーズナブルな価格帯。

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