トップが語る!「フランチャイズ成功の奥義」

トップが語る!「フランチャイズ成功の奥義」

味の時計台

商売に絶対はない。だからこそ、自分の店に妥協しない人が勝つんです。

時計台観光株式会社 代表取締役 志釜利行氏
34年前にラーメン激戦区である札幌で誕生した「味の時計台」。現在では、全国に108店もの店舗数を誇る一大ラーメンチェーンに発展した。その急成長の秘密に迫る。
アイデアラーメンで火が付いた

私の父は北海道の北部にある鉄工所で商売をやっていました。私は学校に通いつつ、父の手伝いをしていたんですが、もっと専門的に商売を学んでみたくなった。それで札幌にある経営専門学校に通うことにしたんです。21歳の時でした。

その後、たまたま募集していた北海道新聞社に入社して、総務部に配属になります。しかし、自分で商売をした方が向いているのではないかと、退職。いわゆる脱サラをするんです。

そこからは、開業資金をためながら、和食、中華、居酒屋と様々な外食産業で修業を積みました。

実は、初めて持った店は居酒屋だったんです。朝早くから仕入れに出て、夜遅くまで仕込みをする日々。1年くらいほとんど寝ずに働きました。

そんな時に、居酒屋によく来てくれていたラーメン店の店主が「ラーメンはラクで儲かるぞ」と自慢げに言っているのを聞いて(笑)。ラーメンは小さい頃から食べていた親しみのある物ですからね。それならばと、いろんな店で修業をさせてもらいつつ、自分でもすすきのの「ラーメン横丁」で小さなラーメン店を始めました。まあ、ラーメン店がラクな商売ではないというのは、すぐに気づきましたけどね(笑)

修業したといっても、スープ作りなど肝心なことは教えてもらえません。ですからほとんど独学です。試行錯誤して、味の開発をしていきました。

最初の3年間はそりゃもう苦しかった。でも、少ない売り上げをすべてラーメンの研究につぎ込みました。

そんな状況で考え出したのが、「ジャンボチャーシューメン」。うつわを覆いつくすほど大きいチャーシューが一枚どーんと乗っている。そのラーメンが注目されテレビで紹介されたんです。そしたら火が付き、たちまち人気店となりました。

3年後には2号店を出店し、軌道に乗った12年後、3号店の開業とともに、会社を株式会社にしたんです。それからは、フランチャイズ加盟をしたいという声をたくさんもらって、道外にも店舗がどんどん広がっていったというわけです。

不況の時こそ、チャンスが転がっている

ラーメンは不況に強い業態なんです。バブル景気で急激に売り上げが伸びるわけではないけれど、その代わり不況でもびくともしない。それだけラーメンは庶民の味方、生活に密着しているものだということ。ですから、今のようにみんなが「不況だ、不況だ」と言っている時にこそ、チャンスは転がっている。

例えば、不況の時は、開業に適した物件が手頃な値段で出てくるでしょう。そういう時こそ、ラーメンの強みを追い風に勝負をかければいい。

特に当社にはブランド力があります。さっぽろラーメンのチェーン店は珍しく、マスコミに度々取り上げられているんです。それを最大限生かす形で立地選択をしていけば、開業資金や家賃を抑えることも可能です。我々はその立地選択に関するノウハウを抑えていますからね。

そして、そのブランド力を維持するために、メニュー開発にも時間を割いています。それこそ、何十という案の中から採用するのは1つか2つ。それくらい絞っていかないと、多くの人をひきつけるようなものはできないんです。

私はほぼ毎日ラーメンを食べていますよ。日本国中を回って、ライバル店のラーメンを食べ続けている。もちろん全国の加盟店のラーメンも食べに行きますよ。当社のフランチャイズは、特産品をラーメンに入れるなど、メニューに独自の工夫をしてもらっています。このことは加盟店オーナーのやる気にもつながりますからね。ただ、それだけに、私だけでなく、スーパーバイザーも月1回以上、店に足を運び、味のチェックを怠らないようにしているんです。

それこそ、日に4、5回ラーメンを食べる日もある。私はそんな生活を25年間続けています。加盟店オーナーの誰よりもラーメンに詳しいでしょうね。

最近では、私のラーメン道の集大成ともいえる新メニューを開発。近いうちに展開予定です。

出店前に自分でも調べる人は、成功する

フランチャイズを考える人に言っておきたいことは、「商売に絶対はない」ということです。頼れるのは、店を守りたいという思いと、店を大きくしたいという夢だけ。

もちろん、加盟店になる時に、市場調査や売り上げ目標の提案、事業計画作成など、フランチャイズ本部が手厚くケアをします。本部直営店に併設された研修施設で基礎教育から店舗マネジメントまで、十分なトレーニングを実施するなど、開店前後に指導員が様々なサポートをしていきます。

しかし、だからといって何でもかんでも本部に頼るのではなく、自分でも出店前に嫌というほど調査をしてほしい。自分の目で確かめて、「いける」と確信を持って始めてほしいんです。そして、開店したら本部とうまくコミュニケーションをとりながら、自分の店にとことんこだわって下さい。私も25年間、決して妥協はしなかった。こだわってこだわって、こだわり続けた結果が今なんですよ。

儲かる加盟店オーナーの掟
扱う商品がとにかく好きである
自己流を押し通すのではなく、本部のアドバイスを聞き入れる
開店前の調査を本部に任せきりにせず、自分でもとことん調べる
取材・文 / 高嶋千帆子 撮影 / 刑部友康

Profile

1947年、北海道中川郡美深町生まれ。69年北海道新聞社入社。同社退職後、外食産業に進出。74年すすきのラーメン横丁にラーメン店を開業。3年間の試行錯誤の末、現在の「味の時計台」の味を生み出す。

社史
  • 【1974年】
  • すすきのラーメン横丁に第1号店を開業。
  • 【1977年】
  • 第2号店「北2条店」開業。
  • 【1986年】
  • 第3号店「北5条店」開業とともに、時計台観光株式会社を設立。その後、積極的に店舗展開していく。
  • 【1993年】
  • 家庭でも店の味を楽しめる「お土産ラーメン」を各店で販売開始。通信販売も手掛ける。
  • 【1999年】
  • フランチャイズ1号店を札幌平岡にオープン。
  • 【2008年】
  • フランチャイズを含め、全国各地に108店舗を展開している(うち、直営店30店、フランチャイズ78店)。
  • 【DATA】
  • 本社所在地 / 札幌市中央区北1条西3−3-11 時計台観光ビル4階
  • Tel.011-242-0123
  • 東京本社03-3519-4239,
    0120-370-380

看板メニューである「味噌ラーメン」(写真)のほかに、「ホタテバターコーンラーメン」「ネギチャーシューメン」も人気

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商売に絶対はない。だからこそ、自分の店に妥協しない人が勝つんです。
時計台観光株式会社 代表取締役 志釜利行氏

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