アントレ-会社と役員のための税金ガイド-判断や処理を間違えると会社も役員個人も税負担が大に!

11.会社と役員のための税金ガイド

04判断や処理を間違えると会社も役員個人も税負担が大に!

損金不算入扱いになる役員報酬や役員賞与

法人税法においては、役員と一般従業員の給与との扱いに大きな違いがある。
従業員へ支払った給与や賞与は原則、全額損金に認められるが、役員への支払いを損金にするためには、様々な条件がある。
通常の役員報酬(いわゆる給与に該当する支払い)は原則損金算入できる。賞与はあらかじめ支払い時期と支払額を届出しておかない限りは、全額が損金不算入。また、定期的に支払う報酬でも、税務当局が高すぎると認定すれば、一部が損金不算入になる。ところでこの高すぎる、高すぎないはどう判断するのか? 法人税法施行令では2つの基準を挙げている。ひとつは同規模の同業他社の平均額や従業員との給与と比較して判断する実質基準。もうひとつは役員報酬の総額が株主総会で承認した限度額を超えていないかどうかの形式基準。この2つのうちの差額の大きいほうの額が、高すぎる部分となって損金不算入になる。
さらに同一年度内での役員報酬の増減も問題がある。業績が良くて上げた場合は、まず間違いなく、上げる前との差額部分が賞与と見なされ損金不算入になる。また、悪くて下げた場合でも、その根拠が甘いと、下げたほうの額を基準に、高かった時の差額分が賞与となり、損金不算入になる危険もある。よほどの事情がない限り、役員報酬の増減は年度ごとに行うのが正解だ。まれなケースだが、年度が変わっても、あまり急激かつ大幅に増額を図ると、増額部分の一部が賞与と見なされる場合もある。
では、損金不算入だとどうなるのか? 実際には役員に支払って手元にはないお金なのに、会社に「ある」も同然と見なされて、所得に組み入れられる。結果、所得額が増した分、納税額も増えてしまうわけだ。

現金だけが課税対象ではない!

給与というと、一般的には金銭によって支払われるものと考えがちだが、所得税法においては、金銭の受領に限らず、経済的なメリットを受ければ、これらはすべて給与と見なす考え方をしている。これを現物給与と呼び、物品やサービス、権利などを無料または通常より低価で受け取った場合、これに当たる。
右の表に、現物給与に見なされる可能性の高い支出項目を挙げた。また、会社名義で購入し、役員に貸与している社用自動車なども税務当局は厳しくチェックする。その結果、私用で乗り回している事実が出てくれば、その自動車購入代金の一部も役員への現物給与と認定される可能性が高い。

報酬月額と源泉徴収税額
扶養親族等の数 0人 1人 2人 3人
報酬月額 税額
250,000 6,530 4,920 3,300 1,680
300,000 8,420 6,740 5,130 3,510
350,000 12,590 9,350 7,210 5,600
400,000 16,510 13,270 10,040 7,560
450,000 21,560 17,440 14,200 10,980
500,000 29,890 23,430 18,370 15,140
550,000 37,740 31,270 24,800 19,060
600,000 47,100 40,640 34,160 27,700
650,000 56,470 50,010 43,540 37,070
700,000 65,290 58,830 52,360 45,890
750,000 74,670 68,200 61,730 55,270
800,000 84,370 77,580 71,100 64,640
850,000 94,880 87,450 80,260 73,790
860,000以上
970,000未満
860,000円の場合の税額に、その月の社会保険料等控除後の給与等の金額のうち860,000円を超える金額の23.483%に相当する金額を加算した金額
970,000以上
1,720,000未満
970,000円の場合の税額に、その月の社会保険料等控除後の給与等の金額のうち970,000円を超える金額の33.693%に相当する金額を加算した金額
1,720,000以上
3,550,000未満
1,720,000円の場合の税額に、その月の社会保険料等控除後の給与等の金額のうち1,720,000円を超える金額の40.84%に相当する金額を加算した金額
3,550,000以上 3,550,000円の場合の税額に、その月の社会保険料等控除後の給与等の金額のうち3,550,000円を超える金額の45.945%に相当する金額を加算した金額
役員への給与と見なされる可能性のある支出
会社設立記念品 社会通念的に記念品にふさわしく、かつ処分価格が1万円以下のものなら給与にならない
慰労のための旅行 期間が4泊5日を超えたり、参加者が役員だけの旅行費用などは給与と見なされる
個人が加入した保険への補助 給与と見なされる。会社が加入した保険の場合は給与扱いにならないケースが多い
食事代 価格の50%以上を自己負担し、かつ、会社の負担が月額3500円以下なら給与にはならない
社宅の家賃 所得税基本通達で示された算式で算出した額以上の家賃を会社に納めていれば問題はない
通勤のためのグリーン定期乗車券 通常の定期乗車券相当額は交通費となり、グリーンの増額部分が給与と見なされる
人間ドッグの検診料 従業員全般を対象に実施する場合は福利厚生費だが、役員限定だと給与と見なされる
自社製品の値引き販売 その価格が通常の販売価格の70%未満だと、給与扱いされる場合もある
結婚祝いや出産祝いなど 社会通念上問題のない額ならば福利厚生費だが、高額だと給与と見なされる場合もある
忘年会費用 取引先などや一般従業員の参加がなく、役員だけの開催の場合、費用は給与と見なされる
お中元・お歳暮 社外への贈答は交際費となるが、自社役員への贈答は、その価格が給与と見なされる
渡切り交際費 交際費として支給され、精算をしない「渡切り」の場合、その全額が給与と見なされる
各種団体への会費 法人団体や同業団体などへの会費は問題ないが、個人的な会費はすべて給与と見なされる
出身校への寄付金 給与と見なされる。ただし、業務に関係がある場合は、寄附金として処理できる
金銭貸付の際の利子 無利子または低利子の場合、一般的な金利と比較して、その差額が給与と見なされる

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