退職時
健康保険は?
失業給付は?
税金の計算や申告は?
こんな退職理由で大丈夫なのか?
スムーズな起業をするために、退職時の手続き、考え方などの知識を知っておこう。
Q014 |
勤務している会社の仕事内容、人間関係が嫌でたまりません。独立を考えています。 独立の動機が立派である必要はありません。日常の嫌なことから逃れたい、それをバネに起業して成功している人もいます。また、異性にもてたい、お金持ちになりたいなど、動機が単純でもかまいません。大事なのは「何をするか」ですから。 (増田) |
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Q015 |
転職が難しそうなので、いっそ独立を、と考えています。安易でしょうか? 転職の場合、あなたの専門性やその業務経験が転職市場で評価されるのに対し、独立には、転職市場では必要とされない「経営能力」が問われます。つまり、個人としての「売り物」が異なるのです。なので、すべてを自分で決定し、責任を取る覚悟が必要。これに不安を感じるようであれば、独立は時期尚早です。 (増田) |
Q016 |
起業したら、税金って、もちろん自分で処理するんですよね。大変ですか? 基本的に、税金の計算は自分自身で行うことになります。コツは、使った経費などを毎日こまめに記録することです。小規模のうちは、税金額の算出も可能ですが、規模の拡大に伴って、それにも限界がくると思います。そうなった場合は、税理士など、資格を持った人に代わりに計算をしてもらうべきです。本業に力を注いでほしいですからね。 (平田) |
Q017 |
確定申告で払いすぎた税金が戻ってくると聞きました。本当ですか? 確定申告とは、1月から12月までの全所得に対して税金の金額を計算して申告するもの。勤務時代、毎月天引きされていた所得税は概算前払い。勤務時代の給与所得と、独立後の事業所得を合わせて確定申告してください。勤務時代の所得税を払いすぎていたら、所得税が還付されます。その際、勤務先から、給与所得の源泉徴収票をもらっておくこと。 (平田) |
Q018 |
退職金も確定申告の対象になるのですか? 退職金の申告は、他の収入を考慮せずに退職時に退職金のみで税金が計算されます。一般的に、退職手続きの際に退職所得の需給に関する申告書を提出するケースが多いようです。その場合は確定申告の必要はありません。もしも、申告書を提出していないようなら、退職給与に対して20%の源泉徴収をされるので、確定申告により正しい税額に精算する必要があります。 (平田) |
Q019 |
個人事業を始める予定です。その際、何か届け出が必要ですか? 税務署に個人事業の開業届を提出する必要があります。また青色申告承認申請も提出しましょう。青色申告を選択した方が税制上の特典が多く、有利ですのでお勧めします。届け出を出していれば、税務署から申告用紙などが送られてきます。 (平田) |
Q020 |
白色申告と青色申告があると聞きました。どういう違いがあるのですか? 青色申告には、白色申告にない特典が受けられるなど、いろいろなメリットがあります。具体的には、家族など専従者への給与の全額を必要経費に参入できること、特別控除があること、欠損金を繰り越せること、減価償却の特別償却を適用できること、貸倒引当金が設定できることなど。ただし、青色申告では簿記の記帳義務が大幅に増加します。 (平田) |
Q021 |
退職願は普通書くものですか? 就業規則に書かれていて、それに従って提出する場合が大半です。退職願は退職の理由や希望日を会社側に示すものですので、文章にして上司に手渡すのがよいでしょう。会社は提出された退職願を職安に提出をします。退職理由によって失業給付の給付日数が決定されたり、給付制限の期間にも違いがでてくる場合がありますので、後々のためにも退職願いは提出しておいたほうがよいでしょう。ところで、原則的に失業給付は会社都合の退職の場合だとただちに支給されますが、自己都合の場合だと3カ月後にならないと支給されません。失業給付を受給予定の場合は、会社都合か自己都合かは会社側と確認しておいたほうがよいでしょう。 (佐藤) |
Q022 |
独立したら、健康保険ってどうなるのですか? 個人事業主の場合、退職日まで会社の健康保険の被保険者期間が継続して2カ月以上ある人は、2年間「任意継続被保険者」として、引き続き会社の健康保険を利用することが可能。または、国民健康保険に加盟するかのどちらかを選びます。会社を設立する人の場合は、会社は政府管掌の健康保険に強制加入し、事業主もその保険に加入します。 (佐藤) |
Q023 |
国民年金は絶対に加入しないといけないのでしょうか? 加入する・しないではなく、法律により、20歳になって日本に住所がある人は(外国籍でも)、すべて国民年金の被保険者になっています。国民年金には第1号被保険者(自営業、学生)、第2号被保険者(会社員)、第3号被保険者(第2号の配偶者)という種別があり、独立して個人事業主になれば第2号から第1号へ種別の変更がされるだけです。変更手続きは住所のある役所で行います。 (佐藤) |
Q024 |
退職後、独立準備中でも失業給付はもらえるのでしょうか? もらえません。失業給付が受けられない条件の1つに「自営業を始めた時(準備を開始した段階を含み、収入の有無は問わず)」とあります。 (佐藤) |
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Q025 |
勤務していた会社と、同じような事業で起業する予定です。問題ないでしょうか? 勤務していた会社と同じような事業を行う場合には、損害賠償請求や競業行為の差し止め、退職金の減額・不支給などが問題となります。この場合、就業規則上に退職後の競業避止義務条項や退職金減額・不支給条項があるかどうかが重要ですが、それらの条項があった場合でも退職者の職業選択の自由との関係で無効とする判例もあり、逆に、それらの条項がなかった場合でも、退職者の背信性が高い場合には損害賠償責任を認めた判例もあり、事案の具体的事情により個別に具体的に判断されることになりますが、これは非常に難しい判断です。したがって、同じ顧客を対象とする同種の事業を行うことはお勧めできません。せめて顧客は新規開拓し、勤務していた会社と競合しないようにすべきでしょう。 (川村) |
回答者プロフィール
- 佐藤芳子
- 社会保険労務士
- 平田 治
- 税理士
- 野村 滋
- (株)コンテンツ・ファクトリー
- 代表取締役
- 川村篤史
- 弁護士
- 羽根拓也
- (株)アクティブラーニング
- 代表取締役
- 増田紀彦
- (株)タンク
- 代表取締役