経理 始めの一歩〜会計ソフトの選び方会計ソフトの種類〜クラウド会計の台頭
これまで会計ソフトと言えばPCにインストールして使うパッケージ型ソフトが主流でした(例:弥生会計、勘定奉行等)が、現在は様々なクラウド会計ソフトが増加傾向にあります。
平成27年分の確定申告を行った個人事業主を対象とした調査によると、会計ソフトを利用している個人事業主のうち、インターネット経由で会計ソフトの機能を利用するクラウド会計ソフトの利用率は年々増加しています。クラウド会計ソフトは従来型のパッケージ型ソフトに比べ、クラウドならではの利便性の高さが評価され、認知が広がっています。
クラウド会計ソフトは主に「freee」、「MFクラウド会計」、「弥生オンライン」、「フリーウェイ経理」等様々な種類があり、各社利便性の向上にしのぎを削っており、機能面では各社とも遜色ないものになっています。ただし、無料プランの内容等料金体系やサポートサービス、自動データ取込みの可否や連携先数では各社で違いがあるので、導入の際には自社に合ったサービスを検討された方が良いでしょう。何と言ってもクラウド会計ソフトの最大のメリットは経理の自動化機能にあります。クレジットカードの利用履歴、銀行取引履歴データ、電子マネー等々の電子データを取り込み、会計データに自動で反映してくれます。その他「Airレジ」等のPOSサービスとも連動しているものがあったり、更にはクラウド経費精算アプリである「STREAMED」は、領収書等をスキャンすると自動で仕訳が生成されるため、経理処理のかなりの部分が自動化できることになります。
クラウド会計のメリット領収書・請求書の取り扱い
更に電子帳簿保存法等のE−文書の改正により、領収書や請求書等の電子保管が容易な状況もクラウド会計に有利です。税法上は紙の原本を7年間保管しなければならないのが原則ですが、電子データでの保管でも可となった事で、物理的な保管スペースが省くことが出来ることに加え、電子データ化により検索性能が向上し、資料を探す手間が大きく省けるのもメリットです。また、クラウドにデータがある事により、多くの場合スマホ等からでも経理内容を見る事ができ、いつでもどこでも確認ができるという点も大きなメリットと言えるでしょう。
更に、クラウド会計ソフトには領収書発行・管理機能と連動しているものもあり(例:MFクラウド請求書、freee、フリーウェイ販売管理、等)、これらのサービスを使えば、請求書の発行業務や入金消込業務と経理処理等が自動で連動できるため、この点でも省力化が可能になります。
一般的な手作業による請求業務は以下の様な流れになります。
- 取引先に対して取引内容、金額を確認して、請求書を作成する。
- 作成した請求書の発送作業を行う。郵送であれば、封入や印鑑の捺印、ポストへの投函を行う。
- 指定日に入金されているかどうか確認する
- 入金されていたら経理上消込処理をし、未入金であれば確認、督促を行う。
以上のように、全ての取引先に対して上記1〜4を行うため、取引先が増えてくるとかなりの労力を要します。
この点、クラウドのサービスを利用すると、請求書の作成〜送付(メールによる)までを自動で行う事も可能です。更には取引先からの入金予定管理も可能となり、資金繰り管理の観点からも大変便利な機能です。
導入準備をしっかりしておけば後が楽クラウド会計のメリット・デメリット
クラウド会計の多くは、以上のような自動化機能が魅力ですが、それらの機能を有効に活用する場合には、基本設定をしっかり行っておく事をお勧めいたします。
そのような基本設定は後回しにする事も出来ますが、ここでの設定が毎月の経理業務に反映されるので、初めは面倒でも可能な限り基本情報の設定は行うべきです。
基本設定の後は開始残高の設定です。創業したばかり(会社設立したばかり)ではそれほど多くの取引はない事が多いのですし、開始残高が会計数値のスタートの基準になるので正確に設定してください。
上記の通り、クラウド会計ソフトはメリットが沢山ありますが、デメリットもあります。
料金体系は通常、月額払いになるので、利用期間が長期化すればパッケージ型ソフトを購入したよりも高くなることもあります。しかし、パッケージ型ソフトは毎年更新が必要だったり、法律や基準の改正でバージョンアップが必要になったりするので、結局は大差ないと言えます。
更に、クラウド会計ソフトではそのようなバージョンアップに関する再インストール等の面倒がない点はメリットとも言えます。
また、クラウドと言う事でセキュリティについて不安視される方も多いと思います。しかし各社ともセキュリティには細心の注意を払っており、セキュリティのレベルは金融機関並みなところがほとんどです。
また、クラウドであるが故に、ネット環境によって、処理速度が変わってきます。また、どうしてもデータがネットに上がるためタイムラグが生じ、パッケージ型ソフトのようなリニアな入力感は劣ります。ネットに繋げられないと仕事にならないのもデメリットの一つです。
クラウド会計の最大の利点は何と言っても自動化機能でしょう。この機能のおかげでこれまで外注していた経理処理を自社内で行う『自計化』が図れるのみならず、多くの部分を『自動化』することも可能になります。
また、販売活動における請求業務は請求書を渡せば終りと思っている方が多く、そのため代金の回収漏れが生じるケースが散見されます。クラウド会計で請求業務を合理化し、回収漏れがないような体制が簡単にできます。
◆筆者プロフィール◆
山ア修 公認会計士・中小企業診断士/日本中小企業支援機構LLP(さくら相談ユナイテッド)
中小企業の事業計画策定支援、補助金支援、資金調達支援、会計監査などを行っている。月次決算の迅速化を実現するためクラウド会計、スキャナーによる証憑の電子保存の積極的利用を行い、経営者の意思決定と目標達成を実現している。
クライアントの目標・成長を実現するために多くの士業との連携を行っている。