お店で独立を目指す人必読! いろんな業種で独立した先輩たちに立ち上げから運営まで全部聞いた!
OH! MY SHOP 先輩達の開業実録
注)記事内で表記されている金額はすべて取材時のものです。
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Vol.108, 国産酒バー
Naorai  の場合
インタビュー
Naorai
オーナー・渡邉里絵さん(39歳)

造り手の思いを伝える店にしたい。
だから国産酒にこだわった
PROFILE
わたなべりえ/1968年、東京都生まれ。アメリカの大学を卒業後、ビジネスカレッジで1年間会計を学んだ後帰国。ソフトウェア会社などIT関連の会社に7年間勤務した後、インターネットによる食材市場を運営する会社へ転職。その後、フリーで企業向け企画書作成やイベント企画の運営などを請け負う仕事をしながら焼酎バーでバーテンダーとしての修業も積む。2006年、これまでの仕事と店舗経営を事業とする会社を設立し、2007年3月、現在の店をオープンさせる。
開業のノウハウ
 
 神楽坂に面したビルの4階。看板はなく、さらに、入り口のドアには「会員制」と書かれたプレートが。入っていいものか? と躊躇しつつドアを開けて、真っ先に飛び込んでくるのは、3つのセラー。そこには、適正な温度によって管理されている日本酒、ワインがびっしり詰まっている。しかも、そのすべてが国産酒というから圧巻だ。そう、ここは国産の酒ばかりを扱うバー。酒好きが高じ、「日本酒利き酒師」や「焼酎アドバイザー」などの資格まで取得した渡邉さんの店だ。
 「国内各地の清酒や焼酎の蔵元、ワイナリーや地ビールの醸造所巡りをし、造り手の話を聞くうちに、彼らのこだわりや思いを伝えられる店をつくりたいと考えるようになったのです」
 もともと、いずれは自分で何かをしたいと思っていた渡邉さん。アメリカの大学を卒業後、ビジネススクールで会計の基礎を学んだのも、「いつか」のための準備だった。帰国後、IT業界で仕事をしながら、飲食店を持ちたいと目標が明確になったのは30歳の時。その後、食材のネット市場会社に転職したり、焼酎バーでバーテンダーのアルバイトをしたりと、必要な経験やスキルを習得。「40歳になるまでには店を持つ」という目標通り、39歳で国産酒バーNaoraiをオープンさせた。
 開業するに当たって、渡邉さんはもうひとつ準備をしたことがある。会社の設立だ。開業する約2年前、フリーとなり、企業から翻訳や資料、マニュアル作成を請け負う仕事を始めた。その事業と飲食店の運営会社として株式会社を設立したのだ。だから、開業した現在も、昼間はフリーの仕事を続け、夜はバーのオーナーとして店に出るという二足のわらじを履いている。
 「開業してしばらくは、飲食店だけでは商売が成立しないと覚悟していました。店を維持するには、それを補う事業を持っていることが必須だと思ったのです。それに、どんなに店の経営が苦しくても、酒や料理のクオリティは落としたくないし、自分にゆとりがなければいい接客はできないですから」
 オープンして10カ月たった今、月商は100万〜120万円。確かに、まだ黒字にはなっていない。それでも、オープン当初の思いやこだわりを貫き続けていられるのは、もうひとつの事業により会社経営が成立しているからなのだ。
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酒も料理もここでしか味わえないものにこだわる

 店で扱う酒は、地ビール、地酒、焼酎、ワイン、ウィスキーなど8種類。ビール、日本酒、焼酎は3〜6カ所の蔵元や醸造所を厳選。他店ではほとんどない、このバーでしか飲めないものを多く扱っている。
 メニューにあるワインは約80種類、それ以外の酒は約70種類。価格は、いずれもグラスで650円から。酒によっては、グラスで3000円を超えるものもある。
 料理はデザートを含め11種類(650円〜)。さらに、6種類のおつまみセット (750円〜)があり、どれも産地や造り手の名前が明確にされている。こちらも自ら現地に出向き、探してきたものばかりだ。
 さらに渡邉さんは、居心地のいい空間づくりにもこだわった。15席以上でも可能な広さのカウンターは、あえて12席に。ゆとりを優先させた。
 「まだ知られていない日本の酒や食材を発掘し、大人がくつろげる落ちついた空間で提供し喜んでいただく」。これが、この店のコンセプトであり、渡邉さんが目指している店づくり。
 「お店のコンセプトを理解してくれる人に来ていただきたいから、あえて看板を出さず、口コミで広がっていく形態をとっているんです。表向きには会員制としていますが、それは、泥酔客の入店を断る口実のためで、基本は、誰でもウェルカムです(笑)」

客層、口コミでの広がり方は当初の狙いどおり

 ここでしか飲めない酒、こだわりの料理をゆっくり味わいたいとやってくる客は20代後半から70代と客層は幅広く、平均年齢は40代前半。男性客のほうがやや多く、大半がリピーター。しかも、常連客が知り合いを連れてくる場合がほとんどだという。客層も口コミでの広がり方も、渡邉さんの狙いどおり。あとは、売り上げを伸ばし、黒字化することが、当面の課題だ。
 「月に1度、メルマガを配信したり、蔵元を招いての講習会や造り手を囲む会などのイベントを企画したりと、できることを少しずつやっていますが、劇的な売り上げアップには至っていません。でも、これまでにない形態の店ですから、認知されるにはもう少し時間がかかると思います。焦らず、細くてもいいから、とにかく長くやっていきたい。それがこれからの目標です」

■オープンまでの経緯
 
2005年5月 フリーになり、バーテンダーの修業をしながら、開業準備を開始。コンセプトを決め、物件探しを徐々に始める
2006年11月 物件が決まる
2006年12月 会社設立
2007年1月 内装工事着工
2007年3月 29日オープン
 
SHOP DATA
所在地
東京都新宿区神楽坂6-66
神楽坂宝生堂ビル4階
広さ・席数
22.4坪・18席
最寄り駅
東京メトロ神楽坂駅、
飯田橋駅、JR飯田橋駅
平均客単価
6000円
アクセス
03-5229-8840
平均来客数
110人/月
営業時間
18:00〜23:30(金曜は〜翌4:00)
経費
150万円/月(家賃、光熱費、仕入れ)
定休日
日・月・祝日

開業のノウハウ