お店で独立を目指す人必読! いろんな業種で独立した先輩たちに立ち上げから運営まで全部聞いた!
OH! MY SHOP 先輩達の開業実録
注)記事内で表記されている金額はすべて取材時のものです。
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Vol.109, 青果店
ONE DROP  の場合
インタビュー
ONE DROP
オーナー・小谷 亘さん(25歳)

生産者と消費者をつなぐ場をつくりたい。
若い感性で新しい“八百屋さん”を
PROFILE
こたにわたる/1982年、兵庫県生まれ。大学2年生の時から青果店でアルバイトをし、卒業後もその店に1年間勤務する。その後、民家のガレージを借りて「ONE DROP」をオープン。9カ月はガレージで、その後は週末だけの店舗で宅配を中心に運営をし、2007年9月、現在の場所に移転。
開業のノウハウ
 
 カフェのような店名、古着ショップ? とも思える手書きの派手な店頭の看板。しかしここは、25歳の若きオーナーが開業した、無農薬野菜を扱う“八百屋さん”だ。店頭には、泥のついた赤かぶや蓮根などの野菜、リンゴやバナナなどの果物が、産地や生産者の情報を明記したポップとともに並ぶ。それを読めば、安心安全な青果を扱う店だということがすぐにわかる。お客は外国人、20代の若い夫婦、30代の女性3人組……と様々だが、皆楽しげに野菜を買っていく。まるで、色とりどりの商品に囲まれた雑貨店にいるかのよう。きっと、その雰囲気はダウンジャケットにリンガーハットをかぶった小谷さんのスタイルや感性あふれる店づくりに起因しているのだろう。
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始まりは民家のガレージから

 それにしても、実家が青果店だったわけでも、農業をしていたわけでもないのに、どうして“八百屋さん”を開業したのか? それは、大学2年の時に始めた、青果店でのアルバイトがきっかけだった。
 「健康志向だったわけではない。ただ、環境問題を含め、今世の中で起きている問題と食は密接につながっているのでは、と考えるようになって……。そこから、毎日食べるものって大事だな、自分の食生活も見直し、改善していかなきゃなと、下宿先の近くにある八百屋に通うようになったのです」
 そこは、京都のとある地域の無農薬野菜だけを販売している店。最初は客として通っていたが、いつしかそこでバイトをすることに。
 いつか自分で何かしたいという思いは漠然とあった。青果店でバイトをしたことで、食に関する仕事をしたいというイメージはわいてきたものの、食のどの分野の仕事をすればいいのかはまだわからない。だから、卒業後も同じ店でバイトを続けた。しかし、バイトを続けているうちに、自分も青果店をやってみたいと思うようになる。
 「無農薬野菜をつくる人、それを求める消費者がいるのに、それをつなぐ場はまだ少ない。ふらっと気軽に立ち寄れる店となるともっと少ない。それなら自分がつくろうと思ったのです」
 バイトを辞め、「ONE DROP」として最初にオープンした場所は、住宅街にある民家のガレージだった。バイト先のお客から、家のガレージを貸してもいいという申し出があったのだ。家賃は免除。ラッキー!と始めたのが、約2年前。しかし、住宅街で商売をしてはいけないという「地域協定」に阻まれ、オープン9カ月後には、週末だけしか営業ができなくなった。それを機に物件探しを開始。昨年9月、ガレージで営業していたエリアとそれほど遠くない現在の場所に移転し、店舗を構えた。この時から、パートナーの大島さんも専属スタッフとなり、現在は2人で店を切り盛りしている。

店頭販売と宅配で、売り上げ&顧客を増やす

 店を構えて4カ月。月商は、平均170万円。ガレージで運営していたころの倍以上の数字だ。売り上げの比率は、店舗が7割、宅配が3割。扱う野菜や加工品の種類が増えたことと、ファンになったお客は定期的な配達を申し込んでくれ、店頭から配達へと効率よく常連客を増やしていることが、売り上げアップにつながっている。
 扱っている野菜や果物は約40品目。お茶、コーヒー、調味料などの加工品は約100種類。価格は、野菜や果物が100〜300円台。加工品は、158円の納豆から1950円のコシヒカリまで。
 宅配の商品は、単品オーダーはもちろん、旬の野菜を詰め合わせた3つのタイプ(1500〜2300円)から選べ、毎週または隔週で配達するというシステム。現在宅配件数は1週間で約70件。これを100件に増やすのが当面の目標だという。
 それにしても、無農薬野菜は高いというイメージがあるが、水菜やほうれん草が198円、大きな聖護院大根でも300円と、この店の野菜は決して高くない。これなら、日々気楽に利用できる。それに、ここで扱う野菜は甘みが濃くおいしいのだ。取材後、購入した野菜を食べてみたのだが、いつも食べている野菜は何だったのか!
と思うほど、感動的な味。これなら、ファンを確実に増やしていけるに違いない。
 「うちは、お客さんのニーズにすべて対応できる店ではありません。いいものをセレクトして、ここにしかない品ぞろえで、店の個性を打ち出せるものだけを扱う。これで勝負していこうと思っています」
 顧客とのつながりを目的に、知り合いのカフェでイベントを主催したり、手書きのニュースレターを隔週で配布している小谷さん。こんな活動もまた、従来の青果店にはなかったこと。「将来の夢は、自社農園を持つこと」と言う小谷さん。21世紀の新しい“八百屋さん”づくりはこれからも続く。

■オープンまでの経緯
 
2006年5月 民家のガレージでスタート
2007年3月 週末だけの営業、平日は配達という形態に変更
2007年7月 店舗を持とうと決意。物件探しを開始、契約
2007年8月 内装工事着工
2007年9月 移転し、オープン
 
SHOP DATA
所在地
京都市北区小山初音町16-2
広さ・席数
6坪
最寄り駅
地下鉄北大路駅
平均客単価
900円
アクセス
075-493-5612
平均来客数
50人/1日
営業時間
10:30〜19:30
売り上げ
170万円/月
定休日
日曜
経費
15万円/月(家賃、光熱費)

開業のノウハウ