お店で独立を目指す人必読! いろんな業種で独立した先輩たちに立ち上げから運営まで全部聞いた!
OH! MY SHOP 先輩達の開業実録
注)記事内で表記されている金額はすべて取材時のものです。
前のショップへ バックナンバーへ 次のショップへ
Vol.98, カレーショップ
カヨカリ  の場合
インタビュー
カヨカリ
オーナー・佐々木加代さん(34歳)

移動店舗に始まり、チャレンジショップ、
実店舗と、進化しながら成長中です!
PROFILE
ささきかよ/1972年、福岡県生まれ。高校時代、ブラスバンド部でホルンを担当し、音楽の道を志す。専門学校卒業後、自衛隊の音楽隊に入隊。配属地は北海道。4年後、除隊して北海道で音楽活動をしながら、飲食店でアルバイトや移動パン店の仕事に従事。32歳で福岡に戻り、移動カレーショップを開業。その後、チャレンジショップ運営を経て、2006年10月、現在の店をオープンさせる。
開業のノウハウ
 
 自衛隊の音楽隊に入隊した佐々木さんの配属先は北海道だった。除隊後も音楽のライブ活動や飲食店での仕事をしながら北海道で暮らしていた彼女だったが……。福岡に戻ることを決めた時、知り合いの飲食店のオーナーがこんなアドバイスをしてくれた。
 「福岡に帰るなら、北海道のスープカレーの店をやってみれば? レシピを教えてあげるから」
 この言葉を聞いた時、小学生の頃、「カレー屋さんになりたい」と文集に書いたことや、中学生時代、なぜか父親とカレーショップ巡りをしていたことを思い出した。
 「そうか、福岡でカレー店をやればいいんだ! 目の前に新しい世界が広がった気がしてわくわくしました」
 福岡に戻った佐々木さんは、約半年間の準備期間を経て、実店舗を持つよりコストのかからない、移動店舗からスタートすることにした。
 最初は思うように売れなかったが、音楽のライブイベントに出店する機会が増え、「ライブ&カヨカリ」がセットで認知されるようになっていく。そんな活動を続けていく中で、移動店舗の女性オーナー2人と出会う。一人は佐世保バーガーを、もう一人はデザートを販売。3人はすぐに意気投合し、個別で営業するより3人でやったほうが目立つし楽しいからと、チームを結成。3台の車で営業を始めたとたん、あっという間に話題になり、マスコミで紹介されるようになった。そんな3人の活躍を知ったあるビルのオーナーから、期間限定のチャレンジショップへの出店依頼が届いた。移動店舗販売を始めて1年後、「カヨカリ」はビルの地下1階で営業することに。もちろん、同じ場所で、2人のオーナーのショップも軒を連ねた。ただし、運営期間は1年のみ。 
写真
写真

移動店舗から2年。 住居兼の一軒家で 実店舗をオープン

 「チャレンジショップへの出店を決めた時から、1年後には自分で実店舗を持とうと決めていました」
 チャレンジショップをオープンして半年後に、物件探しを始めた佐々木さん。見つけた物件は、長い間誰も住んでいない、昭和初期に建てられたボロボロの一軒家。ここが大いに気に入った。チャレンジショップの契約が終了すると同時に改装工事も終了。2006年10月、薬院駅から徒歩7分の住宅街で実店舗「カヨカリ」がオープン。
 格子の引き戸を開け、土間を進んでカレーをオーダー。料金は前払い制。番号札代わりの花札を受け取って、客は座敷に上がり、呼ばれたらカレーを受け取りに行く。もちろん、食べ終わった食器を下げるのも客。佐々木さんは厨房から出ることはない。一人で運営できるよう考えた、セルフサービスシステムだ。10畳の座敷には、テーブルが3つと、押し入れを改装したカウンター席が。ゆとりある空間で、客はのんびりくつろぎながらカレーを食べる。店内には、一度座ったら何時間でもい続けたくなる、ゆったりとした空気が流れている。それは、レトロな建物がかもし出している温かさだけではなく、決して無理をしない佐々木さんの働き方や考え方がつくりあげている雰囲気なのだろう。

まだまだ未完成の店。 10年後にどうなっているか 無理せずゆっくり歩みたい

 現在の席数は16席。カレーは800円で3種類。売り上げを伸ばそうと思えば、席数もカレーやほかのメニューも増やせるのだが、佐々木さんはそれをしない。特別、繁盛店にしたいとも思っていないという。
 「一人でやっているから、これが精いっぱいということもあるし、家賃や経費を払って生活費が少し残ればいいと思っています。180万円で始めた店だから、最低限の設備しかそろっていません。その後にエアコンが設置されて、次は給湯器が入って……と、10年後には必要な設備がぜんぶ整っている、そんなふうになっていければいい。この店が、カレーの力でどうなっていくのかを見るのが楽しみなんです」
 移動店舗から期間限定のチャレンジショップ、そして自分でつくった現店舗……。ホップ、ステップ、ジャンプでここまでたどりついたのは、佐々木さんにとって、とても自然な流れだったのだろう。移動店舗の時代の常連客、近隣のテレビ局や様々な企業の人たち、テレビや雑誌を見てわざわざ来てくれる新規客、県内外から訪れてくれるミュージシャンやアーティストたち。
 加代がつくるカレーだから「カヨカリ」。店名の「カヨカリ」は、いつしか佐々木さんそのものになっていた。「カヨカリ」を食べに、「カヨカリ」に会いに、客はやってくる。
 「店をやってて一番うれしいのは、いろんな人と出会えること。3日に1回は夜通しカレーを仕込むから、それはすごく大変だけど、来てくれるお客さんの笑顔を思い浮かべると、頑張ろうって思えるんです」

■オープンまでの経緯
 
2004年8月 移動カレーショップを開業
2005年10月 1年の期限付きチャレンジショップでカレーショップをオープン
2006年4月 実店舗の物件探しを開始
2006年6月 物件が決まる
2006年7月 店舗工事開始
2006年10月 オープン
 
SHOP DATA
所在地
福岡県福岡市中央区高砂1-18-6
広さ・席数
7坪/16席
最寄り駅
地下鉄薬院駅
平均客単価
800円〜1000円
電話
090-2076-5526
平均来客数
15人/1日
営業時間
12:00〜15:00 18:00〜不定
売り上げ
30万円
定休日
不定休
経費
13万円/月(家賃、光熱費)

開業のノウハウ