お店で独立を目指す人必読! いろんな業種で独立した先輩たちに立ち上げから運営まで全部聞いた!
OH! MY SHOP 先輩達の開業実録
注)記事内で表記されている金額はすべて取材時のものです。
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Vol.96, カフェ
パンケーキママの店 VoiVoi  の場合
インタビュー
パンケーキママの店 VoiVoi
オーナー・阿多笑子さん(42歳)

ありそでなかったパンケーキ専門カフェ。
人気の秘密は独自の粉とブログにあり!
PROFILE
あたえみこ/1964年、千葉県生まれ。専門学校卒業後、出版社に就職し、業界誌記者として勤務。その後フリーライターとして、飲食や農業関連の業界誌で活躍。食を通して人を幸せにする仕事がしたいと、パンケーキを特徴にしたカフェの開業を決意。2006年8月、現在の店をオープンさせる。
開業のノウハウ
 
 「子供の頃からパンケーキが大好きでした。パンケーキが焼けるおもちゃ、ママレンジが欲しくて欲しくて。やっと買ってもらった時はもう本当にうれしかった。パンケーキって、誰もがふと、小さかった子供時代を思い出す食べ物だと思うのです」
 そう話すのは、かつてフリーライターとして、飲食関連の業界誌に記事を書いていたオーナーの阿多さん。飲食業界に精通し、幅広い情報と知識を持っていた阿多さんがつくった「パンケーキママの店VoiVoi」は、心の中にあった原風景から生まれた店。
 「食を通して人を幸せにする仕事をしたい。自分のこだわりを追求して、その世界を掘り下げてみたい」。そう思い始めた阿多さんが、新しいステージとしてカフェ経営を選んだのは、自然なことだった。何も特徴がない、ただのカフェでは生き残れない。そこで思いついたのが、パンケーキのおいしいカフェ。
 「メニューの一部としてパンケーキを導入しているカフェはあっても、パンケーキをメインにしたカフェはまだあまりないと思うのです。幅広いパンケーキメニューを開発できれば、これまでにない食べ方や楽しみ方も提案できる。新しい展開の可能性を持つ食材だと考えたのです」
 そこで阿多さんは、多くの場合スイーツとして位置づけられているパンケーキを、食事としても十分楽しめる食材であることを提案することに。開業時からスープやサラダとのセットメニューや、野菜やソーセージをトッピングして、トマトソースやサルサソースで食べるパンケーキなど、「食事パンケーキ」のメニューを開発した。
 これが当たった。昨年8月のオープン以来、雑誌やテレビなど、多くのメディアで取り上げられ、開業直後から、週末はいつも満席状態。初めての店舗経営としては、順調なスタートを切ることができた。阿多さんの原風景から生まれたコンセプトが、見事に時代のニーズと合致したのだ。しかし、順調な理由はそれだけではない。
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粉の開発、ブログの開設。開業前の細かな準備が、順調な運営を導く

 いくら目新しい食材とはいえ、当然おいしくなければ受け入れてはもらえない。パンケーキのおいしさの要は粉にあり、粉の配合によって味は決まる。阿多さんはまず、バターミルク(生クリームからバターをつくった後に残る脂肪分の少ないミルク)にこだわった。ふんわりした軽さともちもち感が出るからだ。そのバターミルクと小麦粉を使ってオリジナルのパンケーキ粉ができるまで、阿多さんは試作に試作を繰り返した。その数は1000枚を軽く超えるとか。開業を決めて阿多さんが最初にしたことは、この粉の開発だった。ちなみに、いずれ、このオリジナルの粉だけの販売も考えている。
 粉が完成したところで、阿多さんは物件探しなど、本格的な開業準備を始めるのだが、同時に、開業までのプロセスや、パンケーキが食べられるお店情報などを発信するブログを開設した。これがすぐに人気ブログとなり、開業前も後も、店の広報を支えるものとなった。開業前から多くのファンができ、オープン時からさほど苦労することなく集客することができたという。現在も、地方から多くの客が訪れるのは、このブログの効果によるものだ。実は、ブログでファンがついていることが、開業資金の調達時にも、大いに役に立っている。飲食店での勤務経験の有無や年数は、公的金融機関で融資を受ける際の条件のひとつになっているのだが、阿多さんにその経験はない。しかし、このブログのアクセス数が評価され、希望金額どおりの融資を受けることができたのだ。
 食事系パンケーキという新しい食の提案による話題性。おいしいパンケーキの開発。そして、ブログによって開業前から広く認知されていたこと。店舗を構えた場所が、三軒茶屋という若者に人気のエリアで、駅から徒歩2分という好立地。かわいいモダンな内装……。開業前に考えた事業計画どおりに運営できている理由はたくさんあるのだ。
 「とはいうものの、まだ経営が安定しているとはいえないし、お客さんが多ければスタッフも必要になってくる。予想外のことに戸惑うこともたくさんあります。それに、昨年はメディアにたくさん紹介されましたが、今年はそれも落ち着くでしょう。そうなれば、売り上げも落ちると思う。でも、開業1年目にしてはラッキー過ぎたと思っています。課題は何か、どんな工夫が必要かなどの見直しは、売り上げが落ちたところから始めようかと。今するべきは、もっと地域の人に愛されるお店にしていくこと。パンケーキのおいしさ、新しい食べ方の提案を、もっともっと広げていきたいですね」


■オープンまでの経緯
 
2005年6月 パンケーキを特徴にしたカフェの開業を決意
2006年4月 物件探しを開始
2006年5月 物件が見つかる
2006年6月 ブログを開設
2006年7月 内装工事着工
2006年8月 5日オープン
 
SHOP DATA
所在地
東京都世田谷区三軒茶屋1-35-15 1階
広さ
14坪・23席
最寄り駅
東京メトロ三軒茶屋駅
平均客単価
1000円
電話
03-3411-1214
http://www.pancakemama.com
売り上げ
非公開
営業時間
11:00〜22:00、日曜は〜20:00
経費
売り上げの30%/月
定休日
火曜 
   

開業のノウハウ