CASE50IT先生
研究者、SE、プロワーカーと多彩な経験から技術者育成を支援
30代は物理学の研究者、40代はIT業界のシステムエンジニア、そして50代はプロワーカーとして道を歩み始めた澤柳さん。現在はIT業界の中堅・中小企業を対象に、技術社員向け教育研修などを請け負う「IT先生」として活動中だ。
「IT系の中小企業では社員教育がおろそかになっていると感じています。不景気のあおりを受け、ここ数年は価格競争が激しく、予算も削減されてきました。そこに人件費を削ってまで仕事を取ってきた企業は、社員教育に回す費用も時間も確保できない状況に陥っています。ここでもう一度社員教育の大切さを唱え、問題解決のお手伝いをするのが私の仕事です」
澤柳さんが自らを「IT先生」と称するのは、若手技術者の育成に業務の主眼を置いているから。新入社員研修が行われる4月から6月にはプログラミング研修など技術研修の講師を受託。講義やテストを行い、研修終了時には人物講評の資料を提出し、適材適所の配属先決定をサポートする。ほかの時期にはシステム開発などのプロジェクトにSEとして参加し、現場で若手メンバーの実践指導にあたる業務も請け負っている。
「ソフトウェアは人が作るもの。その作る人が生きがいを持って、技術者として絶えず成長し続けていくためには教育がとても大切なのです。この仕事を手掛けてから初めて『研修を受けてよかった』と受講生に言われた時は、本当にうれしかった。クライアント担当者の期待にこたえられたという充実感と、自分の技量を生かせたことへの満足感を同時に得ました」
物理学の研究者として海外で30代を過ごした澤柳さんは、研究所の准教授として教育経験も積んできた。家庭の事情で帰国した後は、研究分野での働き口が見つからずIT業界へ転身した。しかし、独立時には教育とITを融合した事業を起こし過去の経験はしっかり生かされた。働き方は変わっても、技術者として技量を上げようと努力する姿勢は変わらず、最近は技術シーズを探るため産学共同展示会に足を運び、新しい開発言語「Ruby」の習得にも励んでいる。
「Webアプリ開発などで期間短縮が図れるため今後のニーズが期待できるこの言語を使い、まず自分のホームページを構築しようと考えています。完成すれば営業ツールにもなり、技術セミナー講師などの引き合いがくれば理想的ですね」
PROFILE
澤柳 光太郎さん(59歳)
1948年、東京都生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科博士課程修了。卒業後はブラジル・サンパウロ州立カンピーナス大学物理学研究所で宇宙線の研究と学生の指導・教育に従事。帰国後は2つのソフトウェア会社にてシステム開発を経験。2000年12月に退社し、独立を果たす。2003年に法人化しタオ・リサーチ有限会社を設立。
取材・文●岩見浩二 撮影●井出マコト
協力●NPO法人インディペンデント・コントラクター協会
[ 2007.12.27 ]

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POLICY
契約前に、自分のできること、できないことをはっきり伝え、業務中も問題点などは正直に伝える勇気を持つ。
HOLIDAY
次の仕事が始まるまでの間に休暇を取れる。仕事時間も自分の裁量で決められるため、会社員時代より早く帰宅できる。
MONEY
独立から7年、収入は会社員時代の水準に達せず。案件紹介サイトへの登録をはじめ、現在も新規開拓に注力。
SATISFACTION
会社員時代は営業から伝え聞いていた取引先の評価を今はじかに聞くことができる。それが明日の活力にもつながる。