CASE39金融・ビジネス翻訳者

PROFILE

石川 正志さん(44歳)

1962年、東京都生まれ。翻訳会社に4年間勤務した後、ロンドン・ビジネススクールに留学してMBAを取得。帰国後、外資系証券会社や投資顧問会社に勤務。2002年9月に退社し独立。2004年9月に潟潤[ドトラストを設立。

専門知識を深めるためにMBAを取得した金融・ビジネス系翻訳者

経済のグローバル化に伴い、近年様々な分野で「翻訳サービス」の需要が高まっている。

石川さんは、金融関係を専門とする翻訳者。証券会社や銀行、投資信託会社から依頼を受け、英語の文書を日本語に翻訳する。株式や債券、為替、各種金融リポートなど、翻訳には高い専門性を求められるものばかりだ。

「会社に勤めていた頃は、自分の会社の文書しか扱っていなかったのが、今はいろいろな金融機関の調査分析や見解を知ることができて、ひとつの事象に対して複数の視点を持つことができます。守秘義務があるので当然公表はできませんが、自分の経済を見る目が養われるし、面白いですね」

大学卒業後、翻訳会社に約4年間勤務。この時は翻訳者ではなく、営業や翻訳者の手配、翻訳チェックなどコーディネイト的な仕事が業務だった。

「自分も翻訳をしたいという気持ちが強くなって。ただ、翻訳は語学ができればOKではなく、書かれている内容が理解できないと的確に訳せません。金融関係の文書を扱うなら、豊富な金融知識が必要です。金融関係の翻訳をしたい気持ちと、このままでは今より上にいけないという思いが合致して、31歳の時、MBAを取得するためにロンドンに留学しました」

語学と経済・金融の知識を深め、帰国後に勤めた外資系証券会社や投資顧問会社では、念願の翻訳者として活躍。アジア経済の分析リポートや投資関係のリポートなどを翻訳した。投資顧問会社では、機関投資家顧客の質問状への回答など、単なる翻訳を超えた業務を経験し、充実した日々を過ごしていた。それにも関わらず壁が見えてきたのは、40歳を目前にした頃だった。

「先のキャリアが見えなくなってきたのです。特に外資だったので、専門職でマネージャーになる人は少なかったし、自分がなるイメージもない。ここから先は転職するか独立か。独立してビジネスを築くには、ある程度の時間と体力が必要ですよね。ならば、年を取ってからでは不利。年齢的節目でもあったので、独立を決意しました」

時間とスキルとノウハウを売るのがプロワーカー、と定義する石川さんには、自分なりの「成功のイメージ」がある。そこに向けてまい進している。

「ある日、突然電話があって『前の会社であなたの翻訳を読んでいた。私が設立した会社でも翻訳をあなたにお願いしたい』と言われた時は、本当にうれしかったですね。まだまだ途上ですが、お客さまの評価、業界での知名度、収入、この3つに関して自分なりにイメージするレベルまでいけるよう、ビジネスを構築していきたいです」

[ 2007.7.13 ]

営業ツールの写真

新聞を読んで金融用語を拾うところから毎朝が始まる。翻訳に使えそうな言葉は、カードに書きとめて繰り返し音読する

POLICY

仕事は絶対に手を抜かない。最新の専門知識を仕入れるために絶えず勉強している。

HOLIDAY

会社員時代は週末休み。今、土日は電話がかかってこないので翻訳の仕事に集中できる。

MONEY

お金をいただくことの重要性や意味、1万円稼ぐことの大変さが会社を辞めてわかった。

SATISFACTION

質を重視して「正確で読みやすい翻訳」を心がけている。そこを評価されるとうれしい。