起業のヒントになる!? 米国発☆ビジネス最前線

起業のヒントになる!? 米国発☆ビジネス最前線 / 月2回更新

取材・文 / 田中秀憲

ワントゥワンで個人を結ぶ
――Store at My House

個人向けのトランクルームや貸倉庫などは日本でも珍しくなくなった。それは米国でも同様で、特にニューヨークでは高級衣料に特化したものや、宝飾品専門の保管スペースなども出現し人気を集めている。ところが、このような業者による貸しスペースの場合、当然ながら様々な制限が課せられるし、利用者の希望に事細かに対応してくれるわけではない。また金額もどうしても高くなりがちである。そこに目をつけたのが、今回ご紹介するStore at My Houseだ。

貸し手も借り手もうれしいビジネス

同社のビジネスモデルはシンプルだ。収納スペースとして利用できる場所を持つ人と、それを希望する人とをつなぐというもの。自宅の倉庫や地下室、庭の片隅や今は使われていない子供部屋・・・・・・。貸し手にとっては、空きスペースを有効活用し、事前の投資もゼロで収入があるのだからこんなにうれしいことはないはず。しかし自力で借り手を上手に探すのは困難。そこでStore at My Houseの出番となる。

Store at My Houseはネットを利用した空きスペースの情報交換サービスだ。同サイトでは貸し手も借り手も基本的には個人で、柔軟な対応も可能なため、借り手のコストも抑えられる。“引っ越し時に数日だけ段ボールを数個置ける場所を探している”といった細かな要望にも対応可能。1カ月単位の貸し出しが一般的な業者による貸倉庫に比べて融通がきくことや費用の安さは魅力だろう。

よく米国の映画で見かける一般家庭の住宅にあるガレージを思い出してほしい。たいてい様々な道具やがらくたも一緒に置かれている。多くの家庭でガレージは物置となっているのだ。収納場所に困るのはどこの家庭も同じだが、ニューヨークやサンフランシスコなどの大都市以外では、たいてい車庫は複数台分あり、結果として空きスペースも多い。Store at My Houseでも、空き情報の多くは個人宅のスペースなのだという。

しかしまだ同社のビジネスはスタートしたばかり。利用者からの課金はまだ行っておらず、個人の貸し手・借り手ともサイトの利用料金はゼロ。同社の収入は、貸しスペース業者によるリストの掲載料金のみ。リストは個人が発信する情報が多いため、十分な収入とはいえない。サイトのオープンからほぼ2年。具体的な形での収益構造の確立が目下最大の検討項目であるとのことだ。

大都市の駐車スペースに着目したビジネス

ここでもう一つ、Store at My Houseと同様なビジネスを紹介しよう。先述したように米国の都市部では駐車スペースが常に不足しているが、その状況に着目したPark at My Houseというビジネス。車の駐車場所を探す人と、空きスペースがある人をネットでつないでいる。

同社は、駐車場を貸す場合、月々のレンタル料金の10%を貸し手から徴収し、売る場合は、売却額5%の手数料を徴収する。それ以外は情報の掲示も含め一切が無料。一方借り手側には毎月のレンタル料金以外、一切費用は発生しない。サービス開始からまだ2年も経過していないが、すでに人気のサービスとなっており、特に一般の駐車場が非常に高額なマンハッタンとその近郊では、カーオーナー必見といわれているほどだ。運営がしっかりしているため、カーシェアリングで大都市において人気のレンタカー業者、ZIPCARとの提携も果たした。ZIPCARの利用者が出先で車両を止める場所を探す際にも、Park at My Houseの情報は効率的に活用されているという。

人と人との関係が希薄になりがちな現代だからこそ、ワントゥワンで個人を結ぶサービスには新たな需要がありそうだ。今までなかった全く新しい種類のビジネスではなく、古くから存在するサービスながら、時代の流れで消えかけてしまっているものの再生に、ビジネスのヒントが隠されているのでは。昔と全く同じというわけでなく、ITなど新しいインフラを活用し進化させた形なら、現在のユーザーにも受け入れられる可能性が十分あるだろう。

次回は2009年1月30日更新予定。お楽しみに!

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