起業のヒントになる!? 米国発☆ビジネス最前線

起業のヒントになる!? 米国発☆ビジネス最前線 / 月2回更新

取材・文 / 田中秀憲

バッグが未来の芸術家を生む!?
――EEK-OH

今回ご紹介するのは、美しいプリントが施されたバッグ類を扱う会社。創業からようやく1年強で、何とか軌道に乗りかけているところだという。マンハッタンに本拠地を構え、名前はEEK-OH。創業者であるレベッカ・シンガー氏は、一見気だてのいいニューヨーカー。有能なビジネスウーマンであり優れたファッションの専門家でもある。彼女は、ファッション関係のリサーチ会社を経営しつつ、この新たなビジネスをスタートさせた。

アート感覚のエコバッグ

「プラン自体はずっと前からあたためていたわ。いろいろな諸条件をクリアしてスタートにこぎつけたのが2007年」(レベッカ氏。以下すべて同氏)

同社の製品はすべて100%のコットン。しかも完全なオーガニック製品だけを使用している。そしてその色鮮やかなプリントはシルクスクリーン製法によるもので、20色以上もの印刷工程を経て再現されたピュアでビビッドな色使いだ。通常、シルクスクリーンでカラー印刷をする場合は、おおむね4色で仕上げるが、これも原画の美しさや感性を大切にした結果なのだそう。このような多色刷りを正確に美しく再現するために、米国内をはじめ世界中の工房にコンタクトをしたそうだ。縫製や仕上げなどにも細心の注意を払っているという。

「まだパーフェクトとは言えないけれど、理想を高く持ってより良いものを目指しているわ」

さらにこの印刷に使用されるインクはすべて水性の塗料。油性塗料を使用しないことで、環境への配慮をしているのだという。製品に付けられたタグもすべてリサイクル・ペーパー。ブランドネームの「EEK-OH」は「エコ」を表現しているのである。

バッグの内側にはいくつものポケットがあり、その内側にも美しいデザインが施されている。小物を持ち歩くことが多い女性にとってはうれしいデザインだ。また、底面には地面においた時に汚れないためのびょうが取り付けられており、細部まで配慮が行き届いたものだ。エコだけを追い求めたのではないことがわかる。

これらのバッグに描かれたデザインは、すべてレベッカ自身が厳選して選んだデザイナーの手によるもの。現時点では選び抜かれた数人の作品だけが採用されている。

「もちろんまだビジネスを始めたばかりだからラインアップを増やせないというのもあるけど、でも一番の理由は良いものだけを提供したいからなの。種類や派手さを売り物にする気はないわ」

現在採用されているアーティストは4人。そのうちの一人、TVドラマで人気の人気女優、ジェシカ・ニコールのデザインが人気なのだそうだ。

起業したホントの理由は?

彼女自身は、これまでニューヨーク市内の有名高級デパート、サックス・フィフス・アベニューなどいくつものファッション関係企業で働いた経験がある。また、かつて父親が芸術家で、家業として父の作品を含むアートの販売を営んでいたという。今までの経験や家庭環境を考えても、彼女がファッションやアート関連の事業を手がけることになったのは自然なことだろう。

「若い芸術家たちは、皆才能のある子ばかり。でもなかなかきっかけもつかめない。だったら私が手助けしてあげたいの。このビジネスはお金儲けのためじゃなくてね。成功すれば、その資金で次代の若いアーティストをサポートしたいの。またバッグのデザインという作品発表の場にもなる。環境に対する警鐘ともなるし、何より私のやる気を満たしてくれる」

EEK-OHはあくまで未来の芸術家たちの基金を生み出すべく起業されたものだという。そしてこう付け加えた。

「I LOVE ARTなのよ!」

彼女にとって仕事とは、そして起業とは何だろうか。将来の起業家へのアドバイスを聞いてみた。

「情熱を持てるものを見つけ、それをとことんやることね。あなたの夢を追いかけなさい。お金だけじゃなくてね」

彼女自身で実践しているわけであるから、その言葉に説得力があふれているのも当然だ。すでに目先の利くバイヤーや感性に秀でた人々からの問い合わせは多く、日本からのコンタクトもあるという。EEK-OHの製品を日本で見かける日もそう遠くなさそうだ。

次回は2009年1月16日更新予定。お楽しみに!

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